2010.09.25 Sat
今年の猛暑はとうとう9月半ば過ぎまで居座りましたね。
漸く涼しくなったかと思ったら、早くも神無月です。
神無月は洛中洛外様々なお祭りの季節です。平安神宮の時代祭が京都三大祭りのひとつとして有名ですが、鞍馬の火祭、北野天満宮のずいき祭り、宇治茶祭りなど大きなお祭りだけでもいくつもあって、追いかければ忙しいことです。
今日は宇治のお話を少ししたいと思います。
ここは質のいいお茶の産地として知られ、平等院参道や商店街には老舗の茶舗が軒を連ねています。宇治の茶祭りは、鎌倉時代に宋からお茶を伝えたという栄西禅師、明恵上人、そして少し時代は下がりますが、爆発的に茶を普及させた千利休の功績を讃えた祭りだといいます。故事に因んだ様々な行事が繰り広げられます。(10月第1日曜日)
宇治市は宇治川を挟んで景観の素晴らしいところ。今では京都駅から急行でわずか10分の距離です。街は大きくはありませんが、世界遺産の平等院、宇治上神社など見どころがいっぱいなのです。少し足を延ばせば黄檗山万福寺や三室戸寺もあります。最近では瀬戸内寂聴さんが館長の「源氏物語ミュージアム」が人気を呼んでいます。光源氏のお屋敷がミニチュアで一望できたり、人形や映像などいろいろな工夫で源氏物語を楽しませてくれます。今は源氏物語の街として観光客誘致にも力が入っているようです。
源氏物語の中でも、「宇治十帖」はこの宇治が舞台となっていて、「橋姫」で始まり「夢浮橋」で終わっています。「京から宇治へ、光源氏からその子・薫へ」と物語が移るのを橋で暗示しているとも言われています。
ここは平安貴族たちの別荘地として愛された土地であり、都の人々の憧れの地でもあったことでしょう。でも当時は都から遠く、山鹿のなく隠棲の地でもあったようです。和歌の世界で、宇治は「憂(う)し」の掛詞として使われているのを見ると、憂きことの多い都から、逃れる場所であったのかもしれませんね。
当時の貴族たちは、持仏堂を建てて仏に祈ったといいます。平等院も、もともと藤原頼通が、父、道長から譲り受けた別荘で、それを寺院に改めたものだとか。お池のほとりに建てられた鳳凰堂は、いつ行っても本当に美しい姿で感嘆してしまいます。今では世界遺産に指定されて、観光客が多勢つめかけ、頼通もさぞビックリしていることでしょう。
ところで、この源氏物語ですが、これまでの評論家や国文学者たちが読み解いてきた読み方とは全く違う読み方をしたのが駒尺喜美さんです。「紫式部のメッセージ」(朝日選書1991年)を読んだとき、私は目の前がぱっと開けたような気がしました。
「宇治十帖」は、別の人の作ではないかという説さえ出た事がありましたが、「これこそが紫式部の一番の本音、どうしても書いておかなくてはならなかった物語だろう」と駒尺さんは言っています。源氏物語には戸惑いを感じてきた女性読者(私自身もそうでしたが)に、紫式部の心情が、初めてくっきりと明かされたのではないかと思います。フェミニズムの視点で見れば、そういうことだったのかと謎を明かして貰った気がしました。丸谷才一たち男性評論家たちが、リアリティがない・理解できないとした部分も、女性の目で捉えてみれば全く違った情景になります。
駒尺さんは残念ながら彼岸へ行かれましたが、20年も前に書かれたこの本は、今読み返しても本当に面白く読めます。まだ読まれていない方にはお薦めですよ。
さて、話をお祭りに戻して「時代祭」ですが、平安神宮の社殿や神苑を保存するのに市民でつくった平安講社が記念事業に始めたといいますから、明治時代から始まったまだ新しいお祭りです。今も平安講社から町内会へ寄付の依頼が回ってきます。これも市民が支えるお祭りなんですね。
最初にピーヒャラドンドコドン、ピーヒャラドンドコドンと賑やかに進んでくるのが勤王隊です。「今年はもう見ないでおこう」と部屋に閉じこもっていても、この調子のいい鼓笛隊の音を聞くと、思わず外に飛び出して行列を眺めてしまうのです。
行列は、京都にゆかりがあった歴史上の人物たちが次々と現れます。坂本竜馬や桂小五郎などお馴染みの維新の立役者たちから、時代を遡って行って、最後は平安時代に行きつきます。歴史に名を残した人たちが、その時代ごとの風俗で次々現れるので面白く見られるのですが、どう見てもミスキャストな人もいて笑ってしまうことも。(おっと失礼!)
この行列は、御所から平安神宮まで御池通などに設えられた観覧席の前を通過しながら、4.5キロもしずしずと歩きます。実に2千人、牛馬70頭余といいますから見る方も疲れてしまうほどです。どの時代でも、芝居やドラマによく登場するヒロイン、例えば千姫、淀君、巴御前、静御前などは人気が高いようです。
威勢のいいお祭りを見馴れている方は、「かったるい祭りだね」と言われます。いろんな意味で、すごいエネルギーが使われ、今では観光資源として大きな存在ではあるのでしょうが、「かったるい」のも確かです。私も実は最後まで見た事はありません。
その同じ22日の夜、鞍馬では火祭りがあります。こちらは、鞍馬山にある由岐神社の祭りです。牛若丸が天狗と出会い修行した所です。長い石段を大きな松明を多勢の男たちが担いで駆け登るスリリングなものです。由緒のある奇祭だと言われていますが、なるほど鞍馬山が火で染まるかと思うほど大がかりな火祭りです。残念ながら、鞍馬へ通じる一本道が狭く、電車もまったりと走る郊外電車だけで、沢山の見物人を運ぶには容量が足りないようで、すさまじい混雑になります。そんなわけで、私も若いころにたった一度行ってみたきりです。
こんなお祭りが一段落した頃から本格的に紅葉の美しい季節になります。今年のような暑さの後では、自然の贈り物もどうなるのか心配ですね。
あ、そうそう、宇治ならではのお楽しみ、お茶風味のスィーツもご紹介しておきましょう。抹茶ぜんざい、抹茶ソフトクリームや、抹茶ロールケーキ、茶団子などどれも美味しいです!
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