
前回、養育費履行確保を例にして、パブリックコメントの書き方について書きました。今回は、離婚後の子の引渡しに関する民事執行法改正についてのパブリックコメントについて、この引き渡しに関する部分についてのお知らせです。
「民事執行法の改正に関する中間試案に関する意見募集」
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?
CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080159&Mode=0
パブリックコメントは、住所(市区町村まででOK)、氏名、年齢、性別、職業を記入の上(差し支えがあれば、一部の記載を省略しても構わないそうです)で、メール、ファックス、郵便で出せます。
宛先
法務省民事局参事官室
・郵送:〒100-8977
東京都千代田区霞が関一丁目1番1号
・FAX:03-3592-7039
・電子メール:minji202@i.moj.go.jp
メールが便利ですかね? パブコメには、「第1 債務者財産の開示制度の実効性の向上について」など、どれについてかの文言を入れる必要があるそうです。
また長文の意見を提出する場合には、「集約作業の正確性」のために、意見の本文だけではなく、その「要旨を」各項目の冒頭などに書いて欲しいとのことでした。
**参考までに兵庫県のパブコメ書式です。
https://web.pref.hyogo.lg.jp/ks26/documents/03_ad.pdf
兵庫県のパブコメではご意見・ご提案のほか、「困った事案」なども書いてほしいとあるので、養育費のパブコメにも「困った事案」などを書いてもいいかもしれませんね。
次のフォーマットを、コピペして(名前などはきちんと自分のものをいれて)使ってくれていいです。
***
メールアドレス: minji202@i.moj.go.jp
タイトル:「民事執行法の改正に関する中間試案に関する意見 債務者財産の開示制度の実効性の向上について」
本文:
法務省民事局参事官室御中
民事執行法の改正に関する中間試案に関する意見
第3 子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化について
住所:東京都千代田区在住
氏名:ぱぴこ
年齢:18歳
性別:女性
職業:大学生
あとは、意見を自由に書いてください。例えば、
「第3 子の引き渡しの強制執行に関する規律の明確化」に対して
直接的な強制執行の規律の明確化
賛成します。なぜなら、これまで、子の引き渡しでは子どもを「動産(モノ)」として扱ってきていますが、子どもの特性に応じ、子の福祉に配慮し、子の心身に影響の少ない執行手続を明確にするする必要があるからです。
子の所在調査を論点に入れる事について
反対です。現在の家事事件手続法289条5項によって、既に必要な調査を官公署等に対してできることになっており、これを活用すべきであって、新たな規定を設ける必要はありません。また、私人に対して子の所在の情報提供義務を課す法的根拠がありません。
子を引き渡す側の親にはDVからの避難・ストーカー被害からの安全確保等さまざまな個別の事情があり、子の所在調査により居所が明らかになると、子を引き渡す側の親の安全を脅かされる可能性があります。
など。
以下、弁護士さん有志が発表された意見を置いておきます。よければ参考にどうぞ。
第1 意見の趣旨
1、子の引渡しの執行機関は、執行官ではなく、執行裁判所とするべきである。
2、子は人格と意思を持った主体であることから、子の引渡し執行は、子を単なる引渡し給付の客体と考えるのではなく、子の人権と福祉を実現するための手続きとして設計されるべきである。それ故、可能な限り子の福祉に反しないような手続きにするため、従前、子の引渡しの最終手段として利用された人身保護法に倣った、執行裁判所による子の引渡し手続きを創設すること等を検討するべきである。
たとえば、
① 債権者から申立をうけた執行裁判所は、債権者のほか、債務者である監護親に対し子を同伴して期日に出頭するよう命じ、その期日に子の引渡しの可否を決定できるようにすること。
② この手続きには、子への説明と子の真意確認にあたって、子の心情に関し裁判所の判断を補佐するために、子の心理臨床の経験を有する専門家を配置すること。
③ 執行裁判所は、子の引き渡しを命じまたはこれを棄却するに際し、子の専門家による報告・評価を尊重しなければならないとすること。
