2021年秋、学校協力の下、“ジュニアプロジェクト”に参加した高校生が、コメントを寄せて下さいました。
ご自分の経験から、“疑問を直接上野さんにぶつけてみたい”とWANジュニアプロジェクト応募を考えたそうです。
学校の先生方に相談したところ、ご協力をいただくことができて、WANジュニアプロジェクトと同じ内容のワークショップを、特別にリアルで実現してくださいました。
いただいたコメントをそのまま、転載させていただきます。
haruさん、ご協力、ありがとうございます!(^_^)
☆☆☆haruさんの投稿です☆☆☆
私は東京都内の高校に通う高校3年生のharuです。
11月上旬、上野千鶴子さんをICU高校にお招きし、高校生5人と上野さんで対話イベントを企画し運営しました。
私は今まで、社会への疑問があっても「まあそれが当たり前の世の中だから、自分がそれに適応していかないと、、」というふうに考えていました。
そんな中17歳の夏、電車で一人の男性につきまとわれました。すごく怖かったです。
そして一番最初に思ったことは「自分の服装が悪かったんだ、こんな服装してたら痴漢にあうから気をつけないと」ということでした。
私は初めて、「女性として生きていくことってこういう気持ちの悪いことを経験して我慢することなのかな」と思いました。
女性であることってこんなに生きづらいのかなと苦しくなりました。
そしてそのとき、多くの女性が声を上げている理由、行動している理由がわかりました。
「この人たちは、私が、我慢するしかないのだろう、それが当たり前なのだろう、と思っていたことを変えようとしている。」
そして、こんな社会はみんなにとって生きづらい。では私には何ができるだろうと考えるようになりました。
行動を起こしたいけど、でも何をしたらいいかわからない、自分の無力さを痛感しました。
その時の私は、とにかく誰かに怒り、誰かに疑問をぶつけたかった。
そのころに、私は上野千鶴子さんの『女の子はどう生きるか』の本に出会いました。
上野さんのたくさんの本を読んで、上野さんのことばは常に私を「そうきたか!」と思わせるようなものばかりでした。
上野さんは「10代は真っ直ぐメッセージが届くから話していて楽しい」と本でおっしゃっていたので、おもいきって対話させていただけないかのお願いを連絡してみました。中高生が応募できるWANのジュニアプロジェクトへの応募も考えましたが、先生方に相談したら、学校が図書館プロジェクトとして運営することで協力してくれました。
高校では「上野さんと対話したい!」という一つのきっかけで、ジェンダー多様な、それまで面識がなかった5人の仲間が集まり、「私たちとフェミニズム」をメインテーマに企画がスタートしました。
上野さんをお呼びするにあたって、私たちが一番大切にしたことがいくつかあります。
1つ目は、生徒が主体で企画をすること。
高校でイベントを行うには先生たちの協力も欠かせません。でも事務的なこと以外、内容や講演会の形など、すべて生徒が「こうしたい!こうやりたい!」と思うやり方で進めました。
2つ目は、上野さんに「講演」という形でしゃべってもらうのではなく、高校生と「対話」をしてもらうこと。
私たちが疑問に思うことを素直に上野さんとおしゃべり感覚でおこないたいと考えました。
3つ目は、「問いの出発点は常に私」であること。
この言葉は上野さんが『情報生産者になる』でおっしゃっていたことです。誰かの声を代弁するのではなく、まずは自分の思いを声にしようと考えました。
また、上野さんの「どうしてそう思うの?」「わからない」「なんで?」の問いに答えられるのは、その問いが自分の中から出てきたものじゃないと答えられない、と考えました。
夏休み明けにメンバーが集まったのですが、コロナウイルスの影響で学校は急遽オンライン授業へと切り替わり、9月の最初の数週間は何の準備もできずにいました。
オンライン授業明け、学校祭、中間テストを挟みながら、私たち5人はディスカッションをすすめました。
週1日で行っていたディスカッションも本番当日が近づくにつれ、毎日zoomをつないで行うこともありました。
ディスカッションでは対話の流れを決めておくのももちろんですが、「こういうことに最近疑問を思った」などの自分たちの疑問を仲間内でシェアするという、”上野さんがいないところでも仲間で対話する”ことを行っていました。
