エッセイ

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「法定後見制度」で親の老後を考えてみよう【大切なモノを守るには】

2013.11.03 Sun

任意後見制度で大切な「自分」と「尊厳」を守る【大切なモノを守るにはNo.3-2(14)】

このシリーズは、事実婚・非婚・おひとりさま・セクシャルマイノリティといった方々に対し、「法律婚夫婦+子」を基本概念として作られている現状の各種法制度の中から、活用できる制度がないかを提案していくものです。


■テーマ・その3:任意後見制度で大切な「自分」と「尊厳」を守る

第14回 「法定後見制度」で親の老後を考えてみよう

●「法定後見制度」について

前回から「判断能力が衰えてきた人」を支援し保護するための制度「成年後見制度」のご紹介に入りました。この「成年後見制度」は、大きく2つの制度に分かれています。1つは「法定後見制度(判断能力が衰えてしまった後の対策)」。もう1つが「任意後見制度(判断能力が衰える前の対策)」というものです。

今回ご紹介する「法定後見制度」は、このコラムの対象者である事実婚(同性パートナーを含む)・非婚の方々においては、ご自身やパートナー自身に対して利用するのは少しハードルが高い制度なのですが(後述のように、家庭裁判所に制度の申立ての権限がないため)、まずはご自身の親やパートナーの親の問題を考えたときに役立てることができるのではないかと思います。

それでは、「法定後見制度」の概要をご紹介していきます。

●「法定後見制度」の3類型

「法定後見制度」は、、<本人>の判断能力が衰えてしまった後の対策として利用するものですので、<本人>の判断能力の程度に合わせ、3つ(後見・保佐・補助)に分かれています。どの類型の制度を利用するか、誰を後見人(保佐人・補助人)にするかなどを本人の住所地の家庭裁判所に申立てることで成年後見制度を利用することができるようになります。

裁判所というと「紛争の裁判をしているの場所」というイメージがありますが、成年後見制度の審判といった一般市民の日常を支える業務も行っているんですね。

「法定後見制度」の3類型は以下となっています。

【後見】<本人>の認知症などがかなり進んでしまっている場合
精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により、常に判断能力が欠けている状態にある人を保護・支援するための制度です。

「後見制度」を利用すると、家庭裁判所が<本人>のために「後見人」を選任し、「後見人」は<本人>の財産に関するすべての法律行為を<本人>に代わって(代理権)行うことができるようになります。また、「後見人」(または<本人>)は、<本人>が行った法律行為(日常のちょっとした買い物等以外)を後から取り消すことができます。

例えば、「後見制度」を利用すれば、<本人>が契約してしまった不要で高額な買い物を「後見人」が取り消すことができます。

【保佐】<本人>の認知症などがある程度進んでしまっている場合
精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により、判断能力が著しく不十分な人を保護・支援するための制度です。日常生活の簡単なことは自分で判断できるけれども、重要な行為に関しては、誰かに援助してもらわないとできないという場合です。

「保佐制度」を利用すると、<本人>が法律で定められた一定の行為(借金・保証人・不動産売買など)を行なう場合には、家庭裁判所が選任した「保佐人」の同意を得ることが必要になります。また、「保佐人」の同意を得ないで行った行為については、「保佐人」(または<本人>が後から取り消すことができます。

例えば、「保佐制度」を利用すれば、<本人>が「保佐人」の同意を得ないで保証人になってしまった保証人契約については、「保佐人」が取り消すことができます。

【補助】<本人>の判断能力が少し衰えてきた場合
精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により、判断能力が不十分なところがある人を保護・支援するための制度です。大抵のことは自分で判断できるけれども、特定の重要な行為に関しては、誰かに援助してもらわないとできないという場合です。なお、補助は、<本人>に判断能力が残っている場合であるため、この制度を利用するためには、<本人>自らが申し立てるか、<本人>が同意している必要があります。

「補助制度」を利用すると、特定の法律行為については、家庭裁判所が選任した「補助人」に、同意権・取消権・代理権を与えることができるようになります。なお、自己決定の尊重の観点から、同意権・代理権を「補助人」に与えるには、当事者が同意権・代理権による保護が必要な行為の範囲を特定し、申立てをしなければなりません。

例えば、「補助制度」を利用すれば、「補助人」に不動産売買についての「同意権」を与えている場合、<本人>が「補助人」の同意を得ないで売買してしまった契約については、「補助人」が取り消すことができます。

このように、「法定後見制度」には、全てを<本人>以外の誰かに任せてしまう制度(「後見」)しかないわけではなく、<本人>の判断能力に合わせて、「保佐」や「補助」など、必要なものを利用できるようになっています(最終的にどの類型の利用になるかは裁判所が判断します)。そして、<本人>の判断能力の変化に合わせ、他の類型への移行(「保佐」から「後見」へなど)も、申立てをすることで行えるようになっています。

●「法定後見制度」の申立てはどうやるの?

