
「ひとまずがんの治療を終えたあなたへ―その後の気持ちに対処する方法」
フランシス・グッドハート、ルーシー・アトキンス
監修 中村哲也 翻訳 釜野さおり、千年よしみ、 西村周三
国書刊行会刊 (2015年7月)
英国で「ベスト・ヘルス・ブック賞」を受賞したこの本が翻訳されました。
近頃では、多くのがんは不治の病ではありません。けれどもがんの患者は減ってはいないようです。がんの治療を終えたあと、不安を抱えたり、疲労を感じたりや、精神的に傷つきやすくなったりします。ときには鬱を発症することもあります。自身の気持ちの対処がうまくいかなかったり、また周囲の人との気持ちのズレからコミュニケーションが、うまく取れなくなったりすることも多いようです。
そんな方たちのこころに寄り添って、様々な実例を挙げながら、その一つ一つの場合に、よりよく対処していくすべを解説している本です。
20年の経験を持つ臨床心理士の著者フランシスは、自分が担当した多くのケースを例に、それぞれの適切な対処の方法を懇切丁寧に説明しています。
第1章 不安、第2章 うつ気分の落ち込み、第3章 怒り、第4章 自尊心と自分の体のイメージ、第5章 周りの人との関係、パートナーシップとの関係とセックス、第6章 疲労、 第7章 睡眠、第8章 リラックス
以上の項目ごとに、マイナスの感情がどうしてどのように起こってくるのか、その感情のコントロールの仕方はどうすればいいのか、対処の仕方や解決するための秘訣は?など、実際の事例を挙げて事細かに説明しているので、この本を読まれた方には、すぐにお役にたつと思います。
がんの治療を終えた方ばかりでなく他の病気でも、自分がなぜこんな目に合うのかという思いや、病後の不安や落ち込みや、精神の疲れなどすべて当てはまると思います。
この本で述べられていることは、日頃の出来事から起こる不安や、怒り、周りとの関係などに対しても、冷静に自己を見つめ、いい対処法を選ぶことを教えてくれます。内へ向かう感情を前向き志向に変化させてくれる秘訣がいっぱいです。
この本を読んでいて気づいたことがあります。日常に起こるトラブルのことを思い浮かべました。ちょっとした感情の行き違い、思い込み、良かれと思って言ったり、行動したことが相手を傷つけてしまうこともよくあることなのです。
この本では、自分自身が陥る「思考の罠」に気づくこと、そして対処の方法や秘訣、思考を変える方法まで書かれています。ここではいろんな方法が提案されていますから、自分に合った解決策を選んで試してみてはいかがでしょう。
私は、この本で述べられている対処の仕方や秘訣は、病後に限らず、どんな場合にも活用できるのではないかと思いました。多くの方がこんな解決方法を身に着けるなら、穏やかな、いい人間関係が保ち続けられてることでしょう。
■ 中西豊子 ■
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