「部活動をしている中で「女子マネ」の存在が性役割を固定化することに加担しているのではないか」
「痴漢被害とかも結局自己責任で片付けられてしまってない?」
「男性がフェミニストを名乗るのってどうなんだろう」
私は今までジェンダー問題をあまり友達と話してこなかったので、5人でこうやってディスカッションができるのがとても楽しかったです。
運が良かったことにコロナの感染者数が少なくなったので、実際に上野さんに学校に来ていただき、上野さんと私たちはリアルに対面で、企画を開催することができました。
当日、定員50人をはるかに上回る100人以上の生徒が、私たちと上野さんの対話を聞きに図書館に来てくれました。
1時間30分予定の対話はそれだけでは収まらず、お願いをして時間を延長して行いました。
事前に上野さんから「あなたたちは知識では私に敵わないから、度胸をつけてきてね」と言われたのですが、あんなに「大丈夫、いつも通りのディスカッションに、上野さんがいるだけだよ」と言っていた私たちも、やはり上野さんを前にすると固まってしまいました。
上野さんの言っていることをその場で瞬時に理解して、自分の考えを言葉にするということがとても難しかったです。
上野さんは私たちの問いに答えをくれるのではなく、自分たちの奥底にある自分たちの答えを一緒に掘り下げてくれる、でも最後は「自分で見つけてごらん」というように、私たちが自ら考える余地を与えてくれるているような気がしました。
私たちが上野さんにぶつけた疑問は、問題の根っこと解決方法を探るための、まだスタート地点にあると思います。疑問はどんどん掘り下げていくことが可能で、ずっと掘り下げていきたいと思うような、今までにこんな刺激的なことを経験をしたことはなかったのが、上野さんとの対話でした。
私は今まで漠然と「みんなが生きやすい社会に変えるために私は何ができるか」という答えがでない沼にはまっていました。
上野さんは対話の中で、「誰かのために勉強するんじゃない、行動するんじゃない。自分のために、自分が生きやすい社会を作るために学ぶんだ、行動するんだ」と私に気づかせてくれました。
わたしは自分のためにフェミニズムをこれからも学び続けます。
最後になりますが、対話を引き受けてくださった上野千鶴子さん、協力してくださった学校の先生方、本当にありがとうございました。
★WANジュニアプロジェクト★ オンラインイベント『十代の女の子たちへ 上野さんと話そう!』開催要領
●申込方法:高校生自身が先生に上野さんと話したいと希望する、あるいは、先生や学校、そして学校を超えたグループが企画するなど主催者を決め、成人のWAN 会員がお申し込みください。
参加者は同一高校、中学である必要はありません。複数の学校の生徒が一緒に参加することもできます。
●定員: 50人(最小履行人数を10人とさせていただきます。)
●開催方法:Zoomによるオンライン。
最新バージョンのZoomアプリを事前にPC、タブレット端末、スマートフォンのいずれかに入れておいてください。
●所要時間:約120分 所要時間は目安です。変更についてはご相談ください。
●概要:上野千鶴子著『女の子はどう生きるか 教えて!上野先生』の読後感想、日頃のモヤモヤ感、疑問を高校生より事前に募り、当日、上野千鶴子と質疑応答、対談をします。参加者は事前に上記の著書の既読をお願いします。
『女の子はどう生きるか 教えて!上野先生』岩波ジュニア新書 定価968円
●開催資格:主催者がWAN会員であること、あるいは申込時にWAN会員になることが必要です。(2021年度会費10,000円。)
●参加者:高校生、中学生
(先生・保護者は傍聴可ですが、あくまで主役は十代女子としてください。)
●講師料:不要
●お申込み&お問合せ先: info-npo@wan.or.jp宛
・「件名:ジュニアプロジェクトチーム」としてメールでお申し込み、またはお問合せ下さい。
・お申込みの際には、主催者氏名、複数の開催候補日時、参加予定人数(先生・保護者・生徒)、開催場所をお知らせ下さい。
・会場を借用して開催する場合、会場費用はご負担ください。
*お申し込み多数の場合は、選考させていただきますので、ご承知置きください。
(WANジュニアプロジェクトチーム)