先月末(2017年7月)から9月頃にかけ、中南米では独立記念日を祝うために様々なイベントが各国で行われています。同様に、日本のあちらこちらでも大使館や領事館を中心としたお祭り(Fiesta)が開催されており、ベネズエラ、アルゼンチン、コロンビア、ペルー、ブラジルと日々目白押しです。島国で暮らす我々日本人にとって、独立という言葉を聞いても、簡単に理解することは難しいかもしれません。独立とは、国家が他国からの制圧と弾圧から自由を勝ち取り、群集(民衆)が生存や平等の権利を得ることを意味します。33カ国がひしめき合う中南米では、それぞれに様々な歴史(独立までの道のり)がありました。しかし、各国に共通することは、危険な状況下にも関わらず、女性が抗議の先頭に立って主張を展開し、その姿勢が、治安向上や社会安定に大きく貢献したということです。例えばアルゼンチンやチリを例にとっても、女性が社会運動を繰り広げて弾圧や粛清の真実を明らかにすることを政治に迫り、和解の道を切り開いてきました。中南米の歴史を振り返ると、女性のリーダーシップが社会を作り上げてきたとも言えるようです。

先月(2017年7月)16日に行われた「フィエスタ・ペルアナ神戸 2017(Fiesta Peruana Kobe 2017)」の会場にて。南米各国の独立記念日は、日本貿易振興機構(JETRO)HP(https://www.jetro.go.jp/world/cs_america/)にある各国名をワンクリック後に基本情報内にある祝祭日で確認できます。
6月(2017年)末、京都外国語大学・短期大学(京都市左京区)で中南米7カ国(登壇順:ブラジル、アルゼンチン、ペルー、キューバ、コスタリカ、グアテマラ、メキシコ)の大使及び総領事らを招いた市民講座が開催されました。7名の内、女性大使はコスタリカとグアテマラでした。各国代表がわずか25分という短い時間の中で、約600人の来場者に対し、国内事情や日本との関係について語りました。ペルーのフォルサイト駐日大使は、1899年にスタートした日本人移民の歴史や在日ペルー人の拡大に言及し、今後の日本とペルーの関係性への期待を示唆しました。この歴史をなくしては中南米と日本との強固な関係性は築けなかったと、各国大使が一同に語るほどです。そしてこの歴史があったからこそ、中南米と日本の連携に向けた取り組みが行えるのです。そんな中、コスタリカのエスキベル駐日大使が述べたコメントが力強く、非常に印象的でした。「コスタリカは中南米でも、とてもとても小さな国です。しかし、こんなにも小さい国であっても、国民は資源を再利用しながら豊かな生活をしています。小さな国であっても、世界へのインパクトは計り知れません。何よりも、世界幸福度ランキング(次回掲載)において12位(注:過去3回1位を獲得)であるという事実がコスタリカを物語っています。私(自分及び自国)一人では、全てを成し遂げることは不可能です。ましてや私は女性です。中南米各国の大使館を見ても女性が大使を務めている国は少なく、その様な状況下で、私は私の成すべきことを果たすまでなのです(著者による抜粋訳)」。
コスタリカのエスキベル駐日大使が登壇し、男女平等に関して述べた時の様子から。他国大使とは異なった切り口からの説明を聞き、会場内では、うなずきながら耳を傾ける人もいた。
コスタリカは51,100平方キロメートル(日本の九州と四国を合わせた面積)の土地の42%が農牧地、38%が熱帯雨林という自然に囲まれた豊かな国です。世界全体のわずか0.03%の面積に、地球上の全動植物の5%が生息するという環境が特徴で、中南米で最も安定した民主主義国でもあり、高い教育水準と比較的整った福祉制度でも知られています。常備軍の不保持国家でもあり、また近年は、火山などの地熱を利用した再生可能エネルギーへの取り組みで世界各国から注目を集めています。貧困・弾圧・戦乱に悩まされてきた中南米の中で、コスタリカはモデルケースとして脚光を浴びています。紹介の中で彼女は、コスタリカの男女共同参画に関する取り組みにも触れ、「あなたが大使ですか?」、「えっ、女性が大使ですって!」、「女性が大使を務めるのは難しいのではないですか?」という言葉を幾度となく浴びせられた経験があると話しました。しかし、仕事で問題となる事柄にはジェンダーによる考え方の差異は無く、男女が仲間として歩み問題へ取り組んでいくことの重要性を訴える姿が印象的でした。そして、このような女性大使が日本と自国の関係性のために奮闘していることを知り、胸が熱くなるのを感じました。
コスタリカ大使が講座で使用した自国紹介の動画は youtube で確認することができます。
質疑応答の際、私は「ジェンダーギャップ指数などを見ると、中南米の男女共同参画に関する取り組みや女性活躍は進んでいるように見受けられます。日本との違いは何だと考えますか? もし、何かしら日本に対するアドバイスがあれば教えていただきたい」という問いを投げかけました。以下、4大使(返答順:コスタリカ、キューバ、アルゼンチン、グアテマラ)が述べたもの(著者による訳文)を記載します。

