平成28年3月31日、27年間勤めた盛岡市役所を退職した八重樫さん。「毎日が楽しいんです」と目を輝かせ、生き生きと語り始める。「想創SO!」を屋号に、個人事業者となった。
 30代半ばから、いつか役所勤めを辞め、自分のやりたいことをしたい、と思っていたという。その思いを温め、満を持しての退職だった。いろいろな人たちが自分を生かし、それが喜びにつながる、そのきっかけを地域で提供していきたい、というのが願いだ。具体的なアプローチのアイディアをいっぱい抱えて、スタート台に立った。

◆つながるお家

 動き始めた一つは、不動産賃貸業。これからますます深刻化していくだろう空き家問題。空き家を手に入れ、DIYのワークショップを兼ねてリノベーションして賃貸していくという。
 現在、盛岡市に隣接する紫波町の築70年の民家を手に入れ、アパレル関係の仕事で起業したいという女性が借りている。地域に意味のあるリノベーション住宅を造りだし街づくりにつなげたいという。
 八重樫さん自身も物づくりが好きで、壁紙を張ったり、バルコニーのペンキ塗りなど、職人グループに交じり、ワークショップを兼ね、関わっていくことを楽しみにしている。結果、この事業が収入につながることになれば、時代に合った地域に必要な事業を生み出していけると期待している。
 ほかに数軒取得しており、今後は高齢者が安心して暮らせる賃貸住宅、学生向けシェアリングアパート、多世代アパートコミュニティなど、“つながるお家”のイメージが広がる。

◆移動図書館「どこでもBOOK」

移動図書館「どこでもBOOK」は三輪自転車で朝5時に公園に登場。仲間と改造したもの

「想創SO!」事務所の近くには、市民の憩いの場として親しまれている高松の池がある。日本の桜名所百選にも選ばれ、冬季には白鳥も訪れるなど四季折々人々が集う。
 そこに気候のいい時季(4-11月)の朝、自分で改装した三輪自転車に、絵本やエコロジー、暮らし、民芸、郷土関係の本など約100冊を積んだ移動図書館「どこでもBOOK」で出かける。
 70代のある女性は、訪れた翌週大正、昭和初期の小学校の教科書4セットを寄贈してくれた。またその女性から、茶道と華道の本をいただいたすぐその後、「こういう本が見たかった」という人が現れたときは、偶然性のすごさにびっくりしたという。

友人が出勤前に移動図書館に来館


 今シーズン最後の日には、読書アドバイザーの活動をしているという人が訪れ、早朝読み聞かせや読書会をしましょうとの提案を受け入れてくれ、来シーズンの活動に楽しみがつながった。
「想像を超えた出会いがあって、ギフトされているなぁと、うれしくなる。コーヒーやお菓子などの差し入れもあるのですよ」と声も弾む。
 ちょっと離れた北上川の緑地広場には曜日を変え、150冊積める電動三輪自動車で出かける。


◆自分を育てつつ学ぶ新しい働き方

 ほかには、福祉関係団体の一員として、盛岡市老人クラブ連合会や成年後見センターもりおかで、地域で支え合う暮らしをと、コーディネートやマッチングなどの手伝いもしており、以前の仕事で得たノウハウを生かしている。
 自分のやりたいこと=仕事が、そのまま生き方につながる。それが可能な時代ですと提案する講座の開催も始めていく。
「仕事は存在意義を探求し、表現することと捉えています。仕事に自分を合わせるのではなく、仕事は自分に合わせ、やりたいことをやり、複数持ってもいい。そんな新しい見方へ社会全体がシフトしていけたら、どんなに多くの人がHAPPYになるでしょう」という。
 新しい働き方、生き方を模索しつつ、八重樫さんの明日への眼差しに迷いはない。     (WAN特派員 而)

 *八重樫さんの活動はFacebookからもご覧いただけます。「八重樫信子(やえちゃん)」で検索ください。

 NPO法人「育自の魔法」のファシリテーターとして、自分をはぐくむ「育自」のセミナーを盛岡で開催。

  講座の会場風景