
書 名 行政書士のための新しい家族法務 実務家養成講座
著 者 渡邉愛里
発行所 税務経理協会
発行日 2018年10月12日
家族の多様化がいわれて久しい。昭和から平成そして令和への移り変わりの中で、「夫婦と未婚の子」の世帯が大きく減少している。「夫婦」とは適法な婚姻をした男性と女性のことで、つまり異性のカップル、法律婚、それに夫唱婦随の臭いがする。「未婚」は「未だ婚姻せず」なので、子はいずれ結婚して独立していき、そして新たな「夫婦と未婚の子」の世帯を形成する。それが「当たり前」であり、それが家族のあるべき姿だとする考え方がある。この本は、そういう「当たり前」を疑うことの必要を説く。「家族はこうあるべき」「男は、女はこうあるべき」といった決めつけに対し注意喚起する。
①死別・離別、非婚・未婚による「おひとりさま」、②同性カップル、性別違和、性分化疾患など「セクシュアル・マイノリティ」、③「事実婚・内縁」、④ひきこもりの子ども、障がいを持った子どもの「親亡き後」の問題、⑤「ひとり親家庭」、これらの多様な家族のニーズや直面しがちな困難について、この本は、家族の姿を具体的に浮かび上がらせ、問題の所在を明らかにし、関連する法制度を解説し、解決のヒント、援助する際の心構えを示す。テーマ別のより詳しく知るための「読みたい本」、テーマ別の「確認したい基本用語」の解説、詳細な索引なども掲載する。至れり尽くせりである。
著者は、大学で音楽学を専攻して卒業後に、オープンカレッジ等で女性学を学び、ジェンダーの視点から多様な生き方をサポートするべく一念発起して行政書士をめざし、2016年に行政書士試験に合格、2017年10月に行政書士事務所を開業したという変わり種であり、努力家である。行政書士は、官公庁に提出する申請書等の作成や手続代理、各種契約書や遺言書など権利義務に関する書類の作成、これらに関連する相談、その他の法務サービスを提供する国家資格を有する専門職である。
著者が、行政書士としてジェンダーの視点から多様な生き方をサポートするために、おそらく猛勉強された成果を、商売敵になるかもしれない同業者に対して、惜しげもなく提供するのがこの本である。行政書士に限らず、多様な生き方をする人、困難に立ち向かわんとする人自身や、そのサポーターたらんとする人にとっての、最強のお助け本である。
■養父知美(ようふともみ)
弁護士、wan理事・wan基金運営委員会委員長・お助けwan法律相談回答者
著書に『知っていますか?セクシュアル・ハラスメント一問一答第3版』(共著・解放出版社),『逃げられない性犯罪被害者 無謀な最高裁判決』(共著・青弓社)など。
◆10月19日に、日本婦人問題懇話会会報をテーマに、ブックトーク「女性解放をめざした先輩たちと出会う――シリーズ・ミニコミに出会う③」を開催します。詳細は以下からご覧ください。
https://wan.or.jp/article/show/8508
みなさまのお出でをお待ちしております。
◆ブックトークに登壇される方々の著書を、シリーズでご紹介しています。すべての関連記事は下記のタグ「ミニコミに学ぶ・日本婦人問題懇話会会報」からご覧になれます。
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