2011.07.15 Fri
サンフランシスコ便り、と言いながら、前回はバークレーの女の人たちのことを書かせてもらい、そして今回はサンディエゴに住んでいるわたしの友だちのことを書かせてもらいたい。なぜ「サンフランシスコ」という単語がこんなにみんなの中に浸透して、あたかもベイエリア全体の広大なところを指すようなイメージを持つようになったのか(実はとってもちっちゃいサンフランシスコ)、不思議な気もするが、今回は、ものすごく魅力的なわたしの友だち、かばの話をしたいので、ごちゃごちゃ言うのはやめようと思う。
6月19日、サンディエゴにある美術館を解放しての世界難民デーというイベントが行われた。かばは、その実行委員の一人を務めていた。かばと出会ったのは、大学一年生の入学式。そのときから「難民、難民」と言い、「国連で働く」と宣言し、実際にインターンで働いたりもしていた。その中で三年前に出会ったのが、カレン族の人たちだった。ほとんど英語を話さない彼/女たちだったけれども、かばはなぜか通じたという。それから一年後、資金を得るには組織化しなければ、ということで思い切ってNPOを立ち上げたという。
約20年に亘り殺される危険に直面し、また難民キャンプで生まれ育った彼/女たちがどのようにかばに心を開いていったのか、その過程をわたしは知らない。でも、今のかばとカレンの人たちの関係性を見ていると、そこにはものすごい営みがあることが分かる今年の3月11日の地震の直後、本当に1¢ももたないようなカレンの人たちがみんなでかばにカンパを渡した。十数万円という大金だったという。しかし、今も葛藤は続いている。英語を学ぶことが国を捨てることだとして拒否する人、カレン族の伝統的な織物をサンディエゴでも織り、売れば少しでも収入になるから、とかばは勧めてきたが、ビルマの糸でないと織れない、と言い張る女性たち。帰ることのできない国のことを思って嘆いて、どうしようもないことを嘆いて生きて、死んでいってほしくない。ここにきたことを後悔してほしくない、とかばは言う。かばのこの営みに怒りは存在しない。カレンの人たちをこれほどに苦しめている政治状況に対して、もちろん怒りはあるが、今、ここにいる人たちにできることをする、ということに徹している。
かばのパートナーは中国の人。数年のうちに彼の故郷へ一緒に帰るつもりだと聞いてびっくりした。ここのカレンの人たちは??次のオーガナイザーをこの数年のうちにカレンの人たちの中から育てるつもりという。かばも今後ずっとつながっていることはもちろんだけれど、かばにとってパートナーの存在は最優先なのだ。その最優先の中で、自分の道、夢を手放さないかばがずっといる。「どこにでもカレンの人たちはいる、またそこで一からやるよ、多分一生カレンの人たちと一緒」、とかばは言う。アメリカを去ることは、あきらめでも、妥協でもなんでもないのだ。
そんなかばの生き方を本当にすてきだと思った。
かばの友だちや寄付で集まった衣類や電化製品などを、毎週到着する難民の方々に配り、家族構成を把握し、子供たちの学校状況を確認し、仕事を斡旋し、またカレンの人たちを雇用してくれるような店を訪問する。フードスタンプと生活保護のような形で支給されているお金は三ヶ月ごとに更新が必要で、そのサポ−トのために社会福祉課を訪問したり、違法とされているフードスタンプの現金化をして、そのことを役所で言ってしまい、訴えられかけている家族と一緒に社会福祉課へ出かけ、ひたすら謝ったり。難民の方々がサンディエゴへ移ってきて、半年後に仕事が見つかるころだという理由から、支給されてきたお金が大幅カットになる。そのときどの家族も大きく落ち込むという。その家族を無理矢理にでも連れ出し、海へ連れて行く。これが最初にかばがしていた仕事だそうだ。それしかできなかった、という。同時に助成金申請のために、ほとん眠らないで申請書を書く。
かばは人を大切にする。かばのこの信じられないほどの力は、人への思いから来ているのだと思う。お世話になった人たちへの恩返しとして、かばは遊びも仕事も眠るのも食べるのも全力を尽くして生きている感じがする。
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