エッセイ

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京暮らしつれづれ・6 「水無月」を味わう水無月   中西豊子

2010.05.25 Tue

 早いもので、沖縄ではもう梅雨入りだとか。今年は地球温暖化と関係あるのかないのか、奇妙な温度とお天気に振り回される毎日が続きます。今日は何着ればいい?と、毎日温度計を見る妙な習慣がつきました。5月の末になって、やっと平年並みになりましたが、5月に入っても朝晩の寒い日が続いたり、日中の温度が真夏並みだったり。風邪をひいてしまったという方も多いようでした。

 6月といえば衣替えの季節。京の町屋では細長い家を少しでも涼しく過ごそうと、建具を夏のよし戸や、御簾に換えていました。家の外には「すだれ」を立てかけて影をつくり、見た目にも涼しげにしていました。今では伝統的な町屋も激減していますし、エアコンが普及したので、こんな風習はかなり減ったと思います。 食い意地の張った私は、6月と聞けば、真っ先にお菓子の水無月(みなづき)を思い出します。水無月は、外郎(ういろう)の上に甘い小豆がたっぷり載った三角形のお菓子です。京都ではこのお菓子を必ず6月30日に食べます。私も、小さいころから今まで欠かさない行事(?)です。今も水無月を食べる習慣を守っている人が多勢いると見えて、6月になると京都のお菓子屋さんは一斉にこの水無月を売り出します。とはいえ、今では年中お目にかかるようになって、何だか季節感がまた一つ薄れて行く気がします。

 このお菓子のルーツを探ると、なんと平安時代に遡るのです。当時「氷室」から、氷を切り出して宮中に献上することが行なわれていましたが、この季節に、氷室の節句という儀式が行われていたそうな。その氷を口にすると、夏の流行病にかからないといわれていました。夏にはとっても怖い伝染病がすぐ蔓延してしまう昔の京の町では、こうした迷信が数多くありました。

 当時のことですから、氷のような貴重品は庶民の口には入りませんから、この氷を模した菓子、「水無月」で代用したのだとか。氷室は冬に出来た氷を夏まで保存するムロのことで、京都市北区に今も地名として残っています。でも今私たちが食べている水無月とは違って、平安時代には甘くはなかったでしょうね。

 水無月は、名古屋の名物「ういろう」と形は違いますが、材料は類似物だと思うのです。こちらも随分古くからあるお菓子で、1659年、中国からきた外郎氏が第2代尾張藩主徳川光友に献上して以来、尾張に根付いたそうですよ。名前はそこから来ています。

 「外郎売り」という舞踊劇が、歌舞伎十八番の一つにありますね。幸い、現団十郎の「外郎売り」を観た事があります。江戸時代に二代目団十郎によって初演されていて、面白い「外郎売り」の姿から創作したというのです。こんな舞台にもなるくらいですから、愛されてきたお菓子なんですねえ。

 さてさて、お菓子からすっかり話は飛んでしまいますが、実は今、「キトラ古墳壁画「四神」特別公開」が飛鳥資料館で開かれています。(実物展示は5月15日から6月13日迄です。)

 毎年大きな注目を集めるキトラ古墳壁画の特別公開ですが、今年は「朱雀」の修復が終わり、特別展示室で「四神」が揃って見られるということです。私も会期中に何とか見てきたいと思っています。

 古代中国から伝わる「四神」はそれぞれ東西南北を守る方位の神たちで、明日香村のキトラ古墳(7~8世紀)には、東の青龍、北の玄武、西の白虎、南の朱雀が、極彩色で描かれていたといいます。日本にも早くにこの四神伝説が伝わっていたことが判ります。(写真は朝日新聞4月14日夕刊より。)

 想像力に富んだ架空の動物、四神たちの姿が、CG画面で迫力満点に描かれていたのが、韓国ドラマ「太王四神記」です。ぺ・ヨンジュン主演の太王が四神と共に活躍するお話です。
 日本でもNHKで放映され、同じ作品が映画になって、この5月・6月に、各地で上映されて話題になっています。宝塚でも劇化、上演されていましたね。また、手塚治虫の名作「火の鳥」、その姿は朱雀がモデルと言われています。

 古代に四神がこんなに身近に描かれていたことを思うと、大昔、日中韓がとても近い関係だったことが感じられますね。

カテゴリー:京暮らしつれづれ

タグ: / 京都 / 中西豊子

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