前回(4-1)から、6月末(2017年)に京都外国語大学・短期大学(京都市左京区)で開催されたラテンアメリカ7カ国(登壇順:ブラジル、アルゼンチン、ペルー、キューバ、コスタリカ、グアテマラ、メキシコ)の大使及び総領事らによる市民講座の内容を記載しています。今回は、その講座での質疑応答の際に、私が「統計学的に見ると、中南米の男女共同参画に関する取り組みや女性活躍は進んでいると言われています。もし、何かしら日本へアドバイスがあれば教えていただきたい」という質問への返答(アルゼンチン並びにグアテマラ)を引き続きお伝えします。

同じ中南米大陸に位置しつつも、各国の抱える問題や見解は様々です。講座の質疑応答では、各代表が他国の発言を重んじながら意見を述べる姿が非常に印象的でした。

 

 フェリーペ・A・ガルデラ(Sr. Felipe A. GARDELLA) アルゼンチン公使(臨時代理大使)
 「コスタリカ並びにキューバ駐日大使から様々な話が出されました。(中南米諸国に限らず)平等に関することは世界各国に共通する重要な問題です。(着眼点を変えて話をすると)過去のアルゼンチンは(国際的な統計を見ると)40%以上が既婚者でした。しかし、この10年間に(その)数値は30%にまでに下がり、これは女性の価値観の変化の表れと捉えられてきました。ところが、(年代別に見ると)若い世代の既婚率は40%なのです。私的なことも絡んでくるため、統計だけを鵜呑みにすることはできません。しかし我が国では、ペロン氏(第2回エッセイ参照)の影響が(全てにおいて)少なからず影響を及ぼしているように思われます。妻という立場に置かれている3分の1もの女性達が、エバ(エビータ)・ペロン(更には彼女の娘)の存在に取り憑かれているかのような印象すら受けます。また、伝説のように語られている彼女ですが、(その姿が)ペロン氏の妻としての立場(印象)では語られておらず、初代女性大統領としての姿だけが一人歩きをしているかのようにも見受けます。言い方を変えれば、ちょうど社会主義体制下にあったアルゼンチンの過渡期に、彼女が(その情勢に)合致するかのように出現したということも考えうるのです。それは今の(我が国の)ガブリエラ・ミケティ副大統領にも当てはまるのかもしれません。現在の(首都)ブエノスアイレスは、女性の50%以上が高校(大学、教育制度は日本と全く同じではありません)に通うのが当たり前です。(女性の社会進出が進んでいるように見えるかもしれませんが)そんな彼女達に大切なものは何かと尋ねると、子どもや両親といった答えが返ってきます。これがアルゼンチンの現状なのです。また、この事実は世界中どこの国でも同じだと(私は)思います。結婚後も自分の両親や子どものことを一番に願う(思う)。それは何処にいても共通なのではないでしょうか(著者による訳文)」

アルゼンチンの情報に関しては外務省HP(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/argentine/index.html)で確認することができます。

 

 アンヘラ・マリア・デ・ロウデス・チャベス・ビエティ(Sra. Ángela María de Lourdes CHAVEZ BIETTI) グアテマラ駐日大使
 「一般的に考えても(実際の統計を見ても)、近年中に女性活躍に関する変革を試みることは難しいでしょう。しかしながら、様々なことから見解を述べると、移民や出稼ぎといった巨大な移動集団を例にとっても、教育(勿論、女性も男性もですが)が平等を生むのだと感じます。世界各国の政治(政策)は、多くの女性にとってまだまだ閉ざされたものです。ですが、このような取り組みを行い続けることが、人々を目覚めさせるのだと思います。その一環として私(グアテマラ共和国)が推奨するのは、子ども達(中でも先住民)に対する教育における特別プログラムの実施です。子どもの権利は親の保護下にあり、また、生きている間の経験や知見は次の世代(血縁者)へと受け継がれていきます。延(ひ)いてはそれが、健康や経済などに関する全ての改善へと繋がるのではないでしょうか。ご質問をいただいた(政治における)男女共同参画への取り組みに関しても同様で、この問題は全世代を通して受け継がれていくべき問題であり、且つ、様々な取り組みを続けていくことが貧困(単なる貧困だけでなく、政治や経済などの各分野で欠けている状況)の改善へと結びつくと考えます(著者による訳文)」

