清水寺

 「No War with Iran」のプラカードが世界をかけめぐるなか、今年も、いつものように新年は我が家にもやってきた。

 年の暮れは、お掃除とお買い物とおせち料理づくりに追われて、なんとも忙しい。みんなで手分けして、母と叔母、娘と孫と私の5人分の京風おせち料理のできあがり。

もうすぐ93歳になる叔母が利尻昆布で昆布巻きと白豆をつくってくれる。娘は有頭海老と栗きんとんとミートローフを。料理好きの私の男友だちが、丹波産の黒豆と鯛の子を自宅の囲炉裏でコトコトと炊いてくれた。1時間並んで買った三嶋亭の牛肉のしぐれ煮、数の子、ごまめ、柿ナマス、金時人参、高野豆腐、お煮染め。それに京風白味噌雑煮の下準備をして、あとは伊達巻きや蒲鉾などをお重に順々に詰めていく。年末に、久美浜湾でとれたての海老と蛤をいただいたので、おいしいお吸い物も加わって。それにしても、ああ、くたびれるぅ。

    祝い獅子舞


 元旦から、いいお天気になった。歩いて初詣に向かう。平安神宮で、孫が「大吉」のおみくじを引き当てた。粟田口から知恩院、八坂神社を通り抜け、清水寺まで急な坂道を登る。途中、長楽館で新年のお祝い菓子「ガレット・デ・ロア」を味わい、清水の茶わん坂で銘々のお箸を選ぶ。帰り道の三条通りで、思いがけず祝い獅子舞と出会う。頭をガブリとされた孫には、きっと福がきてくれると思うよ。家に帰るとスマホの歩数計は2万歩近くになっていた。

     姫路市立美術館


 3日は思い立って姫路までゆく。「ストラスブール美術館展-印象派からモダンアートへの眺望」と全面改装なった姫路城を見に行きたくて。

 いつだったか、パリ在住の女友だちが言ってたっけ。「フランス文化の源流はパリなんかには、ないのよ。あるとしたらアルザス・ロレーヌ地方かな。北海からフランク王国・神聖ローマ帝国、ロマノフ王朝、イランなど中東を結ぶ一帯に。それにヨーロッパの西端・アラン諸島の漁師たちの安全を願って女たちが編むアラン編みも、かな」と。

 姫路駅前からまっすぐ、大通りの先に白いお城が見える。レトロな姫路城ループバスで姫路市立美術館まで乗る。英語と中国語を流暢に駆使する運転手さんの案内に、ほとほと感心する。 明治・大正時代のレンガ造りの美術館。企画展の紹介には「フランスとドイツの国境にあり、ライン河流域の要衝として独自の文化を築いてきたアルザス地方の中心都市ストラスブールは、ヨーロッパの文化の十字路として古くから栄えてきた。街には10館にも及ぶ美術館があり、なかでも1998年開館のストラスブール近現代美術館には印象派から現代美術まで18000点ものコレクションがある。本展では「近代性(モデルニテ)」をキーワードに印象派以前、印象派、アヴァンギャルドまで、モネ、ピサロからピカソ、シャガールなど、古都ストラスブールから100の愛を届けて展示する」とある(谷口依子企画担当学芸員・姫路市立美術館だよりvol.144)。ああ、ストラスブールへ行きたいなあ。

       姫路城

 美術館から左手の坂を登ると天を突くように威風堂々と聳える、白く輝く天守閣が立っている。白鷺城だ。「昭和」の大修理から45年、「平成」の天守閣保存修理工事は漆喰壁の塗り替え、屋根瓦の葺き直しに5年をかけ、2015年に完成。白漆喰総塗籠造(シロシックイソウヌリゴメヅクリ)の工法は消石灰、貝灰、すさ、海藻を材料に古代からの伝統を継承し、塗り重ねて3㎝もの厚みになるという。地下1階、地上6階の急な階段を、ふうふうと息をついで天守閣まで登る。西の丸櫓群・長局(百間廊下)の先に千姫が休憩したという化粧櫓まで、長々と続く回廊を渡る。姫路城西御屋敷跡庭園「好古園」も訪ねる。行きは新幹線、帰りは新快速で京都と姫路を往復。1日、いいお日和だった。

 5・6日は亀岡・湯の花温泉へ母と叔母をつれてゆく。車椅子と手押し車をレンタカーに積み、娘の運転で小一時間。いつもの、あたたかいお湯と、おいしいお食事の宿を1年ぶりに楽しむ。

 とはいえ1年前に比べて、96歳の母と93歳になる叔母の、少しずつの老化と、母と20歳違い、今年、喜寿を迎える私も歳をとり、二人の世話は、なかなかに大変。年賀状のお返事をゆっくり書こうと思っていたのに、そんなゆとりもない。でもまあ二人、ゆったりと気分よく過ごしてくれたので、ひとまず安心。娘と私も年末から軽い風邪気味だったけど、温泉のおかげですっきり治ったようだ。

 1月14日、衆議院第一議員会館で「介護保険の後退を絶対に許さない! 1・14院内集会」が開かれる。主催:高齢社会をよくする女性の会(理事長・樋口恵子)/認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)(理事長・上野千鶴子)。昨年11月16日、高齢社会をよくする女性の会・京都30周年で樋口恵子さんから伺っていた集まりだ。

 介護保険が危ない。このままだと「制度の持続可能性」の名のもとに高齢者の在宅生活が困難になると緊急の呼びかけとなった。WANの記事にあるように、1)要支援はずしを許さない! 2)要介護1、2はずしを許さない! 3)生活援助はずしを許さない! 4)ケアプラン有料化を許さない! 5)利用者負担率の増加を許さない! 6)介護報酬の切り下げを許さない! と訴え、現場からのリレートークが続々と。そのあと記者会見も行なわれる。当日、IWJ Independent Web Journalの協力で集会がネット中継される予定。https://iwj.co.jp

 国の「社会保障審議会介護保険部会」と「介護給付費分科会」では介護保険の利用を抑制する改定案が検討されつつある。在宅生活を維持するためには介護サービスを抑制してはならない。なのに、京都市は今年4月から介護認定・給付業務作業を民間委託する方針を出した。「パーソナル・テンプスタッフ株式会社を代表とするコンソーシアム」を民間委託候補者として、去年9月13日に決定したのだ。しかも京都市の嘱託認定作業員126名も解雇しようとしている。認定・給付作業ともに民間委託するのは20の政令指定都市でも初となる。介護保険の民間委託(商業化)への先陣を切るという、実に憂うべきことが、今、まさに京都で起こりつつあるのだ。

 母と叔母は、ともに要介護1。週2回のデイサービスと週1回の訪問看護のおかげで、気持ちよく在宅で暮らしている。このままの生活をできるだけ続けてほしい。樋口恵子さん、上野千鶴子さん、現場のみなさんとともに、ここは絶対に譲ってはいけない正念場だ。

 年始早々、中東でも日本でもキナくさい動きが急だ。人々の命を、かくも、なおざりにする為政者たち。穏やかな1年を願いつつも、その先に何が待っているか。戦争を止めることも、政治を、よい方向へ変えていくのも、私たち一人ひとりの力しかない。さあ、いよいよ行動を起こす1年が始まる。