〈いとこが見せてくれたプリキュアグッズ〉


変化するアニメ(帰国中の日本にて)

諸事情により、ラトビアから一時帰国しました。12月中には再出国する予定です。現在帰国中のため、今回の記事は日本にいて気づいたことについて書きたいと思います。

祖父母の家に行き、6歳のいとこに会う機会がありました。いとこは男の子です。私に会うなり「見てほしいものがあるんだ」と言って自分の部屋へ行き、私に満面の笑みでピンクの箱を見せてくれました。箱にプリントされていたのは、あの有名な「プリキュア」。そして嬉しそうにその箱を開けると、出てきたのは沢山のプリキュアグッズたち。彼は、プリキュアの虜になっていました。

プリキュアについて簡単に説明すると、テレビ朝日系列で毎週日曜日の朝8時30分から放送されている、変身して悪の組織と戦う女の子たちのアニメです。普通の中学生である女の子たちが 可愛いらしいフリフリのドレスを着て、妖精たちの力を借りながら悪と戦い平和を取り戻していくというのが大まかなストーリー。かつては「おジャ魔女どれみ」や「明日のナージャ」などが放送されていた枠です。私も幼稚園児の頃熱中しており、クリスマスや誕生日にはプリキュアのおもちゃをねだっていましたし、周りの女の子たちも、一様にプリキュアの虜だったのを覚えています。「プリキュア」がプリティとキュアという英語の造語で作られていることからも、プリキュアとして活躍するのが女の子ということからも、女児向けのアニメであることは確かです。

そんなプリキュアにいとこがはまっていたので、私は最初驚きました。しかし、好きなも のについて話す彼の顔は、とても楽しそうでした。聞くところによると、幼稚園ではプリキュアが好きな女の子たちとプリキュアごっこをして遊んでいるそう。もしかしたら、女の子はプリキュアが好き、男の子は仮面ライダーやレンジャーものが好きという固定観念は時代とともに薄れつつあるのではないかと、そのとき思いました。

2004年にスタートし、15年も続いているプリキュアですが、今年12月2日の回では史上初の男の子プリキュアが出てきました。プリキュアは女の子だけがなれるものだと思っていたので、私にとっては衝撃的でした。ネット上でも、多くの反応があったようです。今回放送されたプリキュアのシリーズには「多様性」というテーマが隠されており、周囲の目を気にしたり周囲の価値観に縛られるのではなく「自分らしさを信じることで、未来はきっと明るくなる」というメッセージが込められているのだそう(注1:下記)。そんなメッセージを伝えてくれるアニメが身近にある、いまの世代の子供達が少しだけ羨ましくなったことも事実です。私が幼かった時代とは変化しているのだと改めて感じました。

子供の好きという気持ちを育ててあげるのも、潰してしまうのも、周りの環境であり、大人の影響は大きいと思います。男の子はこう、女の子はこう、と性別の枠組みの中で何かを決めるのではなく、個人個人の好みや感情が受け入れられ尊重されていく時代を作っていくのはまさに大人である私たちの役目。まずは子供の多様性を尊重することこそ、私たちにできる第一歩ではないかと思いました。(佐野仁美)

注1:男の子プリキュアに関する記事はウェブにもたくさん見られます。2018年12月2日の朝日デジタル記事(無料ですが、読むのにご登録とログインが必要です)などご参照ください。