タイトル「凄母」。すこし危うい感覚が過ぎる。
仕事をてきぱきと人並み以上にこなし、
育児も家事も両立するワーキングウーマン、
東洋経済オンライン人気連載「ワーキングマザー・サバイバル」を単行本化。
資生堂、日産、リクルート、ソフトバンク、LINEなど、
名の知れた大企業で働く11人の母たちの戦略に学べ、と表紙の文字がおどる。
「煽られてるなぁ」と感じ取りながら、読み始める。
「上野千鶴子先生、働く女は幸せですか?」も収録。
おっ、これはおもしろそう。
御多分に漏れず、母たちの凄い働き方が、
ジェットコースターに乗っているかのような
スリル感、スピード感を思い出させて、
読み手のテンションを高めてくれる。
書き手の佐藤留美さんの、軽快でリズム感に富んだ文章が、
その高まりに一層拍車をかけてくれる。
文中、コラムに目が留まる。
『凄母とて、自分の力だけで凄母になっているのではない。
ある意味、凄母は作られるもの。環境要因も大きいのだ。
もっとも、彼女らをただの「運がいい人」の一言で片づけたり、
指をくわえて僻んでいるのも、嫌な話だ。
「子どもを預けてまでする仕事」を面白く、
実りあるものにするためには、
まずは自ら環境を変える努力をすることが有効だ。』
凄母だけでなく、周りで支えるすべての人たちあってのこと。
母11人、読み終えると、ここに主人公として登場しない
凄母の周りの人たちの凄さがわかる。
学ぶのは、彼女たちの持つマネジメント力と、
コミュニケーションスキルだと感じた。
最後に日本のフェミニズムを牽引してきた上野さんのインタビューが収録されている。
「なぜ、日本のワーキングマザーは、辛いのか?」
この問いに対する答えを読めば、
あなたもあなたの周りも明るく照らされるかもしれない。
自ら環境を変える努力とともに、いつでも始められる。
■ 堀 紀美子 ■
2018.03.06 Tue