2010.12.04 Sat
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『失楽園』『愛の流刑地』など、不倫ものでベストセラーを連発してきたこの作家、フェミニストには評判がよろしくない(笑)。不倫が悪いってわけではないが、ひたすら男目線で語るナルシストぶりは、斉藤美奈子さん、上野千鶴子さんらからも、切れ味のいい批評でコテンパンにやられてきました。だから、「定年退職して始まる本当の孤独!」と帯にうたうこの作品は、これまでのものとは趣きが違うらしいと知っても、買う気になれなかった人も多いはず。
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でも、読んでみると、ナベジュン(苦笑。こう呼ぶそうですⒸ酒井順子さん)ってジェンダーセンシティブかも!?って驚きます。企業社会の第一線で40年生きてきて、定年によって心ならずもそこから降りざるを得なくなった主人公の見栄や虚栄心、思い込みや非常識。妻や近隣の人々、はてはデパートのネクタイ売り場の女性店員までも身勝手に巻き込みながら、全然反省しない。「男」(生物学的な意味ではなく、覇権的男性性。要するにオヤジ、ですね。「威一郎」という主人公の名前は示唆的)というものの生態がはなはだリアルに描かれています。主人公と同様の立場の男性が読んだら、不愉快になるに違いない(いや、真正「オヤジ」は、自分がそうだとは気づきもしないのでしょうか)。こんな鋭い観察眼があるとは、この作家、男性中心社会に結構批判的な目を持っているのでは。
とはいえ、この人が描く女性は相変わらず。後半、若い女性との「デート」に舞い上がり、それで人生観が変わっていくあたりも、まったくこの作家らしい能天気ぶりではありますが、それも含めて、異文化を学ぶところ多く、しかも笑える。 WANで買うのにピッタリの本です!(eureka)
タグ:オヤジ
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