2015.06.09 Tue
今年は、画期的な「行動綱領」が採択された北京会議(第4回世界女性会議)から20年。
日本では、均等法が制定されて30年、男女共同参画基本法が策定されて15年。 この3月には国際女性の地位委員会が開催され、「北京+20」の政府間会議も開かれました。 これらの節目にあたって、日本の現実を見るとき、多数の女性が非正規雇用に苦悩し、女性と子どもの貧困が深刻化し、日本軍「慰安婦」問題の解決への逆風に見られるように、ジェンダー平等の前進どころか、むしろ後退しているような実感さえするのは、何故でしょうか? 第4次男女共同参画基本計画の改定作業がはじまっています。
北京行動綱領が提起したものはどこまで実践されてきたでしょうか?私たちの課題は何か? 何が求められているのでしょうか? ― このような問題意識から、3回の連続学習会を企画し、第1回は、森屋裕子さん(前尼崎市女性センタートレビエ所長)の緻密な資料をもとに講演「男女共同参画政策を検証する」を受けて学習討議しました(2015年5月22日(金)18:30 at大阪ドーンセンター)。
< ~男女共同参画政策を検証する ~ 森屋裕子さんの講演要旨>
1> 北京会議と「北京+20」
★1995年第4回世界女性会議(北京)は、20世紀最大の、アジアで初めての世界女性会議 キーワードは、エンパワメント、パートナーシップ、コミットメント 「ジェンダー主流化」 「行動綱領作成にNGOの参加は不可欠である。NGOはその作成過程を民主化する力なのです」(モンゲラ北京会議事務局長)
★「北京宣言」「行動綱領」及び国連特別総会「女性2000年会議」で採択された「政治宣言」 「成果文書」は、女性の地位向上のための国際的基準
★「北京+20」
・2014年11月ESCAP(国連アジア太平洋経済社会理事会)事務局長報告 「主要課題として、男女共同参画及び女性のエンパワメントに関する基本的な枠組み・組織の脆弱性」「総合的な規範の枠組み、ジェンダーに関する意識、能力形成、協力・協調、資源、説明責任が必要」
・2015年3.9~20(ニューヨーク)第59回CSW(国連女性の地位委員会) 「政治宣言」採択
北京宣言、行動綱領、成果文書、10周年15周年CSWの宣言を再確認
進捗が遅く不均衡、格差が残っていることに憂慮
⇒2030年までに完 全実現への努力
日本政府:国内レビュー報告書(34頁)「女性の活躍推進」「第四次男女共同参画基本計画の策 定」
2> 男女共同参画基本計画の20年
★男女共同参画2000年プラン(1996年)
意識改革段階から、「性別による偏りがない社会システムの構築」「ジェンダーの主流化」へとパラダイム転換(大沢真理)
★その限界=具体的施策の立案、予算配分も各担当者に任されており、本部機構は総合的な調整機能を持っていない、ジェンダー視点からの施策・影響評価手法が開発されてない(大沢)
★男女共同参画社会基本法(1999年6月)
第2条:男女共同参画社会の形成(規定)積極的差別改善措置は逆差別に当たらない
★第一次男女共同参画基本計画(2000年)
基本法13条による初めての法定計画
国内本部機構の組織・機能強化=「男女共同参画会議」(国務大臣・有識者各12人の合議体)
地方公共団体、NGOに対する国の支援、国民の理解を深めるための取組み
2003年6月 「202030」を男女共同参画推進本部決定
★第二次男女共同参画基本計画(2005年)
第3次小泉内閣 担当大臣:猪口邦子
2000年から積み上げてきたものを揺るがす 1990年代末からのバックラッシュ「過激な性教育・ジェンダー・フリー教育実態調査プロジェクト」安倍晋三座長)
⇒後退 *ジェンダー概念規定 「社会的文化的に形成された性別」を「社会的性別」に *「リプロダクティブヘルス/ライツに関する意識の浸透」を「生涯を通じた女性の健康の保持増進」に *「性教育」の削除 *「女性学・ジェンダーに関する調査・研究」を「男女共同参画の形成に資する調査・研究」に 前進 *数値目標が緻密化 202030に基づいた公務員試験の女性使用比率、男性の育休取得率
★第三次男女共同参画基本計画(2010年) 2009年民主党政権 大臣;福島瑞穂・岡崎トミ子 前進◆ジェンダーの解説がもとに戻った=社会的文化的に形成された性別 ◆男性・子どもにとっての男女共同参画◆貧困など生活上の困難に直面する男女への支援 ◆高齢者に加えて、「障害者、外国人等」がカテゴリーとして入った◆成果目標(82)参考指標(161)◆M字型カーブ問題の解消を強調
★第四次男女共同参画基本計画策定の現状 2014年10.6 総理大臣から「基本的考え方」の諮問 2015年1月論点整理 夏中に答申予定=遅れている 2015年中に策定 現政権の影響がどこまで出るか?
3>すべての女性が輝く社会
★2013年4.19 安倍首相の「成長戦略スピーチ」 最も活かしきれてない人材=女性
★内閣府男女共同参画局に「女性が輝く社会づくりチーム」「輝く女性応援会議」設置
目的=経済成長 手段=女性の活用?
★2014年6.24閣議決定「日本再興戦略改訂2014」未来への挑戦
★「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」(女性活躍推進法案) 2014年10.17国会提出→今国会で審議?
女性活躍担当大臣設置 「すべての女性が輝く社会づくり本部」設置 「すべての女性が輝く政策パッケージ」
★日本の現実は
*「普通の女性」の低賃金化 *派遣法→生涯派遣への道 *長時間労働と残業代ゼロ法案 *ケア労働のブラック化 *貧困主婦の出現 *単身女性の高い貧困率 *イクメン・キャンペーンによる男性の二極化
➡私たちの到達点と課題 男女共同参画社会(基本法)の二面性(男女の人権を謳いながら、一方で少子高齢化等経済情勢への対応)に対して、
★ジェンダー秩序を突き崩す「ジェンダー平等」の規範を!
★標準労働者像(家事労働・ケア労働なき労働者)の転換
<会場討論=北京+20の情報を求めて、「何をなすべきか」の意気込み>
北京会議前後のキャンペーンに比べて、今回の「北京+20」のCSW会議情報がメディアも含めてほとんどアピールされてないなかで、正確な情報を求めて参加された方々が多かった。
★遠くは岩手県から「ここへ来れば情報が得られるか」と思って参加された方、
★CEDAWにおける日本政府報告の審査が2016年2月に行われる。前回のようにNGOのカウンターレポートづくりを急がねばならないのに、その働きかけが関西まで届かない
★「北京+20」のCSW会議の「政治宣言」が事前に公開されず、NGOの参画が保障されず、 現場の女性たちの声が封じられており、各国政府の責任と課題が曖昧になっていると、国際的なフェミニストのネットワークからの批判が出ていると聞く。政治綱領にも「進捗が遅く不均衡、格差が残っていることに憂慮」と出ている。国際的成果にのみ頼っているのでなく、私たちの自前の力量をつけないといけないと思う ― 等々の声が出ました。 (要約=G)
<「北京会議から20年 私たちの到達点と課題」第2回・第3回の予告>
★第2回「労働法制の規制緩和とディーセント・ワーク」幸長裕美・弁護士 9月4日(金)
★第3回「ジェンダー平等をめざす社会政策」(仮題)北明美(福井県立大学)10月9日(金) いずれも18:30~ 大阪ドーンセンターです。どなたでもご参加ください。
問合せ: tnforum2013renraku@gmail.com 以上
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