ヨーロッパで考えた、「多様な性」のこと(23ヵ国目/世界一周)
この一月ほどで、オーストリア、スロベニア、イタリア、クロアチア、スロバキア、ハンガリー、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、アルバニアなどを次々と周り、23ヵ国目のギリシャに来ました。
世界経済フォーラム(WEF)によると、ギリシャのジェンダーギャップ指数は調査対象144ヵ国のうち78位。ジェンダー関連のニュースでは、2017年の法改正において、ギリシャではトランスジェンダーの人々が医学的検査を受けることなく公的な性別を変更することが可能になりました。東京からギリシャの首都アテネまでの距離は約9500km。成田・羽田空港発の場合、乗り継ぎ必須で20時間ほどかかります。
今回は、ヨーロッパに来て感じた、性のあり方について書きたいと思います。先日、ゲストハウスで外国人バックパッカーたちと談笑していた際、イギリス人男性2人が「僕たちはゲイのカップルなんだよ」と言いました。会って数分にも関わらず、なんの躊躇いもなく教えてくれたのです。そして、周りのバックパッカーたちも驚くことなく会話が進んでいきました。
ヨーロッパでは、性に対する考え方が非常に先進的。人が多い広場や道でもカップルが平然とキスやハグをしています。それと同じように、同性カップルも公の場で愛しあう場面をよく見かけます。周りは特に気にするわけでもありません。最近は、そんな光景にも慣れました。同性カップルが手を繋いでいることもハグしていることも、こちらでは違和感のない光景のようです。
ヨーロッパでは一部を除き、ほとんどの国で法制度上の性的指向に対する差別は存在しなくなりました(2015年データによると、ヨーロッパで性的指向を理由とした差別を禁止する法律を整備している国は、41か国と13地域)。日本で認められていない同性婚が、イギリス、フランス、オランダ、スペイン、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーなどの国で認められています。ヨーロッパが人権問題に関して進んでいる背景の1つには、LGBTの権利の確保を目的として2006年に議決されたモントリオール宣言の原則を、ヨーロッパの統合に取り組む欧州評議会が重視していることが挙げられます。LGBTの人権問題に関して、国内のみならずヨーロッパという地域として取り組んでいるのです。
日本国内では、2015年に初めて東京都の渋谷区で「パートナーシップ証明書」が発行されました。しかし、パートナーシップ制度は同性婚と違い、法的にその関係が認められるわけではありません。法によって保障される権利は何も持っていないのです。また、日本では同性愛者を含め、LGBTの方々に対して未だに厳しい視線が向けられています。街で同性カップルが手を繋いでいる姿なんてほとんど見かけませんし、好奇の目で見られることを恐れてLGBTであることを隠していることも多いです。だからこそ、性の多様性について議論していくこと、人権問題に関して進んでいる国の法律やあり方を参考にすることが必要ではないかと思います。
同性を愛することも異性を愛することも、愛することには変わりありません。様々な性のあり方を認めていくことこそ、人権の尊重の根幹ではないでしょうか。(佐野仁美)
下の写真は、LGBTの尊厳と社会運動を象徴するレインボーフラッグ。
(「レインボーフラッグ (LGBT)」『ウィキペディア日本語版』,2018年8月21日取得,https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%B0_(LGBT)&oldid=69667331)。