グアテマラの情報に関しては外務省HP(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/guatemala/index.html)で確認することができます。

 

 4カ国代表のコメント聞きながら、ジェンダーギャップ指数(第1回エッセイ参照)の上位を占める中南米においても、女性問題が副次的な問題として捉えられてきた事実を知ることができます。振り返ると、中南米各国は政治や経済が混沌とした時代が続いており、解決の糸口を模索して数十年の時が経過してきました。しかしそのような状況下でも、中南米の女性達は諦めることなく、継続的に改善や向上を訴え(働きかけ)て生きてきました。その結果が実を結び、現代、頭角を現しはじめているのだと考えます。我々を取り巻く環境は日々急激な変化を遂げ、多種多様な問題が複雑に入り混じっています。だからこそ、中南米のように、問題解決の優先順位では後回しにされがちな問題であったとしても、持続的(長期的)に取り組む根気が求められているように思います。人々が力強く訴え続け、後世へとバトンタッチをしながら取り組んでいくことで大きな波動(解決)につながる事実は、中南米の歴史が物語っているようにすら感じます。

中南米に関する書籍は数多く出版されています。各国に興味をお持ちになられたのなら、語学が苦手な人も指をさすだけで会話ができる『旅の指さし会話帳(http://shop.yubisashi.com/products/list.php?category_id=101)』などで手軽に中南米を感じてみてはいかがでしょうか。

 

 講演では、コスタリカのエスキベル駐日大使が世界幸福度ランキング(報告書)について触れていました。この報告書は、国際連合の持続可能開発ソリューションネットワークが155カ国を対象に、各人の幸福度(0~10段階)の値からなる各個人の回答の数値の平均値を紹介したものです。説明変数は、①人口当たりのGDP、②社会的支援(困ったときに頼れる人がいるかどうか)、③健康寿命、④人生選択の自由度(選択の段階で満足できているか)、⑤寛容さ(チャリティー等への寄付を行ったかどうか)、⑥腐敗の認識(政府の腐敗を感じるかどうか)といった6つで示されており、12位のコスタリカを筆頭に、チリ(20位)、ブラジル(22位)、アルゼンチン(24位)などの中南米諸国がランキングの上位を占めています。日本は51位にランクインしてはいるものの、専門家は「世界有数の経済大国と言われながらも幸せとは言い切れない日本人の姿が見え隠れしている」と指摘します。理由は、対象者が自己評価をするという主観的な調査方法であるが故に、国民性による幸福度の差異や人種的特長が顕著にあらわれることにあります。何らかの質問を投げかけられたときに、多くの日本人が他者と比べて幸せかどうかを答えようとするのに対し、個人主義的な欧米などでは、自分の絶対評価で答える人が多いことから幸福度が低くなる傾向が見られるためです。また、研究者によっては「日本は、他人と比較するが故にストレスに満ちている」という見解も述べられており、人生の選択における自由度の低さや不安な社会構造が原因だといわれています。事実、定職から離れた人々(結婚、出産、介護など)の再雇用や就職氷河期などの際に定職に就けなかった世代の雇用促進ですら、日本は未だ非常に厳しいのが実情です。(つづく)

「正解幸福度報告書2017」の詳細、http://worldhappiness.report/で確認することができます。

 

アルゼンチン出身の日系彫刻家フリオ・ゴヤ氏(Sr. Julio E. Goya)と著者(国内にて)。現在、日本では中南米出身の方々が様々な取り組みをされています。私のエッセイを通し、少しでも多くの人々に「日本の裏側の国々・中南米」への関心や興味を抱いていただけることを切に願っています。

 

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