憎悪の広告

著者:能川 元一

合同出版( 2015-09-14 )

ネットを開いて、たとえば「慰安婦」と検索してみる。すると、動画から、ブログから、日常とはとても思えない罵詈雑言があふれ出す。 しかし、じっさいに日本社会の日常は、とても「まとも」とは思えないような、目を覆いたくなるような人格を毀損するような言葉にあふれ かえっている。

本書は、1994年からの20年間、全国紙に掲載された広告をとりあげ、どのようなメッセージをそのつど新聞読者に送ってきたのかを検証した 画期的な著書である。キモは、当の広告されている雑誌を読むか否かにかかわらず、全国紙を開く読者の目に、挑発的でぎょっとするような 言葉を見せ付けている、という点である。

いかにこの20年間(ちなみに、安倍晋三首相の初当選は、1993年)に、こうした言葉を受容してきたか、そして、本来なら信じがたいことだが、 国民を代表するはずの国会議員たちが率先して、他者(とりわけ、他国のひとびと)を貶め、根拠なき妄言をばら撒いてきたかということに、 それこそ否応なく気づかされる。

しかし、20年ずっと繰り返されるのは、日本がこのままじゃ壊滅する、侵略される、日本じゃなくなる、といったことだ。いったい、誰が自虐的 なの、と思わずにはいられない。しかし、この社会が壊れかけているのは、とても「美しい日本語」とは思えないことを日本社会に撒き散らして いる人びとのせいでは??