
左 清水さん、右 下元さん
高知県中土佐郡中土佐町大野見は海抜300mの四万十川の上流にある地域。この地区で稲作をする清水美佳さん、下元和恵さんの女性を中心に村落の男性5名、合計7名からなる「おおのみエコロジーファーマーズ」は20haのお米栽培をしている。
彼女たちは、地元の高知県立大学健康栄養学部と連携して、お米の食味調査、他との米との違いとテイスティングをし、大野見のお米のおいしさの特徴を明確化した。栽培の様子、栽培歴、水辺の生き物や、花、虫、など周辺の生物を写真に撮り、清水さんがホームページにアップした。
http://www.eco-mai.com/newpage1ekomai2.html
こうして「美味しい」「環境がいい」を具体的に伝えられるようにしたのだ。
大学生との環境調査や、大学生との料理づくりなどを広げることで共感からファンを増やしていくということに繋がった。大学生たちの環境調査は、高校、中学、小学生までの学びの場となった。環境調査で水質がいいと分かったことで、水を販売する会社がお米を売りたいと申し出があった。木材を扱う大阪の会社が米を社員食堂で使ってくれることとなった。

テキストにまとめられた大野見の環境調査
米の価格はJAでも上位クラス。一般の販売価格も農協引き渡し価格の2倍近い値段で販売できるようになった。
「学生たちが来て川の水質環境調査や、一緒に料理を創る食堂、稲刈りなど、すっかり定着したんです。今では、42名がやってくる。そのうち40名が女子の大学生。これまで、集まりというとお年寄りばかりだったから、若い学生が来るから、とても賑わっている」と、嬉しそうに語る清水美佳さん。
彼女と下元和恵さんを中心とする農家7名の「おおのみエコロジーファーマーズ - 四万十の清粒」と高知県立大学健康栄養学部との連携は、今年で4年目。
それも将来・栄養士を目指す学生たち。そのメンバーが、お米づくりの環境、炊き方、食べ方、ほかのお米との違いを調査、レシピ作りなどをすることを一緒に取り組んでいる。その活動は、大学の活動としても注目され、大きくパンフレットでも紹介されるようになった。
https://www.u-kochi.ac.jp/site/aeru/rissisyatyuu-index.html
学生が環境・食の調査を農家女性が暮らしを伝える

「学生は将来栄養士になる。だから栄養バランスとか米の特徴とか調べてくれる。だけど、地元の野菜や果物の時期を知っているわけではない。だから、地元の旬を教えたりします。
それと、庭の柚子をとって料理に使うというとき、では、一般のスーパーではいくらで売られているかを調べてもらう。そして商品の価格を知ってもらうということもしています」
大学での学びと、地域の作物を融合させる動きになっている。栄養学と環境と季節と旬と料理展開まで現場と結ぶ授業となった。
清水さんは、ホームページで、学生たちの協働事業をもとに、お米の栽培法、四季の花、昆虫、田んぼの生き物など詳細を公開。これによって広く伝わり県外からも注文が来るようになった。「ふるさと納税」でも取り上げられている。
清水さんは1.6haでお米栽培をしている。2016年からは加工場をつくりお米を使った「どぶろく」の製造販売も始めた。町が「どぶろく」特区をとったことから販売が可能となったためだ。妹さんのラーメン店の厨房備品があったことからそれを使い家の一部を改装し「どぶろく」を作った。約1200リットルのどぶろくができ評判も上々だ。

人気商品となった「どぶろく」

東京・高知県アンテナショップでの清水さん
蝶や鳥、花々を写真で紹介すれば環境の良さがわかる
実は、清水さんは、かつて警視庁に勤めたあと、保育士として17年間働いた。ご主人は警視庁勤務だったが、癌になり、そのあと亡くなった。清水さんは、今はひとり暮らし。子供はいない。親は近所で姉と暮らしている。仲間の下元さんは役場勤めのあと農業を始めた。2haでお米を栽培する。彼女は、ご主人をくも膜下出血で亡くした。子供4人は大きくなり独立した。
女性二人が中心に地区の米作りを大きく変えた。
彼女たちと知り合ったのは、高知県農業人材育成創造事業総合アドバイザーとして呼ばれたのがきっかけ。2010年のことだ。
案内してくださった県職員の方が「ここはお米も美味しい、環境もいい。こんなところに子供たちがくると喜ぶのに」という話だった。農家さんに話を訊くと、蛍もメダカもトンボもいるという。高知県のレッドデータブックをみると、絶滅危惧になっているものが多数いることがわかった。

大野見地区の景色
そこで「蝶や鳥、花など四季の生き物を写真に撮って紹介をするだけで環境がいいとわかる。お米も、さまざまな品種がある。食べ比べして特徴を把握したほうがいい。農家だけでは大変だから、大学と連携をするといい」とアドバイスをした。
すると、中土佐町役場農林課・南部満さんが早速、清水さんたちを連れて大学に調査を申し込んだ。しかも1年生が4年になって、下級生に伝えられるようになるまで、少なくとも4年間はつきあってほしいと頼んだのだ。
提言をしたことを、たちまち実行に移した。いまでは大学はもちろん、女性の活動で注目される存在となった。
清水さんに「すごいねえ。普通、アドバイスをしても、形にできるところはなかなかない。それを実現したのだから」と言うと、「やるしかなかったの。どん底だったから」と。彼女によると、今では、ホームページからの印刷物でお米を紹介をすると、とても売りやすくなったと言う。

山間地の米作りの場に高知県立大学健康栄養学部と連携して学びの場とし、たくさんの学生が訪れる、この地域の情景は素晴らしい。空気の清涼感があふれている。四万十川の上流にあり水が澄み切っている。田園の向こうに山がつらなり、四季によってことなる彩りを浮かびあがらせる。地域の仲間、学生、子供たち。お互いが協力をして販売を手掛けている。
グループの米は、今までの米の栽培から販売という形から生まれ変わり新しい価値を創造した。お米の価格があがり、販売が伸び、若い学生がやってくる農村を生みだしたのである。
◆おおのみエコロジーファーマーズ 「四万十の清粒」の注文はこちらから:
http://www.eco-mai.com/index5.html
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