
11.11ブックトーク 「ミニコミに学ぶ1―『銃後史ノート』」に寄せて
『銃後史ノート』は、「戦争と女性」をめぐる戦中戦後の女性史研究にとって今や「幻の古典」ともいわれる雑誌です。現在、WANのミニコミ図書館には、「『紀元二千六百年』―まつりと女」(むらき数子)をはじめ今回のブックトークで取り上げられる6編の論考がアップされています。ぜひご一読のうえ、ご参加をお願いいたします。
じつは話者のおひとりである、むらき数子さんの「少年兵志願を止められる母になりたかった」というテーマを見たとき、「これはわたしの母のことだ」と思いました。勿論わたしの母個人だけではなく戦時下の無数の母親たちのことなのですが…。
母は中学生だった息子が「少年兵」を志願するとき、「まさか子どもが実戦に出ることはないだろう」と思ったそうです。実態は自爆ボートに乗せる使い捨ての特攻要員で、出撃の前に爆撃されて16歳で「戦死」しました。戦争で子を死なせた母の慟哭と戦争の真実を「何も知らなかった」という「無知の罪」の自覚が母の生涯の重荷でした。
女性たちはその責任にどう「オトシマエ」をつけたか? それは戦後世代にどう受け継がれたか? 重くて熱い問いに、川上未映子さん、小林エリカさん、福田和香子さんというそうそうたる若手メンバーが挑む異色のつどいです。
わたしは、川上さんの作品を『乳と卵』以来久しぶりに何冊か読みました。小林さんの本は、今度初めてといっていいくらいの出会いです。『空爆の日に会いましょう』と『親愛なるキティ―たちへ』、そして最新刊の『彼女は鏡の中を覗きこむ』…。どれにも「9.11」以後の「空爆」、アンネ・フランクの生と死、そして原爆製造の秘密などがおりのように水底に沈む「コワイ」作品ですが、そこに「いのち」のありようを問う歴史が受け継がれる確かさを感じました。それは川上さんの作品群にも通底している視点だと思う。福田さんを含めて。そういう方たちの発言を聴くために「戦争を知る」世代であるわたしも参加しなければ、と思っています。
◆登壇者
第1部*加納実紀代・むらき数子・佐藤文香
第2部*川上未映子・小林エリカ・福田和香子・上野千鶴子(コーディネート)
◆日時 2017年11月11日(土)13:30~17:00
◆場所 上智大学2号館4階401番教室
◆主催 WANミニコミ図書館・上野研究室
◆共催 上智大学蘭科研
*企画の詳細はこちらから
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