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東京

シンポジウム「トランスジェンダーアーカイブ・歴史・教育」

イベントURL: http://gender.soc.hit-u.ac.jp/ghsymposium.html
主催者: 一橋大学ジェンダー社会科学研究センター
主催者URL; http://gender.soc.hit-u.ac.jp/
開始日時: 2018年04月29日 (日) 14時30分
終了日時: 2018年04月29日 (日) 18時30分
会場: 一橋大学国立東キャンパス インテリジェントホール
会場URL: http://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/campus/index.html
連絡先: ソニア・デール sonja.dale(at)r.hit-u.ac.jp
登録団体:
パンフレット:
詳細: シンポジウム「トランスジェンダーアーカイブ・歴史・教育」
日時:2018年4月29日(日)14:30‐18:30
会場:一橋大学国立東キャンパス インテリジェントホール
※シンポジウム終了後、懇親会を開催いたします。申し込みは不要ですのでお気軽にご参加ください。

プログラム:
・14:35~16:00 アーロン・デヴォーさん「世界で唯一のトランスジェンダー専攻長の紹介」

 2016年1月、トランスジェンダー研究では世界で唯一となる専攻長がカナダのヴィクトリア大学において任命された。その任務は,研究の発展と普及を促進すること、トランスジェンダー当事者の尊重とその理解を高めるためにトランスジェンダーとシスジェンダー(非トランスジェンダー)のコミュニティに働きかけることである。当専攻長は,既に行われている二つの主要な事業を担い、多くの新たな活動を導入している。
 2011年に設立されたトランスジェンダー・アーカイブズは、トランスジェンダーに関する研究と活動の原本記録をまとめた、世界最大規模のコレクションである.160メートルにも及ぶ棚は,トランスジェンダー当事者による、あるいは彼/女たちについての研究に関する100年分の記録およびトランスジェンダー・アクティヴィズムに関する50年分の記録を、五大陸18の国々から集め,収容する。2014年に始められた「トランス史の前進に向けた会議」は、あらゆる年齢層の学生や研究者、アーティスト、家族、そしてコミュニティ活動家のユニークな混合となっている。当専攻長はまた、アートや文化イベント、教育向けの講演者、社会イベント、奨学金制度や研究助成制度を後援している。さらに、政策決定者に対するアドバイス、調査の実施,大学院生の指導,講義を行い、また頻繁にメディアに向けて話をしている。
 本講演は、トランスジェンダー研究の専攻長におけるこれらの達成や今後の展望のいくつかについて紹介する。

プロフィール:
 アーロン・デヴォー(博士、FSSSS、FSTLHE)は30年以上にわたって、トランスジェンダーの問題を研究・教育を行ってきた。トランスジェンダー研究では世界で唯一の専攻長(Chair)であり、度々引用される学術論文を数多く執筆するほか、広く評価されている『FTM:社会における,女性から男性になるトランスセクシュアルたち(FTM: Female to Male Transsexuals in Society)』(2016、1997)やラムダ文学賞の最終候補となった『トランスジェンダー・アーカイブズ:未来への礎(The Transgender Archives: Foundations for the Future)』(2014)、『混ざりあうジェンダー:二元性の限界に挑む(Gender Blending: Confronting the Limits of Duality)』を著す。20の基調演説や総会演説を含む様々な講演を世界中で行っている。ナショナル・アワード受賞者,性に関する研究の国際アカデミー選出会員、セクシュアリティに関する科学的研究のための学会選出フェロー。世界トランスジェンダー・ヘルス専門家協会(WPATH)の歴史家を務め,トランスセクシュアル、トランスジェンダー、ジェンダー違和を抱く人々のためのWPATHケア基準(SOC)の第6版(2001)と第7版(2012)を作成、他言語版への翻訳を監修した。世界最大のトランスジェンダー・アーカイブズの学術ディレクターであり、トランス史の前進に向けた会議(Moving Trans History Forward)の議長およびホストを務めた(2014、2016、2018年)。ヴィクトリア大学前大学院研究科長(2002-2012)、社会学教授。

