2019年3月9日(金)、札幌エルプラザ公共施設にて、
#MeTooさっぽろミーティングVol.3「こんなとき、どうしたら?セクハラ・性暴力の相談・対応のQ&A」を開催しました!

当日は、札幌市内外から計17名が参加しました。


■ 開催経緯・企画趣旨

昨年の国際女性デーに札幌で初開催した「#MeTooさっぽろミーティング」の第3弾。

今回のテーマは、セクシュアル・ハラスメントや性暴力の相談と対応のQ&A。

自分や周りの人が被害にあったとき、どうしたらいい?困ったときや気になることがあったとき、どこに相談できる?身近なところで問題が起こったとき、自分が相談を受けたとき、できることは?どんな制度やサポートが利用できる?

札幌市内の相談支援機関の担当者の方から、セクハラ・性暴力の相談や対応に関するさまざまな疑問や困りごとの解決策・ヒントをお話いただき、性暴力の相談先や支援として、どのような仕組みや取り組みがあったらいいか、参加者同士で意見交換を行うことを目的として開催しました。

※第1回開催報告 https://wan.or.jp/article/show/7782
※第2回開催報告 https://wan.or.jp/article/show/8053
 

■テーマトーク「セクハラ・性暴力の相談と対応のQ&A」

テーマトークでは、札幌市男女共同参画センター「ガールズ相談」の相談員で臨床心理士の福原佑佳子氏を講師にお招きし、「つながりを大切に過ごすこと」というテーマで、セクハラや性暴力の被害によるトラウマやPTSDなどの症状の特徴と、その対処法や相談機関、周りの人ができるサポートなどについて、お話をいただきました。

(概要)
・セクハラや性暴力の被害を受けると、何か月も経過しているのに、その記憶を何度も思い出し、ショックで社会生活が困難になったり、自身を失い、家に閉じこもったりなど、「トラウマ」の症状に苦しむことがある。「不安」や「恐怖」は、通常の感情の一部であり、時間の経過とともに薄れていくのがほとんどであるが、「トラウマ」は医学的な治療を必要とする。

・トラウマの症状には、個人差がある。トラウマによって引き起こされる身体面・心理面・社会生活面の変化(例えば、食欲不振や抑うつ気分、人付き合いを嫌がったりする反応)は、「異常な事態に対する正常な反応」であるが、一方で、生活に支障をきたすようになると、PTSDやASD、うつ病や不安障害などの診断名がつけられ、医療機関でのフォローが必要になる。

・トラウマ体験後一か月以上が経過してから診断がつくPTSD(心的外傷後ストレス障害)には、フラッシュバックなどの「再体験」、体験のことを思い出すことを避ける「回避・まひ」、小さなことを気にするようになったりする「過覚醒」という3つの特徴がある。事件直後には、このPTSDの3症状に、感情が麻痺して悲しめなくなったり、心が凍りついたような状態になったり、辛くないと思い込んだりする「解離症状」が加わったASD(急性ストレス障害)が発症することがある。ASDになると、その後にPTSDになる可能性が高いため、早期の対応が求められる。ただし、「解離症状」によって、表面的には平然としていて、精神的に安定しているように見えてしまうと、被害が軽傷だと誤解されたり、サポートが受けにくくなったり、孤立してしまうことにもつながってしまうため、特に注意が必要である。

・過去を変えることはできないが、「過去の傷に影響を受けている今を変える」ことでトラウマを治療することはできる。そのために大切なことの一つは、「自分自身の症状に気づくこと」であり、適切な治療を受け、対処法を身につけることが可能になる。二つ目は、「周囲からのサポートを受けること」であり、人とのつながりを感じ、孤独感や不安感が低減される。そして、趣味の時間や好きなことに取り組むなど、「自分を大切にし、自分自身を価値ある人間だと扱えるようになること」が、回復にとって重要である。

