自分はガンにならない、と思っていた。確信に近い思いだった。
10年ほど前から、筋金入りの健康オタク。
ここ10年で病院に行ったのは定期健康診断だけ。風邪もひかない。健康には、すこぶる自信があった。
「趣味はデトックスです」と公言し、周りからあきれられるほどのストイックさで健康を追求していた。
日本での会社員生活を辞め、夫についてフィリピンに住み始め、夢だったヨガインストラクターを始めてから、健康オタクぶりに拍車がかかった。
ヨガの師匠とその先生から紹介されたベジタリアン栄養学の先生の教えを忠実に守り、実践する、真面目な生徒だった。

ヨガの聖地インド・リシュケシュで見たガンジス川

タイのサムイ島で受けたヨガ・インストラクター養成講座にて
毎朝5時半に起きて、ヨガ、瞑想を練習。
全粒穀物主食の玄米菜食で、肉、魚、乳製品、卵を取らない食生活。
玄米や野菜はオーガニックを選んで購入。
小麦製品や砂糖も避けた。添加物が含まれる加工食品も食べない。
120度以上の高温調理は発がん性物質が発生すると習い、揚げ物、炒め物、オーブン調理品を避けた。
毎日の習慣として、インターミテットファスティング(16時間断食)を行っていたので、夜6時以降は何も食べない。
腸をきれいにするために、定期的なフルーツ断食をし、腸内洗浄もやった。
電磁波をなるべく避けるために、寝るときは必ずWIFIを切り、電子レンジとIHクッキングヒーターは家に置かなかった。
他にも様々なことをやってきたが、書き出すときりがないので、このへんでやめよう。
こうして見ると、まるでガンになった人が行うような、健康を徹底的に追求した食事とライフスタイルだが、これは私がガンになる何年も前からやっていたことだ。
健康への果てしない執着。それは、病気になることへの恐怖心が人一倍、強かったからかもしれない。
あるとき、左胸にしこりを見つけ、乳房の超音波検査を受けに病院へ行った。
「怪しいので、細胞診をしましょう」という結果をもらっても、私は乳がんではないはず、と思っていた。
明らかに胸のしこりは数か月で急に大きくなっていたが、それでも自分がガンになるはずがない、と信じていた。
受け取った細胞診の結果を開くと、一番上に”invasive ductal carcinoma”と書かれていた。
“carcinoma”という単語を知らなかった私は、最初、カルシウムの塊か何かかしら、などと呑気に思った。
辞書で調べたら、”carcinoma”とは「悪性腫瘍」、”invasive ductal carcinoma”は「浸潤性乳管がん」という意味だった。
頭から一気に血の気が引いて、目の前が真っ白になった。
次の瞬間、今まで信じてきたことに裏切られた思いと、将来への不安が入り混じった、薄暗いものに視界が覆われた。
なぜ私が乳がんになったのか、私の何がいけなかったのか、全く理解できなかった。
“You are what you eat(あなたは食べたものでできている)”
玄米菜食など、健康にこだわる食生活をする人がよく言う言葉だ。
以前の私もこれが100%真実だと思っていたから、自分がガンになった理由が理解できなかった。
だが、今は自分がガンになった理由がよく分かる。
そうなったのは昔から親交のあるマニラのヨガスタジオ経営者から、「エネルギー・サイエンス」を研究する先生とその先生の団体を紹介され、学び始めたからだ。
「エネルギー・サイエンス」では、人間は物質的な体だけでなく、エネルギー体として存在していると考える。
物理的な身体の周りを、活力を司るエネルギー体(いわゆる「気」のオーラ)、感情を司るエネルギー体、思考を司るエネルギー体が取り囲んでおり、全てのエネルギー体が健康に影響を及ぼす。
つまり、健康は物理的な身体だけで成り立つのではない。感情や思考が安定していることも健康に必須である。
また、各エネルギー体は、家族、友人などの側にいる人や住む環境からも影響を受ける。
そして、先祖のエネルギー体も私たちのエネルギー体に影響している。
エネルギー体という視点で見たら、私たちは食べたもの「だけ」でできているわけではない。
感情を司るエネルギー体は私たちが感じたことでできているし、
思考を司るエネルギー体は私たちが考えたことでできている。
だから、食生活やライフスタイルにいくらこだわっても、ガンにならないことは保証されないのだ。
私は食生活に気を配り、ヨガや瞑想を練習していたけれど、ネガティブな感情や思考にしょっちゅう、さいなまれていた。
長年ヨガを練習し、肩こりとO脚が改善し、姿勢が良い、と人に褒められるほどになったが、感情はなかなか整わなかった。
心を変えるのは、身体を変えるより、ずっと難しい。
フィリピンでは日本と違って、何事も予定通りに進まない。
日本人の中でも、予定通り進むことを好む私はイライラしたり、不安になることが多かった。
マニラには安全な公共交通機関がなく、車で移動するしかないのに、渋滞がひどい。
好きな時にどこへでも行き来できる東京で長年暮らしていた私には、移動の自由がない生活は強いストレスだった。
フィリピン生活が長くなってからは、ストレスを解消するために、2か月に1回は、フィリピン国外へ脱出することにしていた。
日本やシンガポールなどの「先進国」で移動の自由を満喫し、ストレスなく、友人に会うのを楽しみにしていた。

シンガポールのベジタリアンカフェにて

台北の素食(ベジタリアン)レストランにて

近所のモールの駐車場。一台も車がない。
そこへやってきたのがパンデミックだった。
2020年3月、マニラで厳格なロックダウンが始まった。
ショッピングモールやレストランなど、すべて休業を余儀なくされたため、あれだけ渋滞していた道路から車が消えた。
全く家から出ない、夫以外の誰にも会わない生活になった。
最初はとまどったけれど、それもすぐに慣れた。
zoomでヨガの師匠のクラスを受け、Netflixで韓国ドラマにハマり、オンラインで日本語を教え、デリバリーでオーガニック食材を注文。
ロックダウン生活もそれなりに楽しく過ごせるようになった。
だが、ふとした瞬間に「私は何のために生きているんだろう」という疑問が、孤独感とむなしさとともに湧き上がることが多くなっていた。
乳がんと診断されたのは、フィリピン生活が9年目に突入した、マニラのロックダウン開始から、1年8か月後のことだった。
筆者紹介:星屋智(ほしやちえ)
ブログ:https://ameblo.jp/yocchi-yoga
2013年から、フィリピン・マニラ在住。現地でヨガインストラクター、オンライン日本語教師として活動。
2021年 乳がんと診断され、手術、治療。治療の過程でエネルギー・ヒーリングと出会う。2022年 World institute for incurable diseases (WIID)認定エネルギー・ヒーリング アソシエートスペシャリストの資格を取得。
オンラインでエネルギー・ヒーリングのセッション、エネルギーを高めるエクササイズ、呼吸法、瞑想法のセミナーを行っている。
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