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こころ

相談8 病の友の力になりたい、でも向き合うのが怖いのです

2011.01.26 Wed

元気であった親しい友人にも病者が出始める年齢となりました。最近も、これまで一緒に元気に過ごしてきた友達にガンがみつかり大変、ショックを受けています。これほど打撃を受けるものかと、我ながら驚いています。
これからの闘病を考えると本人は本当に不安であろうと思います。本人の病に向き合う恐れは測り知れませんが、しかし、その恐れを抱えた友人に向き合うことに私自身も恐れがあります。
どのように励ますことができるのか、そして自分自身をどう保てばよいのか、それについてぜひアドバイスを下さい。年を重ねるに従い身体ばかりか心も弱くなっているのを感じます。病の友人を支える側にも支えが必要であることを痛感いたしました。(60代 女性/奈良)

回答

相談8 回答

あなたの訴え、こころに染み入りました。病者が出始める年齢になったというところ、あなたご自身も(私も)含めて、心身が弱くなる現実、まさしくそうだと痛切に思いました。
最近、生きることもさりながら、死についてあまりにもなおざりにされている、という主張があり、死に関する教育が言われたりしていますね。
若くして亡くなられた池田晶子さんという哲学者が、死は誰も自分のこととして体験したことがないのだから、それ自体存在しない、とおっしゃっています。理屈としてはそうなのでしょうが、なかなかこれを実感するのも困難です。あまりにも死は遠くて近い、、、。逆かな?
ごめんなさい、お尋ねになっていないところまで話が飛びましたね。ところで、「自他未分化」という言葉お聞きになったことがある?
自分と他人が分離していない状態のことです。一番わかりやすい例が母子関係。母親は、子どもの痛さを自分のことのように感じるとよく言われますね。
一般的に言えばその後、子どもは母子密着状態を脱して、自分と他人の区別をしていくようになります。自分は自分、他人は他人というように。
成人後も密着的関係性の強い性格傾向をお持ちの方と自他の区別感覚の強い性向の方がいるでしょうね。両方ともに弱み/強みがあります。
前者のよさは、他人を自分のことのように感じられることで、後者はちょっと距離を持った感じかな。
別の表現、同感と共感の違いもこれに倣うことができるでしょう。まったく同じように感じますというのが前者で、感じ方は一緒でないがよくわかります、というのが後者という違い。
あなたの性格傾向は前者のように聞こえますが、この場合の弱点は巻き込まれるというところ。少し距離を置かれたほうがいいかもしれません。
ちなみに雑駁にいえば、日本の文化は前者、つまり、他者のことを自分のことのように感じること(よく気がつく、トカ)を賞賛し、この感情役割を女性にになわせていると、私は考えています。

回答者プロフィール

河野貴代美

アメリカの大学院で心理臨床を学び、日米の精神病院やファミリーサービスセンターでカウンセラーとして勤務。1970年後半にアメリカからフェミニストセラピーという言葉とその実践を持ち込んだ日本で最初のフェミニストカウンセラー。1980年2月 東京に「フェミニストセラピー”なかま”」として初めての民間開業に踏み切り、その後、日本各地でフェミニストカウンセリングルームの開設を援助し、また女性センターの相談員の教育・研修等、フェミニストカウンセリングのパイオニアとして常に第一線で活躍。アフガンのカブール大学教育心理学部でトラウマの授業、メディアのために国際会議の取材等、国際的な活躍をしてきた。著書に『自立の女性学』『フェミニストカウンセリング①②』訳書に『女性と狂気』『バイセクシュアルという生き方』等多数。