みなさんは、中南米33カ国が大陸の何処に位置し、国旗がどの様な色を成しているのかをご存知ですか。トスパ・東京製旗株式会社HPにある「国旗の由来・歴史の資料室(http://tospa-flags.com/america-all.html)」で確認することができます。
ラウラ・マリア・エスキベル・モラ(Sra. Laura María Esquivel Mora) コスタリカ駐日大使
「即答は難しいのですが、コスタリカは、移民(移住)が承認されてから大きく変わったように思えます。その数年の後に、配偶者からの暴力(ドメスティック・バイオレンス)の問題が増加し始めるのですが、様々な調査をする中で、(移民やドメスティック・バイオレンスによる問題などが)自由主義の生み出した恐怖の複合体であるとか(様々な状況や理由が絡み)両親に感謝をできない子どもの増加が影響を及ぼしていると囁かれています。勿論、歴史的な流れも大きく関係しており、例えば、母親を保護するための変革などがその一例に当てはまります。我々が取り組んでいる政治的問題はペーパー上の(契約)関係が絡み、(統計として)表れる数値などが(政治に)大きな影響を与えます。(契約や統計が行われた)後には、(公的に文書を交わすなどの上で得た)事実に対して団結して推進・推奨することが必要であり、これは、公的に知り得たものでなければ変革に関与することができない(縛り)ことでもあります。これら一連の動きは、各人が自然な流れの中で(男女共同参画や女性活躍などの)テーマを噛み砕いて理解すべき必要性もあります。こう考えると、問題は小さな社会問題(単なる人口移動における一問題)ではないということが理解できるのではないでしょうか。また、注意すべきことは、この問題は女性に何かしら(権利など)を与えるという解釈をしてはならないことです。ゆっくりと時間をかけながら(寄り添ったり、離れたりしつつ)取り組んでいかねばならないもので、単なる(政治家による)責務ではないと感じています。そう。ゆっくりと時を重ねなければならないのです。各世代(各層の人々)が、(時間が必要であることを理解した上で)そんな時の流れを後世に引き継いでいかねばなりません。(統計などに表れる数字だけで判断はできず)一時的・一過性の問題でもないですし、ましてや(すぐに成果が表れる事柄と異なり)奇抜な問題でもありません。我々の将来のために、(例えば歴史的に浅い国であっても)各国が高度なリベラルと信頼できる中南米諸国を築くために進み、取り組んでいかねばならない課題ですで。また、(統計上に現れる女性活躍の数字などを見ても)中南米諸国が取り組んできた行動(その歴史)が、(日本のように)同問題が深刻化する国のモデルとして参考となることはできるかもしれません(著者による訳文)」

コスタリカの情報に関しては外務省HP(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/costarica/index.html)で確認することができます。
カルロス・ミゲル・ペレイラ{Sr. Carlos Miguel Pereira) キューバ駐日大使
「コスタリカ駐日大使が簡潔に大枠を話してくれたと思います。この質問は非常に重要なことです。(しかし残念なことに)今日の中南米における女性に関する取り組みは、最優先事項として捉えられてはいません。毎年公表される様々な統計を見ても、(すぐに変革するとは言えないと語ったコスタリカ大使のように)問題が解決したかのように数値上で見ることができても、内面的には何とも言えない部分があります。それは各国における女性に関する取り組みにも当てはまることです。問題を社会的側面や政治的側面から調査(列挙)することは良いことです。しかし、女性に関する問題は耐久的(長期的)課題であり、場所によっては、国家的組織をも巻き込むデリケートな側面もあります。しかしながら、中南米各国において、女性活躍に関するテーマが重要なことは(統計が物語っているので)疑いのない事実だと言えるでしょう。また、その取り組みのために、中南米各国がそれぞれ独自に、または共同体として、将来において歩み続けるということは揺ぎない事実です。より良い社会実現のために女性が政治参加を行ったように、中南米諸国の変革には、(様々な世代の)女性が事実上関わってきています。ヨーロッパの影響も関与しているのでしょう。しかし近年、国際的統計なども通して全体的に言えることは、中南米諸国の変革には、社会的観点から考察した取り組み(視点)などが影響を与えていると考えます(著者による訳文)」

キューバの情報に関しては外務省HP(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/cuba/index.html)で確認することができます。
本編が長文となるため、以降は次回掲載とせていただきます。この後に続くアルゼンチン公使やグアテマラ駐日大使の発言も注目を浴び、返答だけで約30分ほどの時間が費やされました。上記2カ国のコメントだけでも、男女共同参画や女性活躍に携わる方々の心に、何かしら熱いものが込み上げてくるのではないでしょうか。中南米で長年生活をしてきた私にとっては、この「何か」があるからこそ、日本の裏側に位置する国々を思い続ける原動力に繋がっています。(つづく)
6月(2017年)11日に和歌山県で開催された「和歌山eかんぱにい総会記念講演」で、アルゼンチンに関して話す著者。ご来場いただきました方々、主催者である「和歌山eかんぱにい」さん、本当にありがとうございました。
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