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映画評  『キューティー・ブロンド』 星薫子

2010.12.28 Tue

差別にめげない筋肉質な女子

根拠があるのかないのか、未だに根強いアメリカの「金髪おバカ説」と「ブルネット知的説」。ニコール・リッチーなどのお騒がせセレブが反省イメチェンを図るときも、天然ブロンド→ブルネットというパターンが多い。ブロンドの受ける逆風がどれほどのものなのか、日本に住む私には知る由もないが、本作はブロンド差別で疎まれる女子の奮闘を小気味よく描いている。

 ブロンド娘エルは、政治家を目指す恋人に「ブロンド過ぎて…」という理不尽な理由で振られてから一念発起、ハーバードのロースクールに入学する。しかし全身ピンクに身を包んだ彼女に周囲は冷ややか。元カレはブルネットと付き合っている。それでもエルは持ち前のポジティブ・パワーで弁護士への道をつかみ取り、みんなを見返す。もちろん、今さら未練たらしい元カレも今度は自分から捨てて。何より彼女は弁護士という天職を見つけて、中身も外見も充実した大人の女性に成長する。

……とここまで読んで、底辺に流れるあからさまなブロンド蔑視に驚かれる方もいるかもしれない。が、これはそういう映画だ。映画中にもエルがはっきり「私はブロンド差別されてる。だけどブロンドって実はすごくタフなのよ」と言うシーンがある。彼女の開き直りっぷりが痛快だ。それにしても見ている間ずっと感じていた違和感は何だろう。もちろんブロンド差別が皮膚感覚として理解しづらいせいもあるだろう。しかしもっと大きな理由は、エルの攻撃的なまでのポジティブ思考。弱点は強みに、ピンチはチャンスに。恐れや戸惑いといったネガティブ(と言えるだろうか?)な感情は彼女の辞書には存在しない。このマッチョな思考回路には、「健康のためなら死んでもいい」というアメリカン・ジョークを思い出してしまった。

 主演のリース・ウィザースプーンの尖ったアゴが何とも攻撃的で、個人的には髪の色よりもアゴの方が印象に残っている。

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カテゴリー:新作映画評・エッセイ / DVD紹介

タグ:くらし・生活 / ファッション / 映画 / ジェンダー / DVD / 女と映画 / 星薫子