女の本屋

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子ども、この未知なる者 『虐待』 サンドラ・ラタン

2011.03.14 Mon

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください. 翻訳もののミステリーは、じつはあまり好きではない。どうしても、登場人物の名前が覚えられず、なんどもカバーにある登場人物一覧を見ながら、誰が誰だったのかを、そのつど確認しなければならないからだ。しかし、今回は、タイトルと、カナダのブリティッシュ・コロンビア州にある都市コクウィットラムが舞台とあって--とはいえ、わたしはこの都市のことを全く知らなかったのだが--、そのマイナーな感じに惹かれてつい、登場人物の名前を何度も何度も確認しながら、読破した。 物語は、ある家族の末っ子の殺人事件を中心に、主人公である女性刑事アシュリン・ハートの仕事上のパートナー、私生活上のパートナーたちとの、深い葛藤を抱えた関係が複雑に絡み合いながら、事件の解決へと向かう。タイトルから容易に想像できるように、そこにはほとんど救いがなく、そして、被害者として登場するのは、子どもたちである。所々で、カナダのソーシャル・ワークの劣悪さに驚かされるが、それはもしかして、それだけ助けを必要とする子どもたちの数が多いからかもしれない、と思うと、物語以上に背筋がぞっとさせられる。そしてまた、加害者もまた、かつて子どもであったことに思い至ると、もはや、加害者と被害者の区別もなくなっていき、親子であることの暗闇があぶりだされ、刑事である登場人物たちにも、そのことが深い影を落としているようにも思えてくる。

登場人物たちの人間関係が複雑で、そのことがいっそう、登場人物一覧表への依存度を高めもしたが、その複雑さを引き起こした理由を知りたくなって、前作である『放火』にも手を伸ばしてしまった。(moomin)









カテゴリー:わたしのイチオシ / moomin

タグ:虐待