2014.05.01 Thu
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.大阪で二人の子どもがマンションの一室に取り残され亡くなっていた事件は人々に大きな衝撃を与え、母親や行政の対応への非難や事件そのものへの強い関心がメディアを席巻したことは記憶に新しい。本書はその事件を取材し、背景を少しずつ読み解いていくルポ。読むことが辛くなる部分もやはりあった。しかし読み進めるうち、とくにこの事件の母親「芽衣さん」の生い立ちと病を丁寧に追う部分を読むうちに、わたしは少なくともほんのわずかな、手がかりを与えられたと思う。それはこの一文に現れている。「『解離性の病理』や『虐待』についての知識があれば読み解ける芽衣さんの行動は、そうでなければ、理解し難いほどの残虐行為だ」。ほんの少しの手がかりと知識を与えられると、驚くほど見える世界は変わってくる。
芽衣さんには公的支援を受けられる可能性も手段もあった。でも彼女は声をあげることができない。「SOSを出さない親には関わりようがない」という児童相談所の相談課長の言葉もまた現実だ。助けてもらえる、あるいは助けてと言っていいはず、あるいはこんな状況でいるのはおかしい、いやだ、変えたい、変えることができるはずだという気持ちを持つことができない。彼女は言葉を(拒否の、そして助けを求めるための)奪われていた。
言葉を奪われている人々、がいる。彼らは助けを求めるということ、その可能性、手段、そうしていいのだというアイディアそのものを、人生の過程で奪われている。それがどんなふうにこの社会に起因しているのか、それを想像する言葉をわたしはまだ持たないが、少なくともそうした人々が想定されることなく、「残虐」とひたすら責め立てられる、そんな社会にわたしたちがいるということだけは改めて胸に刺さっている。(小林杏)
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・著者・編集者からの紹介 杉山春『ルポ虐待--大阪二児置き去り死事件』
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