雑誌『Kiss』に掲載されている大人の問題提起シリーズの『さけび』は、セクハラ被害を受け、退職するに至った女性が、声も上げられない状態から、叫び、闘い抜く様子を描いた作品です。
セクハラ、パワハラを扱った作品は少女漫画ジャンルだけでもかなりのものになるのではと思いますが、主人公がこれでもかと「痛い」目に遭う様子をマゾヒスティックに楽しむような劇場型の作品とは異なり、圧倒的なリアリティがあります。それもそのはず、本作の監修は『セクハラ・サバイバル:わたしは一人じゃなかった』でおなじみの、佐藤かおりさん。ご経験に基づいたセクハラ描写には、じわじわ静かに、ゾッとする、凄みがあります。
あまり詳細なあらすじはネタバレになるので避けますが、派遣社員である主人公の、職場で感じる圧倒的な無力感、追い詰められる主人公の一方での加害者の笑顔、思い通りにならなかったときの男性上司のへそ曲げと復讐(女は感情的だなんてよく言えたもんだ)、信頼しようとしても男は結局男の肩を持つ、という現実、「会社にとっては私のほうが厄介者なのだ」という心抉られるセリフ。
実際にセクハラをご経験された方には、読み進めるのが辛い場面もありますが、この作品のもう一つのポイントは、「救い」があることです。いわゆる傷のなめ合い、女って辛いね、的な「救い」ではなく、エンパワーにつながる「救い」。(1)巻では、被害のリアリティの描写が多いですが、(1)巻の終盤、(2)巻にかけ、主人公が仲間を得て、しぶとい加害者と闘う道のりが力強く描かれています。
被害の物語は、社会構造への視点、権力批判、エンパワー、の3つがセットになっていないと、権力構造の正当化やカタルシスで終わってしまう危険性を伴うのではと思います。最近は、こういった、加害やからかいの文化をデフォルトとせず、「おかしいものはおかしい!」というエンパワーが描かれる女性向けの作品も増えてきたように感じ、心強く感じます。でも本当は、ハラスメントや暴力の加害者が、加害しない社会、加害しようにもできない社会、が実現することが少なくともゴールなのではないでしょうか。本作、『さけび』の監修者である佐藤かおりさんもおっしゃっておられるように、一刻も早いセクハラ罪の創設が、そしてその実現のためには、もっと多くの女性議員が政治の場で活躍できる社会が切に望まれます(荒木菜穂)。
【関連記事】
書評:佐藤かおりさんの『セクハラ・サバイバル:わたしは一人じゃなかった』を読んで - -伊田久美子- -
慰安婦
貧困・福祉
DV・性暴力・ハラスメント
非婚・結婚・離婚
セクシュアリティ
くらし・生活
身体・健康
リプロ・ヘルス
脱原発
女性政策
憲法・平和
高齢社会
子育て・教育
性表現
LGBT
最終講義
博士論文
研究助成・公募
アート情報
女性運動・グループ
フェミニストカウンセリング
弁護士
女性センター
セレクトニュース
マスコミが騒がないニュース
女の本屋
ブックトーク
シネマラウンジ
ミニコミ図書館
エッセイ
WAN基金
お助け情報
WANマーケット
女と政治をつなぐ
Worldwide WAN
わいわいWAN
女性学講座
上野研究室
原発ゼロの道
動画






