
書 名 日本婦人問題懇話会会報(1~30号)
*会報は、WANミニコミ図書館で読むことができます。
https://wan.or.jp/dwan/dantai/detail/2?title=2
*左の画像は、日本婦人問題懇話会同窓会のサイトからお借りしました。
『日本婦人問題懇話会目次一覧(1-52号)』 デジタル再版、日本婦人問題懇話会同窓会作成、2019年5月
山川菊栄(1890-1980)は、1951年5月、初代労働省婦人少年局長を退任し、同年英国を中心に外遊して翌年7月に帰国した。彼女は英国労働党婦人部機関誌Labour Womenにヒントを得て、1953年10月に月刊『婦人のこえ』を創刊し、1961年9月号まで95冊を刊行し終刊した。その後間をおかず、田中寿美子らと「婦人問題懇話会」(1984年以降「日本婦人問題懇話会」、以下「懇話会」と略)を1962年に設立し、『婦人問題懇話会報』(1963年から1964年までパンフレット型、No.12まで1965年から雑誌型、以下『会報』と略)を発行した。この雑誌は、1999年No.58 まで続いた。
『婦人のこえ』時代には、菊栄は毎号のように執筆していたが、『会報』時代は、彼女の70歳代、80歳代を含む17年間であり、執筆頻度は少ない。『会報』に執筆した数は、パンフレット型で8編、雑誌型になって70歳代後半11篇、80歳代を通じて12篇の計23篇であり、最後が88歳の時の「保護は男女ともに」(1979年No.30)であった。
菊栄は肉体的には、83歳頃から歩行困難で外出も途絶え、自宅でベッド生活であったが、86歳で『覚書 幕末の水戸藩』で第2回大佛次郎賞を受賞し、87歳ごろは多くのインタビューに応じ、「懇話会」の規約改正によって88歳で初代代表となり、『山川均全集』8、9巻の編集も継続している。
菊栄が『会報』に書いた、雑誌型以降の合計23篇中、旧および新装増補の『山川菊栄集』(岩波書店 1982、2012)第7巻Ⅲに収録されているものは、4点、(「結婚・家族・家名」1966. No.2、「現代の家庭と老人問題」1967.No.5、「何のための高度成長か」1970年No.12 、「格差撤廃の闘争は中休みか」1974.21)で、いずれもテーマも重要で、内容に筆力の衰えなど感じさせない。
『会報』終刊後のアンソロジー編集委員会編『社会変革をめざした女たち』(ドメス出版2000)に収録されたものは2点(「婦人解放とは」1971.No.14、「同一賃金のためのたたかい」1974、No.20)でいずれも80歳代に入ってからのものである。熟慮の上での選であることが推測されるが、ここでは残念なことに、〔略〕の箇所が多い。略の箇所には、読者によっては興味深い叙述も含まれており、「どうしてここが〔略〕なの?」と思ってしまうものもあるので、ぜひ、興味を持った方は、この際、「WANミニコミ図書館」にアクセスして、全文を通して読んでいただきたい。
もし私が選集やアンソロジーの編者だったら、おこがましいが、もう一点どちらかに入れたいと思うものがある。それは、上述、菊栄『会報』最後の執筆「保護は男女ともに」(1979、No.30)である。なぜなら、男女労働者の保護と子どもの発達・人権を視野に入れた上、「男女共々の労働条件なども考えに入れて身体、精神ともに健全な子供を育てると同時に、別の次元の問題としたい人も多いかと思うが、戦争のぎせいにしないことも、同時に考えなくてはならない」と結んでいることが88歳の菊栄の現在へのメッセージとして、私には注目されるからである。
■いとうせつ 昭和女子大学名誉教授
近著『増補改訂版 クラーラ・ツエトキーン―ジェンダー平等と反戦の生涯―』(御茶の水書房・2018年)、『山川菊栄研究 過去を読み 未来を拓く』(ドメス出版・2018年)、『増補版 国際女性デーは大河のように』(御茶の水書房・2019年)
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https://wan.or.jp/article/show/8508
みなさまのお出でをお待ちしております。
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