先日、日本芸術院の新しいメンバーが決まったという記事が新聞に出ました。パッと見たとき、いつもと違う感じを受けました。新メンバーの顔写真が並んでいるのですが、いつものこういうときの写真と違って明るい感じなのです。変化に富んでいます。樫山文枝さん、筒井康隆さんなどの写真が出ていましたので、それぞれを見ていくと、女性の方が多いのです。今まで男性の顔がほとんどの中に、たまにぽつぽつと女性の顔が見える写真に見慣れていました。そういうのとは違うのです。女性が多いと、顔写真集合の印象が違うのです。

 嬉しくなって数えてみました。女性7人男性5人でした。今まで、学士院会員とか文化勲章とか、立派な功績のある人が選ばれた時のメンバーは男性が圧倒的に多くて、黒っぽい印象でした。芸術分野で業績を上げた新会員の58%が女性、優れた力のある女性が半数以上いるのです。明るいはずです。

 こういう例を見ると、ほかの分野でもきっと業績を上げた女性はいるはずだと推測されます。今までのように、そう、なんでも男性の方が優れている人が多いというのは、却っておかしいです。選考基準や選考方法など従来の選び方を見直せば、もっともっと女性は増えるに違いありません。そう期待させてくれた芸術院新会員の女性過半数でした。

 次はテレビ番組です。

 他の仕事をしながら何気なく聞いていたのですが、司会者に意見を求められて、かなり長い時間を割いてじっくりと自分の見解を述べているのが女性の声でしたので、改めてテレビの前に座りなおしました。ウクライナ戦争についての討論で、話している女性は国際政治専門家とキャプションがついていました。次いでもう1人の女性に司会者は意見を求めました。今度の女性の肩書はヨーロッパ安全保障の専門家とあります。滑らかに自説を展開していきます。NHKの「日曜討論」という番組でした。

 バラエティー番組とかトーク番組では、女性が中心になって長く話すことはありますが、討論番組では男性の登場者が多いので,おやっと思ったわけです。その番組の出場者は全部で7人でした。司会の席に男性と女性が座り、討論者は5人で、そのうちの2人が大学教授の女性でした。3人の男性は、元ウクライナ大使、元駐米大使で今は研究所長、もう一人が大学教授でした。残念ながら女性が過半数ではありませんでしたが、発言に重さがあり、2人の存在感はありました。5人中2人が女性で喜んでいるのはおかしいですが、今まででしたら、5人中女性は1人かゼロのような比率が多かったので、ここまで来たかと思いました。あと一歩です。

 もうひとつは雑誌です。総合雑誌『世界』の編集長が女性になったと、以前ニュースで知りました。編集長が女性になると雑誌はどう変わるのか変わらないのかと、興味がわいてきました。てっとりばやいところで、執筆者の女男の比率はどうなっているか、目次で執筆者名を数えてみました。執筆者と対談などの登場者で、性別がわかる人だけです。

世界  女性      男性
12月号  21  50.0%  21
1月号  19  43.2%  25
2月号  18  40.0%  27
3月号  22  45.8%  26

 『文芸春秋』も見てみました。こちらの編集長は男性です。
文芸春秋   女性      男性
1月号     18  23.4%  59
3月号     15  23.8%  48

 雑誌の性質も読者対象も違うので一概に比べることはできませんし、雑誌が訴えようとするテーマによってはどちらかの性に偏ることもありえます。ですが、女性の編集長の雑誌では女性執筆者の比率が4割から5割なのに対して、男性編集長の雑誌の女性執筆者は2割強というのは、はっきりとした差が出ています。女性が編集長になると、執筆者も女性が増える、そうなると女性の読者も増えるのではないでしょうか。女性の読者が増えれば、また雑誌も変わっていく、そういういい循環が生まれるのではないでしょうか。

 『世界』の編集長が女性になったことで、雑誌の質にどのような変化が起きたかはわかりませんが、女性執筆者の比率が男性とほぼ同じになっているということは、男性に偏っていた時より、柔軟性・多様性が増しているとだけは言えるでしょう。今後のさらに広範囲の質の変化と充実を期待したいと思います。

 そして、今日2月27日の新聞で、NHKの討論番組の女性の存在感が増したというわたしの印象に根拠があることがわかりました。

 NHKは2021年から、英国のBBCの「50:50 The Equality Project」という、出演者に占める女性などの割合を番組単位で継続的に測定するプロジェクトに参加して、番組単位で出演者の男女比を計測する取り組みを始めているのだそうです。「女性比率何%以上という数値目標があるわけではなくただ測るだけ。それでも変化が生まれている」(朝日新聞2月27日)ということで、「日曜討論」もその「50:50」に参加している番組だと記されていました。女性の割合を測っていたから、これまでだったらおそらくは男性の討論者を選んでいたところが女性になったのでしょう。女性が出演することで男性と少しも遜色がない、むしろわかりやすいこともあるとわかってくるでしょうから、もっともっと女性を増やしていってもらいたいと思います。

 やはり数字は大切ですね。数だけそろえてもダメだとか、女性議員を増やしても中身が問題だとか、女性比率を高めようというと、必ず出てくる反論ですが、そうなるかどうか先ず数をそろえてみることです。

「50:50」プロジェクトは放送だけでなく、あらゆる分野で取り入れてもらいたいものです。