2011.09.15 Thu
【朝日カルチャーセンター★受講生レポートNO.9】「日本のフェミニズム」
★日本のフェミニズム:第5回/『母性』★2011/9/3 江原由美子先生
≪シリーズ日本のフェミニズム~母性≫
「みなさん、<母性>ってキライでしょ?」と講義が始まりました。
そうかな?
美徳としてウットリ顔に語られる<母性>はキライだけど、フェミニズムの講座で渋面で語られる<母性>は別にキライでもないので、やや違和感。母ひとりにのしかかる子育ての「負担」。それによって生じる性役割規範、男女の不平等、そして女性同志の分断…。
たいへんだよねー。でも、たしかに聞いてるうち、私は望んだわけでもないけど母にならずに死んでく女なので、「おまえは女のほんとうの苦しみを知らない気楽なやつだ」と説教されてる気分にもなって、やっぱり<母性>ってキライかも。
ところが、そうしたオーソドックスな「母性」についてはイントロ十五分だけ。あとの七十分は、生殖技術の進歩と市場の発達にもみくちゃに変容しつつある現在形「母性」(産む行為・育てる行為)の講義。「母性」っていうより『ガタカ』(97年のアメリカ映画。遺伝子操作SF)って感じでした。
いまや日本の子の1%が人工授精だそう。また、法的に規制の強い日本からは見えにくいけど、先進諸国ではグローバリゼーションによる出産・育児のアウトソージングが進行してて、途上国に代理母を頼んだり移民にベビーシッターさせたり。
ひょっとして、私が「母性」という語にイメージしてたのって、日本独特に囲い込まれた“ガラパゴス母性”かも?!
江原先生曰く、「日本ってね、私はダメな母、私がダメな女、ってしむけるのが、ほんとに上手!」。
日本では「母性は自然である、作為のいらない営みである」という観念が強く、だもんだから、不妊治療は「不自然」だし、それどころか妊娠一般について社会が無知無策に放置。労働環境の不備はもちろん、女性本人も「自然に孕んで産まれてくるのよ」とイメージしてるため、いざ妊娠すると(できないと)不安を深め、些細な「不自然」でも他人(夫など家族・同僚・同輩)に相談しにくく孤立してしまう。
不妊治療とか障碍児をめぐる葛藤、望まない妊娠や中絶といった、いかにもタイヘンな状況でなくとも、「母性」界隈の女はみんな、「おまえの力でなんとかしろ」「できないならおまえが悪い」って状況に陥り、どこかの地点でどんづまりを経験するのだそう。
でも、それって私と同じじゃん。お母さんになってないのに(なってないから)「私が不自然です。私が悪いです」って懺悔な気分だもん。私ってすごい母性的な状況にいたのね。と、「女の分断」が解消されたのでした。
杵渕里果(受講生)
カテゴリー:拡がるブックトーク2011
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