エッセイ

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体が不自由になったときの日常生活の手続きは?【大切なモノを守るには】

2013.07.03 Wed

2 財産管理等委任契約書で「自分」や「パートナー」の日常生活を守る【大切なモノを守るにはNo.2-1(10)

このシリーズは、事実婚・非婚・おひとりさま・セクシャルマイノリティといった方々に対し、「法律婚夫婦+子」を基本概念として作られている現状の各種法制度の中から、活用できる制度がないかを提案していくものです。


■テーマ・その2:財産管理等委任契約書で「自分」や「パートナー」の日常生活を守る

第10回 体が不自由になったときの日常生活の手続きは?

●自分が生きている間のことも考えよう!

前回はインターバルの回として「行政書士の資格勉強法」についてお話しましたが、今回からはまた本来のテーマに戻ります。

これまでは「遺言書」をテーマとして、事実婚・非婚・おひとりさま・セクシャルマイノリティといった方々にとっては、パートナーや自分の望む相手に自分の遺産を遺すには「遺言書」を作成しておくことがほぼ唯一の手段であることをご説明してまいりました。

「遺言書」を作成する際に考えるのは、自分の死後のことです。自分の死後に、残されたパートナーや遺産の使い方など自分以外の人のことを中心に考えることになります。

一方、自分がまだ生きている間のこともないがしろにするわけにはいきません。自分自身のことは、自分が死んだ後の「遺言書」よりもずっと大切で重要なことです。

そこで、「遺言書」というテーマに引き続き、このコラム「大切なモノを守るには」では、テーマその2及びテーマその3として、自分やパートナーが生きている間に、どうやって日常生活を守るかを見ていきます。

●判断能力が衰えたときは「成年後見制度」。では体が不自由になったときは?

死ぬまでずっと元気でいられるのならばいいのですが、多くの人は「老後の面倒」を自分や家族の切実な問題として考えているでしょう。人間、年を取れば、体の自由もどんどん効かなくなり、判断能力も衰えていきます。それが自然の摂理です。

判断能力が衰えたとき、いわゆる認知症になってしまった場合にどうするか、という問題については、少子高齢化が進む中、「成年後見制度」というものができ、2000年4月1日、介護保険法と同時に施行されることになりました。

この「成年後見制度」については、テーマ3で詳しく見ていきますが、簡単にいえば、判断能力が衰えたときに、いろいろな手続きを自分に代わって誰かにやってもらうためのものです。

では、判断能力はまだ充分にあるが加齢で寝たきりや体が不自由になった場合、または、高齢者でなくても病気や怪我などで長期入院・長期療養となった場合はどうでしょう。

例えば、銀行からお金を引き出したり、家賃や光熱費、税金の支払いをしたりといったささいな日常生活も体が不自由だとできなくなります。こういったいろいろな手続きを自分の代わりに他の誰かにやってもらうための制度はあるのでしょうか。

残念ながら、そういった場合に、これといった特別の制度があるわけではありません。そのため、判断能力がある状態で、誰かに自分の代わりに手続きをしてもらうには、自らの判断で「委任状」を書いて依頼するのが大原則となります。

ただ、何かの手続きの度に委任状を作成するのでは手間が掛かりますし、寝たきり状態や腕・目の怪我などで思うように委任状を作れない場合もあります。

また、法律上の配偶者や子といった戸籍から本人との血縁関係がわかる立場であれば、本人の代理も比較的容易な場合があるかもしれませんが、事実婚・非婚・おひとりさま・セクシャルマイノリティの場合は、そうもいきません。

そんなときのために役立つのが「財産管理等委任契約書」です。

これは、特別な制度ではなく、契約書当事者の自由意志に基づく任意の「契約」となり、体が不自由になったときに、財産管理や日常的な事務処理を、信頼できる特定の人(事実婚のパートナーや内縁のパートナー、同性のパートナー、友人・知人、士業者等)に代理して行ってもらうための「包括的な委任状」ということになります。

「財産管理等委任契約書」を作成しておけば、公的な証明書が出ない関係の場合でも、本人に代わって様々な手続きを代理することができるようになります。また、包括的な委任状ですので、個別に委任状を作成する必要もありません。

●「財産管理等委任契約書」に記載できる内容

「財産管理等委任契約書」は任意の契約書ですので、委任内容は契約当事者の合意で自由に設定することができます。(ただし、訴訟代理権については個別に委任状を取ることとされています)

金融機関からのお金の引き出しや、代金の支払い・受け取り、戸籍謄本・住民票の取得等の「財産の管理・保存」のほか、病院や介護施設に入所するための手続き、要介護認定の申請、介護サービスの契約・変更・解除等の「医療・介護関係の手続き」について契約したり、必要に応じて、「月に○回、安否確認をする」といった「見守り」の内容を盛り込んだりすることもできます。

また、委任契約は本人が亡くなった場合には終了するものとされていますが、死後の葬儀や納骨、財産整理などの処理といった内容を特約事項として結ぶこともできます。

死後の事項のみを「死後事務委任契約」として、「財産管理等委任契約書」を交わした相手とは別の第三者と交わすことも可能です。

このように、自分やパートナーの体が不自由になったときのために「財産管理等委任契約書」を作成しておくことで、自分や大切なパートナーの日常生活を守ることができるようになります。

なお、「財産管理等委任契約書」は任意の契約書ですので、財産管理を依頼する本人に判断能力がないと作成することはできません。本人に判断能力がない場合の財産管理等については、「成年後見制度」を利用し、その中で決めていくことになります。

●「財産管理等委任契約書」は万能なのか?

この「財産管理等委任契約書」ですが、単なる私文書ですので、公的な効力があるわけではありません。言ってしまえば、当事者の意思に関係なく勝手に作成して悪用もできてしまうものなので、仮に単に「財産管理等委任契約書」を作成して金融機関等に持参しても、まずは応じてもらえないでしょう。

そのため、「財産管理等委任契約書」を有効に活用するには、公証役場に依頼して「財産管理等委任契約書」を公正証書にしてもらう必要があります。公正証書を作成するには、契約当事者の本人確認書類が必要なほか、原則として契約当事者全員が公証役場に行って契約書に署名・捺印をすることになりますので、当事者の意に反して勝手に作成することはできません。また、公正証書にすることによって、公的な文書となり、高い証明力を付与されることになります。

ただし、金融機関などによっては、公正証書の「財産管理等委任契約書」を持参しても、受け付けてくれないところもあるようです。事前に口座をお持ちの金融機関に確認しておくほうがよいでしょう。

次回は「財産管理等委任契約書」を例にした「公正証書の作り方」をご紹介します。「財産管理等委任契約書」に限らず、遺言書や離婚協議書など、公正証書にしておいたほうがよいものがたくさんあります。

特に事実婚・非婚・おひとりさま・セクシャルマイノリティにとって、公正証書は自分や大切なパートナーを守る武器を強固にするために、なくてはならない手段のひとつとなります。いざというときに備えて、公正証書の作り方を知っておきましょう!

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【文】
 金田行政書士事務所
 行政書士 金田 忍(かねだ しのぶ)
 http://www.gyosyo.info/
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カテゴリー:大切なモノを守るには

タグ:相続 / 遺言書 / 成年後見制度 / 財産管理等委任契約書