④ 子の現在地における子の引渡し執行は、子の不出頭により①~③が実施できなかった場合にのみなし得ることとし、その場合にも、債権者を執行場所へ出頭させ、受命裁判官が子の心理臨床経験を有する専門家を伴って赴き、子への説明と子の納得を得て、債権者に子を引き渡すこと、
を検討するべきである。
3、子の引渡し債務名義について、執行可能期間を設けるべきである。
第2 意見の理由
1、子の引渡し直接強制の議論
子の引渡しの執行に直接強制を用いることは、かつては、子の人格の尊重の観点から、裁判所は否定的であって、間接強制によるべきであるとしていた(大阪高決昭和30.12.14、札幌地決平成6.7.88など)。しかし、間接強制では実効性が上がらないこと等の理由から、近年、直接強制を積極的に認めるようになっており(東京地立川支決平成21.4.28など)、その方法としては、執行官による動産の引渡しに関する民事執行法169条によっている。
しかし、子は人権・人格・意思の主体であって、単なる所有権の客体である動産に準じてその引渡し手続きを設計することには、本質的な疑問がある。子の引渡しに関する裁判は、もとより、子の意思心情を考慮して決められるべきであるが、子は独自の意思と心を持った主体であるから、裁判所が引き渡しを命じても、引き渡しの時点でそれに反する気持ちを持っている場合はあり、引き渡されることを拒否する場合もある。人格と心を持った子の引渡しは、それが子の福祉を損ねないよう、特別のしくみとして構想されるべきである。
2、見知らぬ人にさらわれる恐怖は有害
人間の子は、自分を保護し養育する特定の大人との関係(絆)を頼りに生存し、成長を遂げている。頼りにする特定の他者と安定的な関係が形成維持されることが、安全感、世界と他者への信頼、そして自己肯定感を育み、発達を支える。だから、子にとって、そのような特定の他者の保護から不意に引離される体験は、存在の基盤が崩壊するような恐怖を与え、重大なトラウマになる危険がある。執行官は、子にとっては「見知らぬ人」であり、その人に不意にどこかに連れて行かれることは「誘拐」に等しい。子が執行官を、「自分をさらいに来る人」と認識し、いつ現れるかの不安におびえるようなことがあってはならない。子の引渡しの裁判もその執行も、子の福祉のために行う司法手続きであるから、その手続きで子が心的外傷を負うような結果を引き越すことは必ず回避するべきである。そのために、子の引渡しの執行には、必ず債権者親を出頭させるだけでなく、子の専門家を立ち会わせて、子に対する説明を尽くすとともにその意向を丁寧に聴き、子に予測可能性と納得を保障する制度として設計し直すべきである。
3、執行機関と子の心理臨床経験を有する専門家の補佐
執行機関は、執行官ではなく、家庭裁判所とするべきである。
執行官には子の発達や心理についての専門的知識等は期待できず、執行の過程で子の人権や福祉に配慮する責任を課すのは任務として過大であり、結果的に子の人権と福祉の保護を危うくする。こういうデリケートで重要な判断は、裁判官が責任をもって担うべきである。
とはいえ、裁判官も、法律の専門家ではあるが、子の発達や心理について必ずしも十分な知識等を備えているとは限らず、子の心理を的確に把握し発達への影響を理解して子の人権と福祉を守る判断をするために、子の心理臨床経験を有する専門家(以下、子の専門家という)の補佐を必須とする体制を整備するべきである。子の専門家は、対象となる子が言語を発することができない低年齢の子の場合であっても非言語的な言動などから子の真意を確認できる能力を持つ者である必要があり、そのような専門家を急ぎ要請するべきである。
執行裁判所は、間接強制を巡る判断に始まり、次項以下で述べる引渡しの手続きを自ら主宰するべきである。中間とりまとめ「5.直接的な強制執行の執行機関等」の項の【甲案】のように、裁判所を執行機関としても「第三者に実施させる」のでは足りない。
4 執行の手続き~人身保護裁判類似の子の引渡し手続き~
(1)間接強制前置は賛成である。執行裁判所は間接強制から関わるべきである。
(2)人身保護裁判に類似した引渡し手続き
間接強制が奏功しない場合には、子の現在地での引渡しの前に、以下のような人身保護裁判 類似の引渡し手続の制度を設けるべきである。
すなわち、
① 債権者は、間接強制が不奏功の場合に、執行裁判所に子の引渡し手続の申立を行う。
② 執行裁判所は、期日を決めて債権者と債務者を呼び出し、債務者には子を連れて出頭するよう命じる。
③ 期日に先立って、子の専門家が子に面会し、子の引き渡しを命ずる裁判がなされ、それに従って子は債権者親のもとに行くことになったこと、及び、その手続きの進行について、子が理解できるように説明するとともに、子の気持ちを聴取・評価し、子が引き渡されることに反対の意思心情を表明した場合は、その点も含めて裁判所に報告する 。
