5月!
と、言えば、「ゴールデンウィーク」に、「母の日」と、楽しみなイベント続きですが、
 我が家の5月は、田植え、田植え、ひたすら田植え。。。
と、言う訳で、ゴールデンウィークも、そして「母の日」も、何も特別なことはせずに、穏やかに、あっという間に、過ぎ去ってしまいました。

農業をはじめてから、ゴールデンウィークや春休みは、田んぼ作りの大事な時なので、家族で旅行に行ったり、故郷へ帰省したりすることはできません。
それでも、子供たちは毎日友達と笑い転げながら走り回って遊び、それなりに充実した休日を過ごしてくれたようです。
私も、できるだけ朝や夕方のちょっとした時間に一緒にお散歩をして、田んぼや山の新緑が日に日に色濃くなっていく様子を眺めたり、野草を摘んで晩のおかずにしたりと、子供たちと過ごすひと時をのんびり、ゆったりと楽しみました。

8日の「母の日」には、子供たちからカワイイお手紙と野草の花束をもらいました。
「お母さんの好きな草があったから入れといたよ。」と渡された花束には、「ワラビ」が上手にアレンジメントされていました。
お母さんの好きな花=食べれる草花、と覚えてくれたようです(笑)。

そんな、子供たちの様子を見ていると、自分の幼少期を思い出します。

私の実家も農家でしたので、子供のころ、ゴールデンウィークにはあまりお出掛けなどの思い出はなく、姉妹と一緒にヨモギを摘んだり、ビニールハウスの骨組みによじ登って「うんてい」のようにして遊んだり、農作業のお手伝いと称しては遊んでばかりいました。 田んぼや畑で遊ぶのは楽しかったし、家で採れる野菜や果物、お米は本当においしくて、大好きでした。

でも、でも、でも、・・・・。

父はいつも、泥と汗にまみれていて、汚れた服装に長靴で軽トラ。
母は、そんな父にいつも、いつも、叱られながら一緒に農作業をしていて、朝は夜明け前に起きて朝ごはんを用意して畑に出て、夕方は日が暮れるまで、外仕事。
子供の頃は、実家が「農家」なのが恥ずかしい気がして、とても嫌でした。
それと同時に、「農家の嫁」である母があまり幸せそうに感じられず、可哀想だと思っていました。
本当は嫌なのに、母は外で仕事をしてないから、父と別れることもこの家を出ていくことも出来なくて、嫌々我慢しながら農業をやっているのだと、 いつからか、勝手に思い込んでいました。

そんな、母の姿を見て育った私は、小学校の高学年の頃には、
「自分は手に職を付けて、男の人に頼らなくても生きていける女になろう。
絶対に『農家のヨメ』にだけはならないぞ!!」と、心に誓っていました。

あれから、長い長い月日が経ち、
一時期は、念願叶い(?)、安定した職に就き、自立して生きていける経済力を身につけ、シングルマザーとして頑張っていた時もありました。

それから、いろいろな変化があり、運命の流れに載って、
自分自身の本当に望む生き方、〝内なる声″に導かれ、進んできた結果、
今は、こうして、立派な 『農家のヨメ』になりました。

最近は、実家の母との話題は、「○○はもう植えた?」とか、「△△の成長が良くないんだけど、病気かな?」など、もっぱら農業の話しです。

そして、畑や田んぼで、無心で手を動かしている時などに、ふっと、母の姿が浮かんできて、色々な情景が思い出されることがあります。

あれは、私が、二十歳前後の夏のことでした。
たまたま、私が畑の前の道にいたら、草取りで汗だくになった母がやってきて、「あ~、ノド乾いた!」と言いながら、道のすぐ脇の畑に入り、真っ赤に熟したミニトマトをぱぱっと数個もいで、ポイッと口に放り込んだのです。
そして、ふっと私の方を見て、「いる?」とトマトを見せてくれました。

その時の、母の清々しい顔。
子どものような、無邪気な表情。
その瞬間、ずっと、幼い頃から思い込んでいた、
「母は本当は農業なんかやりたくいんだ。母は幸せじゃないんだ。」という思い込みが、突然、シャボン玉のようにパチンと割れて消えてしまいました。

そして、そのことに気付いて、
私は、涙が出るくらいに、嬉しかったのだけれど、
どうして、そんなに、嬉しかったのか分かりませんでした。

親が「わが子に幸せになって欲しい」、と思う気持ちは、当然のことと、多くの人が認識していると思います。
しかし、実は、子も、親の幸せを願っているのです。
「お母さん、お父さんに幸せでいて欲しい」と思ってること。
そんな気持ちが、小さな、小さな、幼児、あるいは赤ちゃんの頃から、
ずっと、ちゃんと、自分の内にあることを、ちゃんと認識できている人は多くないのかもしれません。

今、うちの子供たちに、毎日、泥と汗にまみれて田畑で働く私の姿は、どう映っているのでしょうか?

 楽しく、幸せに、「農家のヨメ」として働く母の姿を、たくさん見ていて欲しいな。

   そんなことを、考えた、今年の「母の日」でした。


shima-nobu-hikari★著
http://shimahikari.jp/