上野研究室

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ヘイトスピーチ ちづこのブログNo.53

2013.09.07 Sat

坂本龍一×鈴木邦男対談『週刊金曜日』8/30号がおもしろい。立場がまったく違うはずなのに、リベラル同士でかみあう対談になっている。
女子中学生のヘイトスピーチ「鶴橋大虐殺」が紹介されていて、思わずyoutubeを見てしまった。アクセス数およそ30万。まさかの発言に絶句。ここまでひどいとは。「日本から出て行ってください」とは、歴史に対するあまりの無知。子どもを使って矢面に立たせ、背後から「そうだ!」と気勢をあげる野太い声の卑劣さ。この映像、残れば将来この少女のトラウマにもなるだろう。記録が残って過去を消せないのがネット社会のこわさでもある。

自民党一党独裁よりまだ自社対決時代の方がよかったという鈴木邦男さんの発言を受けて、坂本さんは「だから戦後史のなかで社会党をつぶした村山(富市)さんの責任は大きいと思うんですよ。」と。
同感だ。
村山さんにお会いする機会があったときに、95年の党名改称と党の綱領改訂(安保条約と自衛隊の容認)の責任を指摘したが、何を言われているかわからない、というふうにぽかん、とされた。ご本人はむしろ在任中の「村山談話」や戦後50周年の国会決議、被爆者援護法や水俣問題の調停、国民基金の設立など、政権担当者としての功績に自負を持っておられたのだろう。だが、歴史的に見れば、国会第2党(しかも反対政党だ!)の党首を政権トップにつけて連立を組むというウルトラCのネワザにもちこんだ自民党の老獪さに、あのとき、社会党は骨抜きにされた、というべきだろう。かつて第2党であった社会党の退潮ぶりはそれ以来、眼を覆う惨状で、食い止めるべくもなかった。あのとき、社民党は、旧社会党の最良の部分を失った。その退潮に自分に責任があるとは、村山さんは思っていないようだ。
退潮期の泥舟の船頭を引き受けたのが、福島瑞穂さん。今や見る影もなく存在感を失った社民党の衰退は、福島さんでなくてもだれも食い止めることができなかっただろう。今までよくもちこたえたと、彼女をねぎらってあげたいぐらい。幕引きを女にやらせる、というのも定石どおりだけれど。
対立政党が第2自民党になれば存在理由はなくなる。政権与党に呑みこまれたら、対立軸は消える。民主党が同じ轍を踏まないとは限らない。

坂本龍一さんにもうひとつ気になる発言があった。
「僕が危険だなと思ってるのは、去年の12月の総選挙で自民党が圧勝して、今それに続くこの時代があるわけです。3.11から2年ぐらいは「脱原発」が市民運動も含め非常に盛り上がって、「この国、変えられるんじゃないか」みたいな高揚感がありました。だけど、あの総選挙でバンと断ち切られて「やっぱりダメだ」とみんなが落胆して精神世界に逃避するということが起きるんじゃないかと思って注意深く見てるんです」
リアル世界への失望のあとには、スピリチュアル世界への逃避とそこからの巻き返しがありうる、と。まるで「第二のオウム」が起きる、と予言しているかのようなおそろしさだ。
東電放射能汚染水漏れのリスクはレベル3、と。またか、というリアル世界への失望と、とめどないニヒリズムがこわい。

カテゴリー:ブログ

タグ:上野千鶴子 / ナショナリズム

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