・16:10~16:50 三橋順子さん「日本における性別越境の歴史」

 日本における性別越境の歴史を概観する。日本の伝統宗教(神道・仏教)には異性装を禁じる規範がない。したがって前近代の日本では、異性装は宗教、芸能、セックスワークなど、さまざまな場で行われていた。
 しかし、近代(明治~昭和戦前期、1868~1945年)になると、異性装をタブー視する西欧のキリスト教規範の影響で異性装への抑圧が強まる。さらに、20世紀初頭に導入された「変態性欲」理論によって抑圧に学問的な根拠が与えられた。トランスジェンダー的な人々は一部を除きアンダーグラウンド化せざるを得なかった。敗戦(1945年8月)によって旧来の社会体制が大きく揺らぐと、それまで抑圧されていたトランスジェンダー的な人々が社会の表面に浮上する。1949年には上野(ノガミ)の女装男娼を描いた『男娼の森』がベストセラーになった。1950年代後半以降、ショービジネス、飲食接客業、セックスワークなどに従事するプロフェッショナルなトランスジェンダー(ゲイボーイ→ニューハーフ)が活躍する。1950年代後半~60年代には、女装を生業としないアマチュアの女装者も顕われる。こうして1990年代には、世界で最も高度に分化・発達したトランスジェンダー世界が形成された。
 ところが、1990年代末から2000年代初頭にかけて「性同一性障害」概念が導入されると、性別越境の病理化が急速に進行し、トランスジェンダー世界は危機を迎えた。しかし、2010年頃から、リニューアルが進み、世界で最も長い伝統をもつ日本の性別越境文化は次代に継承されている。

プロフィール:三橋順子(みつはしじゅんこ)性社会・文化史研究者
 1955年、埼玉県生まれ。明治大学、都留文科大学など非常勤講師。専門はジェンダー&セクシュアリティの歴史研究、とりわけトランスジェンダーの社会・文化史。買売春の歴史。
 2000年に中央大学文学部の講師に任用され日本で最初のトランスジェンダーの大学教員となった。2005年にはお茶の水女子大学で専論講座としては日本初の「トランスジェンダー論」の講義を担当。
 著書に『女装と日本人』(講談社現代新書、2008年)、共編著に『性欲の研究 東京のエロ地理編』(平凡社、2015年)など。主な論文に「性と愛のはざま-近代的ジェンダー・セクシュアリティ観を疑う-」(『講座 日本の思想 第5巻 身と心』岩波書店、2013年)など。

・16:50~17:30 藥師実芳さん「トランスジェンダーの子どもと教育・学校について考える」
 トランスジェンダーの29%が不登校を経験し、58.6%が自殺念慮を抱いたことがあり、特に二次性徴期がその第一ピークであるという(*1)。また、トランスジェンダーの人は56.6%が小学校入学前まで、89.7%が中学生までに性別違和を自覚し始めたという(*1)。
 しかし、学校教育の中でLGBTや多様な性に関して知る機会があった高校1年生は9%であり(*2)、学校でのサポートや適切な情報提供は十分でないことが伺える。
 2015年、文部科学省は全国の小中高校へ、セクシュアルマイノリティの子どもへの対応配慮を求める通知を出しました。また、自治体・学校・NPOなどによる様々な実践が取り組まれ始めている。
 本講演では、トランスジェンダーの子どもの現状や困りごとと、国・行政・学校・NPO等での取り組みについて知ることで、今後国内学校や教育機関で必要なことについて考えます。
*1:中塚幹也(2010)「学校保健における性同一性障害:学校と医療の連携」『日本医事新報』4521:60-64.
*2:ReBit出張授業アンケート(2014・2015)

プロフィール:藥師実芳
 特定非営利活動法人ReBit代表理事、キャリアカウンセラー。1989年京都生まれ。早稲田大学卒。在学中に特定非営利活動法人ReBitの前進となる学生団体を設立。学校、行政、企業などで講演実績多数。1500名以上のLGBTの就活・就労を支援。新宿区自殺総合対策若者支援対策専門部会委員、他。 2015年、青年版国民栄誉賞と言われる「人間力大賞」受賞。2016年、ダボス会議で知られる世界経済フォーラムに任命された若者によるコミュニティ「グローバルシェイパーズコミュニティ」の一員となる。著書に『LGBTってなんだろう?ーからだの性・こころの性・好きになる性』(合同出版)『トランスジェンダーと職場環境ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)ほか。

・17:40~18:30 パネルディスカッション

司会:ソニア・デール
パネリスト:アーロン・デヴォー、三橋順子、藥師実芳、畑野とまと
プロフィール:畑野とまと
 ライター/トランスジェンダー活動家。日本初のTGホームページトランスジェンダーカフェ管理人。『トランスジェンダリズム宣言』、『エッチなお仕事なぜいけないの?』著者(共著)。