
2017年7月22日(土)、新潟市において、上野千鶴子さんの講演会を開催しました。タイトルは「これから女子の生きる道〜ネオリベ改革とジェンダー〜」です。この講演会は、私が支部長をしている一般社団法人大学女性協会(JAUW)新潟支部の設立70周年記念講演会として開催しました。当会は、戦後まもなく東京で発足し、日本女性の地位の向上のために、主に女子の高等教育の推進を大きな目標として活動してきました。新潟支部は全国25支部のうちの一つです。設立70周年を迎えるに当たり、日本女性の来し方行く末を考える事を目的として講演会を企画しました。新潟県女性財団の団体活動支援の助成を受けました。
ジェンダー学のパイオニアである上野千鶴子さんのお話は、統計に基づいた興味深い視点で、ユーモアたっぷりにお話しされ、むずかしい内容もわかりやすく、満席となった200余名の参加者それぞれに強い印象と感動を残しました。朝日新聞「悩みのるつぼ」の回答者としてもご活躍の上野さんにお会いしたい、というファンの方も多く参加されました。
上野さんは、ご講演の冒頭「最近は、ケア関係の講演依頼が多く、癒し系でした。ジェンダー関連は、話しているうちに怒りが湧いてくるので脅し系になりがち。今回のテーマは、ジェンダーの直球ストライクゾーンで、喜んでお引き受けしました。」と話され、私達の期待感が高まりました。以下に、ご講演の中で私の印象に残っている点をお伝えします。
女性参政権獲得から70年、権利を獲得した日本女性だが、今の政治への責任も問われている。ネオリベ改革を推進する政治の中で、女同志の格差も広がり、勝者と敗者に分断される。その対策として、大学進学率が急速に上がり、1990年代半ばには四大入学が短大のそれを抜いた。教育投資は回収を予定しているものだが、女子は他家に嫁ぐと親はそれを回収できないということがある。女子はきわめて職業に結び付きにくい分野(文学、家政学等)を専攻し、労働市場より結婚市場の方に熱心だった。

今の女子は、働きながら出産・育児を当たり前と思っている。育児休業は女性の9割近くが取得。しかし、育児は1年では終わらない。そうすると子持ち社員のコースであるマミートラックへの塩漬け状態で戦力外通知を受ける。意欲と能力のある女性は職場を去る。処方箋はある。問題の原因は従来の日本型雇用慣行。長時間労働、年功序列をやめる、同一労働同一賃金。これをやる気が今の政治と企業にはない。これからの企業はダイバーシティを取り込む事が競争に勝ちぬくことである。女性を活かせない企業には将来性がない。そのうち泥船のように沈むであろう。
どんなエリートの女性も、子ども持った途端に弱者に転落する。生まれた時、死ぬ時には誰かにお世話になってきた。依存的ななかで女性はいつも弱者の傍らにいた。競争に勝ち抜くためではない。これからは、弱者にやさしい社会を作ろう。弱者が弱者のままで生きられる社会。自分の人生の主人公になる女の子達。弱者の傍らにいつもいる若者達、それらを迎え入れる社会をつくること。女性のネットワークを作り、情報、知恵とつながりで少しでも生きやすい社会を作ろう。
講演後のアンケートでは、「上野千鶴子さんのお話を堪能した。」「久しぶりに刺激をもらった。」「女性を元気にしてくれた。」等。学生さんも数名参加しましたが、もっと多くの若者達に聞いてほしい内容でした。(新潟市 高橋令子)
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