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「館長雇止め・バックラッシュ裁判」勝訴祝賀会に参加して 遠山日出也
2011.06.20 Mon
豊中市の男女共同参画推進センター「すてっぷ」の初代館長(非常勤)だった三井マリ子さんが2004年に雇止めされた事件に関して、昨年3月、大阪高裁は、豊中市幹部らが「一部勢力[=バックラッシュ勢力]の動きに屈し」て、「中立的であるべき公務員の立場を超え、三井さんに説明のないままに常勤館長職体制への移行に向けて動いた」ことや、後任の常勤館長候補には「三井さんは辞めることを了解している」などとウソを言って就任を受諾させたことについて、「現館長の地位にある三井さんの人格を侮辱した」ものであり、「人格的利益を侵害する不法行為」だと述べて、豊中市らに慰謝料など150万円の支払いを命じた(詳しくは宮地光子「元館長の人格権侵害を認めた大阪高裁判決」)。今年1月、最高裁は豊中市の上告を棄却し、三井さんの勝訴が確定した。
5月21日、その「すてっぷ」でこの裁判の勝訴祝賀会がおこなわれ、110人あまりが参加した。
行政との困難な闘いに勝利
当日の関係者のスピーチからは、この裁判が行政との闘いだったことによる困難がうかがわれた。三井さんは、自らの雇止めや裁判中の経験から、「行政というのは、ウソをつくとか、情報を改竄するとかいうことを当たり前のようにやる」と述べた(三井さんスピーチ動画)。また、豊中市で女たちの活動拠点として喫茶店「フリーク」を開設していた和田明子さんは、豊中市が三井館長排斥を進めていることを告発した記事を書いたために、行政から圧力をかけられ、「あの人らについて行ったら怖いよ」などと言われ、そのために運動から離れた人々もいたことを語った。
また、この事件が「人格権侵害」であることを主張した意見書を書いた浅倉むつ子さんは、女性センターの館長が行政に都合が悪くなると首をすげかえられることは普通に起きているのに、なかなか事件にはならない、そうした中、三井さんは最後まで頑張られたと述べた(浅倉さん講演動画その1、その2)。6年余りの裁判を闘ってきた三井さんは、「こんな日が来ることを夢見てきた」と述べ、思わず涙ぐまれる場面もあった。
「人格権侵害」との闘いについて
浅倉さんは、「人格権」は、憲法13条に「個人の尊重」が記されているように当然の権利だが、労働の場では尊重されにくい、なぜなら、労働の場は使用者が支配する場になりがちで、とりわけ日本では「共同体的」になるからだと指摘された。こうした人格権侵害に対する判例としては、会社に批判的な労働者を「職場八分」にしたことを不法としたものなどがあるという。
さらに、浅倉さんは、三井さんが自著で紹介した、ベリット・オース(ノルウェーの女性政治家)が言う「男性が女性を抑圧する5つの手口」――「無視する」「からかう」「情報を与えない」「どっちに転んでも『ダメ』と言う」「罪を着せて恥をかかせる」(『ノルウェーを変えた髭のノラ』明石書店 2010年 p.85-99)は、ホモソーシャルな社会が異質な存在である女性を排除しようとするテクニックであり、こうしたことに対抗するためにも「人格権」は有効だと指摘された。
私は、人格権の侵害は、権力関係が存在する場、共同体的な場ではどこでも起きがちであり、この概念は、男女を問わず、さまざまな抑圧と闘う力になると思う。同時に、人格権の侵害は、オースが言うように「男性が女性を抑圧する手口」でもある。また、非正規の「雇止め」は私を含めた男性にとっても深刻な問題だが、この裁判を含め、女性たちがいち早く闘ってきた問題だ。また、今日の日本の反動化が語られる際、フェミニズムへの反動である「バックラッシュ」はともすれば忘れられる。そうした意味では、私はジェンダーの視点を強調していきたいと思う。
なお、この「館長雇止め・バックラッシュ裁判」についての資料は、ファイトバックの会のサイトに掲載されており、私も、自分のサイトの中に、私の文章などを掲載した特集ページを開設しているので、参照されたい。
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