・一方で、サポートをする側も相手の話を聴いているうちにダメージを受ける「代理受傷(二次受傷)」の危険性がある。例えば、自身がトラウマ体験に遭ったかのような心理状態になったり、被害者と同様に再体験や回避の症状を発症してしまうことがある。親身に話を聴くことは大切だが、代理受傷には十分に注意し、ひとりで被害者を支えようとせずに、他の人とも協力してサポートをすることが重要である。また、自分自身もケアをすることや、自分自身の過去のトラウマやストレスなどの問題も把握しておく必要がある。

・これらのことに気を付けた上で、被害に遭った人に対して「私たちができること」は何か。まずは、「生活面での協力」が大きな力になる。被害に遭うと日常生活がままならなくなってしまうこともあるため、電話やメールをしたり、日用品を届けたり、周囲が気にかけてあげることが大切である。顔を見に行くだけでも良いかもしれないし、医療機関の受診や登下校等の際に付き添ってあげたり、家族だけで支えきれないことを友人や知人として手伝うこともできる。人とのつながりを感じられると回復が早くなる。また、気持ちに寄り添いながら、相手が話したいことに耳を傾け、話を聴くこともサポートの一つである。

・サポートをするときには、「相手の力を信頼すること」と「自らの健康を守ること」が重要である。被害を受けた方は「回復できる力を持っている」と信じること、本人の「自己決定を尊重すること」、そして、トラウマやPTSDに悩んでいる人が周囲の無理解な言動により傷ついてしまう「二次被害」を与えないこと、こうした視点を持っておく必要がある。そして、サポートする側が共倒れにならないためにも、被害を受けた方と適切な距離を保ち、代理受傷を防ぐことに気を付けたい。自分にできる支援には限界があるということを把握しておくことや、ひとりではなくチームで支援することにより、サポートする側も自らの健康を守り、サポートされる側も回復にとって重要な「つながりを感じる」ことができる。


テーマトークでは、簡単にできる「からだとこころの調整法」として、「グーパー呼吸法」を参加者も一緒に実践するなど、和やかな雰囲気のなかでの学びとなりました。


■グループトーク「相談・対応の困りごと&必要な仕組み・取り組み」

後半は参加者同士で、セクハラ・性暴力の相談と対応に関する様々な「ギモン」や「困りごと」、セクハラや性暴力の相談先や支援としてどのような仕組みや取り組みがあったらいいかなど、グループで意見交換を行い、参加者全体での話し合いの共有を行いました。

参加者からの意見(一部要約)

●相談・支援に必要なこと、課題について
・若者と接する仕事で性暴力についての相談も受けたりする。
・LINE相談など、様々な形で相談を受ける場があるといいのでは。電話相談の時代じゃない。
・ピアサポートの場なども必要。
・安心できる人とのスキンシップ。自己肯定感。
・適切な医療機関がない。
・小さいころからの刷り込みで、被害に対して声をあげにくい、諦めてしまう状況もあるのでは。小さい頃からの教育も重要。
・被害者だけでなく周りの同級生など、それぞれへの影響も考える必要がある。
・相談に行くだけでも勇気がいるので、1か所で済むようなワンストップの窓口が必要。たらい回しにされない窓口。
・職場に相談窓口があっても、勤務時間中しか利用できないため、結局外部の相談先に頼るしかない。
・セクシュアル・マイノリティだとさらに支援が無い。
・男性の被害もある。

●相談を受ける側・支援をする側の課題について
・話を聴く側、関わる側も苦しくなってしまうことがある。代理受傷(聴いているだけなのにダメージ)。
・自分のトラウマにも向き合わざるを得ない。
・相談にのっているときに、私がセクハラしているかも。
・友人の夫婦間のあり方について、適切なアドバイス。カップルの力関係。
・子どものころ、自分の母親から相談相手として話や愚痴を聞かされていたのが辛かった。
・支援者との関係(知られたくない事を知られてしまった)。相談していた人が、次第に相談していた相手を避けるようになることもある。お互いに会うのが辛い。
・被害者に対して、何とかしてあげたいと思いアドバイスなどをするが、結局はなんともならない。距離を置いて、様子を見ることも必要だと思った。
・相談・対応に親身になりすぎて、疲れてしまうことがある。大事な人だからこそ、距離をとって付き合う。依存しやすい人に対しては、友人であっても境界線を引いて関わることが必要。相手の力を信じつつ、相手が自分で自分の解決方法を見つけられるように関われたらいい。

