ひこ・田中の、 子どもの本イチオシ

エミリーの記憶喪失ワンダーランド

2011.06.20 Mon

513GqUgqtkL._SL160_

エミリーの記憶喪失ワンダーランド

訳者など:ロブ リーガー ジェシカ グルーナー ()

出版社:理論社

 九十年代アメリカで生み出されたキャラ、エミリーを主人公にした破天荒な物語です。  記憶を失った「あたし」は、見知らぬ街の奇妙なカフェに出入りしてかろうじて生きている。カウンターで働いているカラスは真実を知っているのかいないのか、よくわからない。集まる連中も一癖もふた癖もある。やがて「あたし」は自分が誰だか突き止めてもらうのだが、どうもそれも違うらしい。わかってきたのは「あたし」の記憶喪失は、どうやら「あたし」自身が仕掛けたらしいこと。でも、なんで?  今の日本風の若者言葉の使用は賛否分かれるところでしょうが(おそらく一年後には古くなる)、これでいいと思います。ページ数が間で飛んでいたり(だいたい、始まりが13ページだ)と楽しく凝っていて、もちろんその謎は最後には明かされるのでいいのですが、この早口の「あたし」の思考スピードと奇妙な展開に今の日本の子ども読者がどれだけついてこられるかが心配なところ。ライトノヴェルズだけ読んでいる人にはきついかもしれません。というのは、ライトノヴェルズは読者にとても親切だから。そこがいいのですけどね。 全体の雰囲気は六十年代から七十年代初めのヒッピー文化で、それの九十年代版クールアレンジです。

カテゴリー:ひこ・田中の、 子どもの本イチオシ

コメント

※コメントをするにはユーザー登録をしてください。ユーザー登録がまだの方はコメントの閲覧のみできます。ユーザー登録

※ユーザー登録済みの方はログインしてください。