④ 期日には、子を十分に安心させリラックスさせたうえで、改めて子の専門家が子に引渡しの意味を分かるように説明し、今日がその日であることを伝え、子の納得を得て、債権者親に子を連れ帰らせる。
子が引き渡されることに反対の意思心情を表明した場合は、裁判所は、執行不能を宣言する。子の意思の判定にあたっては、子の専門家が裁判所を補佐する。
(3)子の意思心情を尊重すること
「裁判所が子の引き渡しを命じたのだから、子の意思・心情に反しても引き渡しを断行するべきだ」との考えは、子の福祉より、裁判所の権威や法律家の達成感を上位に置く見解である。裁判所の判断は子の福祉のためになされるのであるから、執行手続きにおいても、当該子が拒否しているにも関わらずこれを強制的に実現して子を恐怖と無力感、不信に陥れるのでは、自己矛盾である。
(4)予測可能性と納得の保障
上記のような手続きは、人身保護裁判を参照した提案であるが、実務上、人身保護制度は、子の引き渡しがの間接強制では成功しなかった後の手続きとして利用されてきた。
人身保護手続きでは、期日に先立って、被拘束者の代理人(多くは国選代理人)が被拘束者の心情や状況を聴取し、裁判所に報告することになっている。
上記提案でも、期日に先立って、子の専門家が直接子に面会してその心情を聴取・評価するとともに、子に心の準備ができるようにする。子の専門家による報告書は、裁判所だけでなく各当事者にも開示され、子自身を含めた関係者全員が、引き渡しに向けた子の心情を知ることができる。そして、子の引渡しに向けた準備が可能になり、期日に債権者親が子を迎える準備をして出席することで、子は「見知らぬ人」に「さらわれる」危険な体験をしなくて済むメリットがある。
なお、上記の手続は、子の年齢の如何に関わらず、実施されるべきである。また子の面前で父母が引き渡しをめぐり争うことは避けるべきであるから、裁判所では、子ども向きの部屋で保育士・看護師など子の扱いに慣れた専門職を子につけることとする。そして、子の専門家が子とそれぞれの親とのやりとりの様子を確認したうえ、その補佐を得て、裁判官が引渡しの是非を決定する。これにより子が自分の処遇について予測可能性と納得を得られるようにする。
(5)引渡し手続きへの子の不出頭
期日に債務者(監護親)が子を連れて出頭しない場合には、上記①~④の手続きによる執行は不奏功となる。その場合に、次項の子の現在地での引渡し執行へと進む。
5、子に配慮した引き渡し執行
(1)裁判官が赴く執行
子の現在地での引渡しは、民事訴訟の所在尋問(民事訴訟法195条)に倣い、裁判官が子の現在地に赴いて行う。補助のため執行官を伴うのは妨げない。
裁判官が赴くべきであるのは、対象が子どもで、その人権や心情に反した引き渡しが行われないよう確保するためである。この場合も、子の専門家が同行し、子どもの家や保育園等で、子に対する説明や聴取を行い、子の意思の評価について意見を述べるなど裁判官の補佐をするべきである。
直接強制に関する「同時存在原則」は維持されるべきである。債務者を説得しその協力を得て、子どもの納得を得ることは何より重要だからである。
子の現在地での引渡しの場合も、子にとって「誘拐」とならないために、債権者の出頭を必要とすべきである。債権者が引き渡しを受けるのは、子の監護者となれる信頼関係が子どもとの間で存在するものと判断されたからであるから(そうでなければ引渡しの判断をしてはならない)、現在同居する親等と別れる子どもの不安を最小化するために債権者は必ず出頭するべきである。代理人の出頭では足りない。但し、子の面前での争いを避けるために、裁判官の判断で、債権者に一時的に別場所で待機させることはできるべきである。
(2)執行場所における裁判官の権限(中間試案たたき台ではp6「4」)
①「執行官」の権限は「裁判官」の権限と読み替えて賛成。説得は必要。
② 立ち入り・捜索・開扉、面会などを権限のうちに書き込むことには賛成である。
③ 債権者の立会は賛成。代理人では不可。
④(3)(4)実力行使の制限については賛成である。ただし、子が引き渡されることを拒否した場合、執行は不能として打ち切るべきである。
⑤(5)債権者への指示も賛成である。
6、子の引渡し債務名義の執行可能期間
子は常に成長している。裁判が確定した後、執行までに時間がたてば、子の引渡し裁判の妥当性は薄らぐ可能性がある。当該債務名義で執行できる期間は6か月程度とすることを検討すべきである。
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