
40年ぶりの復刊
新刊ではありません。40年ぶりに再び世に出たノンフィクションです。
1980年ごろ、当時の政治と社会の雰囲気に危ういものを感じ、1980年12月8日から6回にわたって朝日新聞紙上で「女も戦争を担った?」という連載をしました。
ともすれば被害者として語られることの多い女性たち。ほんとうのところはどうだったのだろう、戦時下をどのように過ごし、戦争とどうかかわったのか。訪ね歩いて、まとめたものです。
連載を読んだ東京のある出版社が「さらに取材をして本にしませんか?」と提案してくれました。
その後2年間、休日を利用して取材を進め、『女も戦争を担った』という本を書き上げました。初版が1982年、2年後の84年に1度重版になり2刷が出たものの時を経て絶版になっていました。
その本が河出書房新社の編集者の目に留まりました。「いまこそ読むべき本です」と復刊の労をとってくれたのです。
2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻しました。多数の一般市民が命を奪われ続けています。ロシアが掲げた侵略の大義は「ウクライナ東部に住む自国民を守る」こと。国営テレビ局をはじめとする政府系メディアは政権のプロパガンダを流し続け、戦争の真の姿を伝えようとした独立系メディアは閉鎖か国外へ逃れることを余儀なくされています。
プーチン大統領は、矢継ぎ早に国民の自由を奪う法律を成立させて、政府に異を唱える国民の力は封じ込められてしまいました。そんなロシアの人々の姿が、私には80年あまり前の日本国民に重なって見えます。
岸田内閣は敵基地攻撃能力の保有や防衛費の「異次元」での増額を決めています。何よりおかしいと思うのは、これほど重要な変更を国会が閉じたあとに閣議決定で決めたことです。これでは法の支配ではなく、「人の支配」ではありませんか。
NGO「国境なき記者団」が発表した2023年の、報道の自由度ランキングで日本は68位。1980年ごろよりよほど危ういと感じています。
徴兵を逃れるために逃亡の旅に出た息子を憲兵に密告した母親、豆兵士づくりに勤しんだ元教師、国防婦人会幹部として活動することに生きがいを見出した女性たち。それはもしかしたら私だったかもしれません。
◆書誌データ
書名 :『女も戦争を担った~昭和の証言』
著者 :川名紀美
頁数 :244頁
刊行日:2023/8/9
出版社:河出書房新社
定価 :2970円(税込)
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