●セクハラについて
・男性加害者の感覚が麻痺している部分もあるのではないか。同年代の人が「それはダメなんじゃない」と指摘できると良い。加害防止のためにも、育てあう環境が必要。
・仕事の場、仕事での付き合いと、プライベートな関係を区別できない人がいる。
・「この間は大丈夫だった」という感覚から加害がエスカレートする。
・周りが「そのくらいのことで」という対応・雰囲気だと、被害者が言いづらくなり、結果的に被害者が職場を辞めたりする。被害者は失うものが大きいが、加害者への社会的制裁は小さい。
・女性側が曖昧な笑顔などで対処すると、男性がそれを好意だと誤解してしまうこともあるのでは。「NO」の伝え方が大事。「それは違う」と言う。
・被害者を守るには、「社会のNO」と「周囲のNO」が重要。当事者間だけの問題じゃない。周りにも責任がある。セクハラを容認・見過ごす雰囲気がある職場だと、相談すら出来ない。


■以下、参加者アンケートより(一部抜粋)

①イベントに参加しようと思った理由
・性暴力やセクハラについて知りたかったから。
・知人に勧められて。
・友人の相談を受けることで少々精神的にきついため(2次被害?)ヒントになることがあればと思い参加。
・バイトをしているときにセクハラ被害に遭い、それからこうした活動に参加。
・10代からの相談を受けることが多く、その中に性被害も度々あり、学ばせていただきたく参加しました。
・今後の女性支援に役立てばと思い。私自身も過去に被害を受けた経験がありPTSDにもなっていないため、機会があれば積極的に発信していきたいです。
・きちんとstudyしたい。
・札幌での#metooの運動について知りたいと思った。

②参加した感想
・代理受傷という言葉を初めて聞きましたが、まさに今自分が置かれている状況で、客観的に自分を振り返ることができました。「境界線」「相手の力を信じる」をキーワードに今後の活動をしていきたいと思います。
・相談したことで友人との間に境界線をもつことをアドバイスしていただき是非試したい。
・「助けてもらえない」というのはストレスなんだなと改めて気づいた。
・実際の話を色々聞けてよかった。
・今まで知らないこともたくさんあり勉強になりました。ありがとうございました。
・代理受傷についてのケアを考えるきっかけとなりました。
・今日は同じ意見を持った方や、私では考えつかないお話を聞けてよかった。カウンセリングに当たって再確認もできた。気づきがあって良かったです。
・学校でこういうことやってみたい、と思うアイデアが浮かびました。
・自分の意見を言いやすい雰囲気が良かったです。

③今後どのような企画に参加してみたいか
・加害者の意識をどう変えるのか、という企画があると良いなと思った。
・様々なハラスメント、ジェンダーに関するもの。
・代理受傷のケアを取り入れている支援機関がありましたら、お話を聞かせていただきたいです。
・「当たり前がNOである」ということに気づけるようなワークショップ。
・シンポジウムなどあれば参加してみたいです。
・若年層支援や支援者の交流会。

★ご参加いただいた皆さま、たくさんのご意見・ご感想、誠にありがとうございました!
最後になりましたが、お忙しい中ご登壇くださいました講師の福原様に、心よりお礼申し上げます。また、本企画の開催には、下記の団体のご協力をいただきました。重ねてお礼申し上げます。

【協力】札幌市男女共同参画センター(指定管理者:(公財)さっぽろ青少年女性活動協会)
【後援】公益財団法人 北海道女性協会(北海道立女性プラザ)、NPO北海道ネウボラ


2019年3月19日
#MeTooさっぽろ実行委員会

※メディア掲載
・2019年3月6日(水)、北海道新聞、朝刊全道、くらし面、「〈身近にSDGs 持続可能な未来へ〉「#MeToo」を札幌でも セクハラ根絶 ともに考えよう」(開催告知記事).