家庭裁判所に「法定後見制度」の申立てを行なうことができるのは、原則として「本人、配偶者、四親等以内(親・祖父母・子・孫・ひ孫、兄弟姉妹・甥・姪、おじ・おば・いとこ、配偶者の親・子・兄弟姉妹)の親族」となります。

事実婚・非婚(同性パートナーを含む)の場合には、パートナーが重度の認知症になったときにも申立てをすることができませんので注意が必要です。

「法定後見制度」の申立てに必要な費用は、申立手数料が800円~、登記手数料が2,600円、連絡用の郵便切手となっています。また、後見と保佐では、本人の判断能力の確認のために医師による鑑定が必要となる場合があり、この鑑定料(10万円程度)が掛かります。

「法定後見制度」の申立てから開始まで(申立て~審理~審判・専任~確定)に掛かる時間は、多くの場合3~4か月以内となっています。

●誰が「後見人」「保佐人」「補助人」になれるの?

「成年後見人」「保佐人」「補助人」には原則として誰でもなることができます(未成年者や破産者などを除く)が、<本人>の配偶者、子、親、きょうだいなどの親族のほか、弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士などの専門家がなる場合もあります。社会福祉協議会・NPO法人などの法人が「後見人」「保佐人」「補助人」になる場合もあります。

実際に誰が「後見人」「保佐人」「補助人」になるかは、<本人>にどのような保護が必要かなどを考慮して、家庭裁判所が決定します。

「後見人」の主な職務は、<本人>の心身の状態や生活状況に配慮しながら、<本人>の財産を適正に管理し必要な代理行為を行うことです。

「保佐人」の主な職務は、<本人>の意思を尊重し、<本人>の心身の状態や生活状況に配慮しながら、<本人>が重要な財産行為を行う際に適切に同意を与えたり、<本人>が保佐人の同意を得ないで重要な法律行為をした場合にこれを取り消したりすることです。

「補助人」の主な職務は、同意権がある場合はその認められた範囲の行為について、<本人>がその行為を行う際に適切に同意を与えたり、<本人>が補助人の同意を得ないでその行為をした場合にこれを取り消したりすることです。

「後見人」「保佐人」「補助人」いずれも、<本人>の介護をするといった事実行為は職務に含まれていません。

「後見人」「保佐人」「補助人」は、後見・保佐・補助が終了するまで、行った職務の内容を定期的にまたは随時、家庭裁判所に報告しなければなりません。家庭裁判所に対する報告は、原則として、<本人>の判断能力が回復して後見・保佐・補助が取り消されるか、<本人>が死亡するまで続きます。

●マイノリティの老後は「任意後見制度」で

「法定後見制度」の概要をざっとご説明いたしました。前述の通り、このコラムの対象者である事実婚・非婚(同性パートナーを含む)・おひとりさまの方々においては、この制度は、ご自身の親やパートナーの親の老後の対策として、少しでもご参考になればと思います。

一方、親の問題ではなく、事実婚(同性パートナーを含む)・非婚で自分のパートナーが重度の認知症になった場合は、「法定後見制度」を利用したくても、法律婚ではないパートナーは家庭裁判所に申立てる権限がないため、難しいことも多いと考えられます。

マイノリティであれば、今回ご紹介した「法定後見制度」ではなく、成年後見制度のもうひとつの大きな制度である「任意後見制度」を利用し、判断能力が衰える前に、パートナーや信頼できる第三者と十分に話し合って契約を交わし、自分の判断能力が衰えた後の生活を託しておくことが重要になります。

次回は、この「任意後見制度」の概要をご紹介する予定です。

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【文】
 金田行政書士事務所
 行政書士 金田 忍(かねだ しのぶ)
 http://www.gyosyo.info/
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カテゴリー:大切なモノを守るには

タグ:くらし・生活 / 相続 / 老後 / 認知症 / 法定後見制度 / 任意後見制度