エッセイ

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セカンドチャンスがほしい。【サンフランシスコ便り(8)】 堀川弘美

2011.12.15 Thu

受刑者や刑務所に関わることを、今勉強している。その中でもいつも問われるのは自分。そしてしみじみと思うのは、自分が決して白くないということ。これまで白いふりをして、白っぽい存在として、「黒」とされる人たちのことを見て語ってきた。「黒」とされる人たちと日常的に関わる中で、彼/女たちがやっとぬくもりをたたえた、生きている人として見えるようになり、自分との境界線が消えて行った。それは同時に自分の黒さに気付く過程でもある。たまたま今の法律で「罪」とされる行為をしていないから、もしくは、行為をしていても捕まっていないから、こうして白として生きてきていることに気付く。そんな黒い自分にショックを受けていたけれど、そこでまた私を励ましてくれたのも、アメリカで出会った元受刑者だった私の友だちだった。

自分が白だと信じようとしているときは、黒が混ざることを鋭く拒絶する。でも、自分の中に黒を見るとき、周りに対して自分の中に寛容さというか、余裕が生まれる。人の中に悪を見つけては、それを黒と見なしてしまい、関わることを難しくしてきた。自分が白い立場からしか、人を判断できなかったから。でも、自分にも黒があることを知ってから、「自分ってそんなもんだよね。」と灰色の自分を受け入れてから、少し見える景色が変わってきているように感じる。

だからこそ、今、すごく思う。人にはセカンドチャンスが必要なんだとすごく思う。黒い一点で人を判断して、その人を語ることなど到底できない。私の黒い一点だけで、私に駄目出しをしないでほしい。セカンドチャンスがほしい。そんな社会に生きていきたい。

前のお便りで書いたAsian Prisoners Support Committeeの友だちと

学校が怖い。

なんでこんなに自分に生き苦しい生き方を強いてきたのだろう?周りの人に、可能性がいっぱい見えるようになって、ますます楽しくなって、自分の時間がどんどん豊かになってきて、今、これまでの自分を振り返る。

こんな風に考えるようになったのは、学校に行き始めてからだと思う。幼稚園くらいまでは、だめな自分にも居場所、帰る場所はあった。学校へ行き始めてからもあったけれど、学校が生活の中心になるにつれ、学校で過ごす時間が長くなった。学校では、だめな自分の居場所はなかったので、だめになってしまわないようにがんばるのに一生懸命だった。学校の「だめ」基準を自分の内側にしっかりと内面化していたので、なかなかうまいこと「だめ」基準をクリアしてきたと我ながら思う。

ハロウィンの日の学校で

 今、サンフランシスコにある無料の英語の学校に行っている。70代、80代の方も多く来られていて、30年以上通っている人もいる。その学校は、私がこれまで経験してきた学校と全く違う雰囲気で、楽しいし怖くない。この学校でいろいろな人の顔を見ていると、今の普通学校の中でどれだけの子たちの可能性の芽が摘み取られているのだろうと思う。そしてたまたま数日前、「こんばんは」という定時制中学校ドキュメンタリー映画を観た。日本とアメリカという違い、時代の違いはあったけれど、どちらも学校のあり方を鋭く問うものだと感じた。生き苦しい生き方をしなくても、グレーの私にもちゃんと価値があることを教えてくれたのは学校ではなかった。家族、沖縄、湯布院、大分、韓国、中国、フィリピン、ベトナム、大阪、東京、カリフォルニアとうろうろして、その出会いの中で学んだ。特にカリフォルニアに行って以降、いつもココロの指針として5年近く住んだ湯布院での出会い、経験があるのだ。グレーの私を知っていても、私に絶望しないで、根気よく私と関わり続けてくれた人たち。私のいいところを見つけては、その長所を活かす場所を与えてくれた人たちのあり方が、何かに迷ったときに立ち返る場所として私の中にあり続けている。こんな場所を持てた私は本当にしあわせものだ。私もそんな場所を作ろうと今、準備をしている。

実は今、ビザの延長手続きのために日本に帰ってきている。サンフランシスコ便りでなくてごめんなさい。来週アメリカに戻るので、来月はサンフランシスコからサンフランシスコ便りをお届けできるはずです。

カテゴリー:サンフランシスコ便り

タグ:アメリカ / 堀川弘美 / 刑務所

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