
現代日本社会で母になることの意味を問う
母になること」は、子どものためにのみ生きる存在になること?
現状をクリティカルに省みたり、必要とあらば変えていこうと試みたりする主体(すなわちフェミニズムの主体)では、なくなってしまうこと?
――母性信仰や三歳児神話など「子育ては母親がするもの」という規範がねづよく存在する日本社会。そうした社会のあり方を社会構築主義の立場から批判して終わるのではなく、実際にそうした社会のただなかで育ち上がり、日々、性別を持たない一人の「親」ではなく、一人の「母親」として子育てをしている女性の経験に焦点を当て、現代日本社会で母になることの意味を問う。
具体的に、第Ⅱ部では、「一時保育」を利用する母親と保育スタッフの聞き取り調査を、第Ⅳ部では「乳児保育」を利用するフルタイム就労の母親の聞き取り調査を行い、著者自身が子どもを預けたときの感情や経験に絶えず立ち返りながら記述するオート・エスノグラフィーの手法を用いて、分析を行っている。
著者の専門は、家族社会学とジェンダー研究。より多くの一般読者に読んでもらいたいと考え、表紙はイラストレーターの描き子さんに頼んで描いてもらった。表紙の絵は、働く母親と専業で子どもを育てる母親が、互いをほのかに意識しつつ、それぞれがどこか浮かない顔をしてすれ違う場面が描かれている。
◆書誌データ
書名 :「母になること」の社会学――子育てのはじまりはフェミニズムの終わりか
著者 :村田泰子
頁数 :288頁
刊行日:2023/4/17
出版社:昭和堂
定価 :2640円(税込)
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