2012.12.27 Thu
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.幼い頃から50代の今に至るまで続く、母親とのすざまじい葛藤。娘は自身の健康も危ういのだが、終わりの見えない母の介護に心身をすり減らす。「いったいいつになったら死んでくれるの」と呻く娘は、作者自身が投影されたものという。同じくらいの年代、似たような状況を抱える女性は、そのリアルさにページをめくる手が止まらないだろう。さすが大佛次郎賞受賞作。
老いた母親を介護するのが余計に苦しいのは、自分もいずれこうなるのでは、恐れと不安を抱くから。「若い頃には抽象的にしかわからなかった「老い」が、頭脳や五体を襲うだけでなく、嗅覚、視覚、聴覚、味覚、触覚すべてを襲うのがまざまざと見える。あれに向かって生きていくだけの人生なのか」(478頁)。これは、これだけ寿命が延びて高齢者医療が高度化したこの時代に、私達の世代が初めて広く経験する事態でしょう。とくに女性の寿命が長いのだから、これも、フェミニズムの新たな課題に違いない。
本書にもう一つ流れるテーマは、夫との関係。夫の浮気が原因なのだが、結果的には自ら離婚を決意、これまでにない自由を取り戻すハッピー離婚。母親の遺産がそれを可能にしていて、象徴的な母娘の和解が示唆されているのだが、それはともかく、この離婚の形は、同年代の女性たちに別の共感を呼ぶのではないでしょうか。大佛次郎賞を選考した男性審査員たちはその怖さが果たしてわかっていたのでしょうか?!(eureka)