エッセイ

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〈京暮らしつれづれ 2〉京の早春譜   中西豊子

2010.02.25 Thu

 2月も、早いものでもう終わろうとしています。今年は北海道や東北で大雪が、東京でも雪が多かったとか。京都も寒い日が続きました。

 2月と言えば、節分ですが、京都では吉田山の節分祭、蘆山寺の鬼踊り、壬生狂言「節分」が演じられるので大勢の観衆が集まる壬生寺などが有名です。 吉田山は旧制高校三高の有名な寮歌「紅もゆる」の中にも歌われているように、三高の裏山でした。今では京大学舎に取り囲まれた位置にある、小高い丘に吉田神社はあります。

 2日は平安時代から続いてきたという神事、暴れまわる鬼を追い払う「追難式」などの行事がありますが、有名なのは、3日に行われる「火炉祭」です。護摩木と共に1年間のお札やしめ縄などを燃やします。厳寒の夜空に赤々と燃えあがる火を見ていると、本当に厄が払われる気がするから不思議です。影絵のような人の動きが炎と共に揺れて、幻想的な趣があります。2日~4日まで夜店がズラリと並んで、いつもは閑静な参道が人で埋まるのも面白いです。今では「阿含の星まつり」というのが盛大で、派手な宣伝をするので大勢の人が集まるそうですが。

 まだ寒い日も、日差しが日ごとに強まって、21日の弘法さん(東寺の弘法市のこと)、天神さんの梅花祭(菅原道真公の命日25日)が過ぎると、3月ももうすぐそこです。

 3月3日の雛祭りは、京都では旧暦で祝うので、我が家でも4月3日に祝っていました。うちは4人も女の子がいたものですから(私は四女、今では希少種です)お雛さんも7段飾りで、飾るのもしまうのもそれは大変な騒ぎでした。最後にお雛様の道具類を飾って一件落着となるのですが、その大騒ぎも楽しいものでした。

 お友達も招いて出されるご馳走の献立も、毎年全く同じです。散らし寿司、赤貝のてっぱい、煮蜆、笹かれいの焼いたものに、蜆のお吸い物(ほんとうは蛤らしい)。その日だけ許された白酒。真っ白で、ちょっと甘くて形容し難い味でした。

 
 全てお雛様に合わせて小ぶりの器に盛られます。いまだに友人からあのお雛祭りの味が懐かしいと言われて、私も思わずあの頃を、そして味を思い浮かべます。何よりあの桃の花といい、春の訪れという季節感がいいですね。

 「男女共同参画社会」という官製の言葉が聞かれるようになった頃かと思いますが、雛祭りや端午の節句は、男女差別を助長するのでそんな風習はよくない、と書かれたパンフレットが出たことがあり、そのことがジェンダー・バッシングの火に油を注いだようなことがあったかに記憶しています。確かにこんな行事は、男の子は勇ましく勇壮に、女の子は優しく内向きにと、わざわざ意識を植えつける元凶の一つであるかなとは思います。

 けれど、民衆の中に千年も息付いてきた習俗を、簡単に捨てるよう促しても、反発を招くことも間違いないでしょう。民衆に根付いた民俗文化とでも言えるようなものが、絶えるのは惜しい気もしますが、「面白うないぞ」と思う人が増えれば無くなるだろうし、その時代の人々の気分や精神によって自然に終焉に向かうような気がします。幾つもの行事がそうして消えて行ってますもの。

 考えてみれば、雛段を作るには、ほぼ1年間しまっておく場所がいりますし、今の住宅事情では厳しいからか、大都市では雛飾りをする家は激減しているように思います。幼稚園などでは大きな雛段が飾られているようですが、どんなお話と共にお祝いをしているのか、聞いてみたい気もします。

 最後に、春を呼ぶ行事「東山の花灯路」をご案内しておきます。
 神宮道、石塀小路、ねねの道、茶碗坂と4.6キロの道に、露地行灯がともります。ほのかな光にいざなわれて、青蓮院、知恩院、八坂神社、高台寺(各寺社はその時期ライトアップされます)へと、早春の京都を味わえます。3月13日から22日まで。

カテゴリー:京暮らしつれづれ

タグ: / 京都 / 中西豊子