2014.08.06 Wed
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください. 以下の報告は、2010年12月19日に、立命館大学で行われた「バックラッシュ時代の平和構築とジェンダー」シンポジウムに韓国から報告者として参加されたイ・ナヨンさんとヤン・ヒョナさんへのインタビューをまとめたものです。
ヤン・ヒョナさんは、2000年の女性国際戦犯法廷に、南北朝鮮統一チームの共同判事の一人として参加され、研究者として慰安婦問題に長年取り組んでこられました。慰安婦問題解決に尽力しておられるお二人だけに、慰安婦問題をとりまく現状への憂慮から、運動の成果より、むしろ運動の停滞や困難の方を指摘する内容となっています。またお二人は、民族主義者からも距離をとっておられます。ちなみにヤン・ヒョナさんは、立命館大学での講演において、「帝国主義者=日本」という敵に対する「われわれ民族」という一国史的な枠組みを形成し、慰安婦問題を正面から取りあげずに「民族への犯罪」ですべてを説明してしまい、「自己」内部に存在する階層、ジェンダー、地域という差別体系をみようとしない民族主義者の見解を批判し、「人倫に対する犯罪」という見地から責任を問うた女性国際戦犯法廷の取り組みを、この見解とは180度異なるものとして対置しておられました。
女性国際戦犯法廷から10年。この法廷の国際実行委員会メンバーであった挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)は、1992年1月にはじまり、今では950回を越えることになったソウル日本大使館前での水曜デモを主催し、日本政府に対して元慰安婦への謝罪と賠償、真相究明を求めて活動を続けている。21世紀になって社会運動をしようという人は少なくなり、挺対協への支援者も多くはない。しかし、挺対協の運動は目的が明確なので、他の社会運動と比較すれば活発である。水曜デモには今でも毎回少なくとも20人、大きな行事があれば100人以上が参加する。デモは、挺対協だけではなく、市民運動が主導したり、若い人たちがサークル単位でデモを主導したりもしている。
今、世界各地の議会で採択されている「日本政府に謝罪と賠償を求める慰安婦問題解決決議」が、2008年10月に韓国国会で採択され、その後も市町村議会の決議が相次いでいる。だが、韓国全体として見れば、慰安婦問題への関心は決して高くない。「なぜ未来の話ではなく、過去の暗い歴史を問題にするのか」という反応をする若者が多く、個々人のレベルでこの問題の解決のために何かしようという人は少ないのだ。これは、何も今にはじまったことではない。軍事政権消滅後の1993年に大統領に就任した金泳三(98年まで在任)は、日本からの経済協力や技術援助を期待して、日本に対して「真相究明」を主張するだけで、「金銭的補償」は要求しなかった。こうした見解は、若者にも影響を与えた。当時の日本と韓国の経済格差が慰安婦問題にも影を落としたのだ。
これに対して挺対協など慰安婦支援運動が「個人補償を要求しないのはおかしい」と批判して政府に圧力をかけたために、政府は元慰安婦に支援金を支払わざるをえなくなった。90年代末から、彼女たちは定着支援を受けて家を提供され、わずかながらも生活費を支給されている。これは、明らかに運動の成果だ。
2004年には「日帝独占下強制動員被害者真相究明に関する特別法」(時限立法)が制定されて慰安婦問題は日本による人権蹂躙と規定され、元慰安婦は被害者として認定されることになった。この法律によって慰安婦問題への認識が広まり、今では中学生、高校生もこの問題の存在は知っている。
小泉元首相の靖国訪問への反対運動で慰安婦問題も登場したために、慰安婦問題を扱う韓国人は民族主義者だと考える日本人が多いが、この認識は間違っている。日本と何かあった場合に、韓国の民族主義者は慰安婦問題をもちだすこともあるが、これは口実として利用しているだけだ。彼らは民族問題のなかに慰安婦問題を含めず、慰安婦についてまったく議論していないのに、植民地問題との関係でご都合主義的に登場させたりする。
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盧武鉉大統領時代には市民団体による研究の助成制度があり、人件費への支出も可能だったが、李明博政権樹立後は、こうした助成金がすべて廃止され、市民団体の活動は停滞している。しかし、挺対協の活動は助成金ではなく、草の根の活動に支えられていたため、運動体としてのダメージは少ない。今後も、地道だが、日本政府に謝罪と賠償を求めて着実に活動を続けていくだろう。
(姫岡とし子記)
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