「困難女性支援法」へのパブコメ募集は2023年2月18日17時まで。記事
現在、Twitterなどインターネットを中心に、女性支援団体への激しいデマ、各団体への中傷の攻撃が広がっています。
そして、困難女性支援法がターゲットとなり、女性支援に税金を使うな、これらの団体に助成するなというような意見が多数寄せられているようです。これらの意見は、困難女性支援法の経緯を正しく理解しておらず、SNS上で拡散されている虚偽の情報を鵜呑みにするのは、大変危険です。(シェルターネットの声明PDF2ページ 『2.なぜ、「ここだけに税金を投入するのか」ではなく、ここだけが、福祉の対象とならずに今まで取り残されていたのです。』をお読みください)
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◯NPO法人 全国女性シェルターネットによる「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」基本方針案等へのパブリックコメント募集に対する意見、より 一部抜粋↓↓↓
※全文はPDFをお読みください。
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2023年2月 NPO 法人 全国女性シェルターネット「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」基本方針案等へのパブリックコメント募集に対する意見
2023年2月 NPO 法人 全国女性シェルターネット
はじめに
「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」においては、様々な困難な問題を抱える女性への相談支援が「人権の擁護」、「男女平等の実現に資するもの」の理念のもとに、包括的かつ専門的な支援を提供することが目指されています。長年の売春防止法の限界を打破し、このような明確な理念を掲げ、日本にようやく誕生したこの女性福祉のための法律を私たちは心から歓迎します。
そして、同法や、今回の基本方針案には、支援を受ける当事者の意思の尊重、多様で複雑化しているニーズに応える支援を提供すること、また、関係行政機関と我々民間団体との対等な協働による支援の実施など、非常に重要なことが明記されていると思います。
そこで、まず最初に、このような支援事業がなぜ必要なのかについて、さらにいくつかの、私たちなりの説明をした上で(Ⅰ)、次に後段(Ⅱ)において基本方針案についての具体的な疑問や改善の意見を述べたいと思います。
Ⅰ. 女性支援法の意義に関する私たちの見解
1.ジェンダーベイスト・バイオレンス(Gender-based Violence,あるいは「女性に対する暴力(Violence Against Women)」)の視点での取り組みが不可欠であること
「なぜ女性だけを支援するのか」という疑問の声がきかれますが、それに対しては、次のように答えます。:
この社会には「ジェンダーベイスト・バイオレンス」(ジェンダーに基づく暴力(GBV)または「女性に対する暴力」)と呼ばれる加害・被害の構造があるため、それに特化した対策や支援が必要である。
GBV 対策は世界中で緊急かつ重点的に取り組まなければならないとされている課題です。職場や学校でのセクシュアル・ハラスメント、性暴力、交際相手や配偶者からのドメスティック・バイオレンス(DV)やストーキング、家族親族からの子どもへの虐待、通勤電車や街角での性暴力、オンラインやデジタルデバイスを使った性暴力や脅し、詐欺、嫌がらせ、様々な性搾取、これらによって少なくない女性が人生を狂わされ、健康を害し、命を落としてさえいます。
また、GBV は女性だけでなくセクシュアル・マイノリティの人々をもターゲットにし、多くの場合、一緒にいる子どもにも被害が及びます。これは、単に女性が被害に遭いやすいというだけの事象ではなく、女性には性暴力を振るってもいいという考えを持つ人を育て、家庭の中で女性に対しては支配し虐待してもいいという意識を醸成し、女性への性搾取や性暴力に至る詐欺が潜む構造を事実上放置し、一方で加害者には寛容で許されやすいという、社会が抱えている病理です。コロナ禍で一挙にロックダウンや外出自粛が敷かれた時、家庭の中で DV などが深刻化する恐れがあるとして国連事務総長が「影のパンデミック:女性に対する暴力」として警告を発し、各国で相次いで臨時の対策予算を増額したのは記憶に新しいところです。
もちろん、それは二階建ての政策の二階部分である必要があります。
あらゆる人に対する虐待や性暴力はすべて許されません。それは法によって禁止されなければならず、またすべての被害者は支援を受けられるべきです。そのためには特に被害に遭いやすい人たちが安心して相談できて、必要な支援を受けられる対策が重要であり、またジェンダーにもとづいて加害行為を助長・容認し、加害者を許す風潮を変えていく取り組みがされなければなりません。これは例えていえば、人種差別がひどい社会で、人種差別に遭いやすい人々専用の相談支援の窓口を作って活動するという考え方と同じです。あらゆる人に対する人種差別は許されませんが、特に差別にあいやすい人々をまずは対象にして重点的に支援活動を行おうとすることは、当たり前のことであり、また、社会の責務でもあります。
こうした枠組みには含まれない被害者への支援(例えば異性愛男性の DV、ストーカー、性暴力被害など)も、DV や性暴力相談支援対策が充実していき、ノウハウも蓄積され、支援を提供できる場や人材が増えていき、広報啓発も行き届けば、そのような被害者への支援が提供できる機会も連動して増えていくでしょう。GBV 対策を小さく押しとどめた上で、それ以外の非典型的な方への支援ができるような状況が生まれるようになるとは、考えにくいことです。
2.なぜ、「ここだけに税金を投入するのか」ではなく、ここだけが、福祉の対象とならずに今まで取り残されていたのです。
児童福祉、高齢者福祉、障害者福祉など、他の福祉分野には公的資金や人材が投入されており、社会福祉法人による施設や作業所など様々な活動がすでにあります。にもかかわらず、この分野だけが根拠法もなく「福祉」として今まで位置づけられてこなかったのです。だからこそ、これまで行政は「売春防止法」の非常に狭い枠内で、限られた予算や人員で対応せざるをえず、また、私たち民間団体は、ボランティアで活動しながら経験やノウハウを蓄積し、地域の関係者との支援のネットワークを構築してきました。しかし、それでは限界があります。東京都内などには低所得者のための救護施設や宿泊所等はかなりの数、設置運営されています。しかし、DV 被害やストーカーから逃げてきて新しく生活したい女性が入れる施設を探すことは、難しいと言われています。BOND プロジェクトや Colabo、若草プロジェクトらが支援している若い女性たちは、児童福祉法の対象年齢でもなく、また配偶者からの DV のための緊急シェルターも使いにくいため、支援が必要であってもニーズに応じた支援の受け皿がこれまでありませんでした。また、オンラインやデジタルツールをつかった新しい形の性被害(Image-based Sexual Violence, IBSV)は、現在世界各国で大きな問題となっていますが、その被害実態の情報を蓄積し、有効な対応策を作り出そうとしているのは、日本では唯一、NPO 法人ぱっぷすだけです。ホームレス等生活困窮者に対しては、従来の社会福祉事業だけでは対応できないほど深刻なため、いくつもの生活支援の民間団体が支援活動をしています。しかし生活困窮者の女性の中には性暴力被害や家庭内の虐待などの複合的な被害を抱えた人も少なくなく、住居等生活支援以外の専門的な女性支援も必要だと指摘されています。外国籍の女性、障害や疾病を抱えた女性、高齢者なども、複合的な困難の中で DV や性暴力被害に遭っており、さらに一層実情にあった支援が求められています。
(一部抜粋ここまで。※全文はPDFをお読みください。https://nwsnet.or.jp/images/PDF/statement202302.pdf)