・聖マリアンナに対する判決、出る
2023年12月25日、東京地方裁判所において、学校法人聖マリアンナ医科大学を相手方とする損害賠償請求訴訟について、原告らの請求を(一部)認容する判決が言い渡されました。

・大学による女性差別を認め、「違法性は顕著」とした
聖マリアンナ医科大学は、二次試験において得点調整を行い女性を不利益に扱ったことを最後まで認めず、男女で点数差が生じたのは偶然の結果であると主張していました。しかし、判決は、「女性であることによって受験生を差別して取り扱う属性調整(以下、「本件得点調整」という。)が行われていたことは明らかである」(判決16頁)「本件得点調整は、合理的理由なく、女性という性別を有する者を差別するものであって、『公正かつ妥当な方法』による入学者の選抜とはいえず、その違法性は顕著である」(判決18頁)と判示し、二次試験において得点調整があったこと、これが女性差別であることを明確に認め、『違法性が顕著』であったと厳しく指摘しました。

・すべての女性受験生が「差別を受けない利益」を害された
また、合否の影響を受けない受験生について大学選択の意思決定の自由の侵害のみを指摘するにとどまった東京医大や順天堂の判決と異なり、本判決は、「公平・公正が期待されるべき大学入学試験において受験生が合理性を欠く差別を受けないという利益は、憲法、教育基本法及び学校教育法等の公法上の諸規定を尊重すべき立場にある本件大学が本件入学試験を実施するにあたり受験生に対して保障すべき利益であ」り(判決18頁)、「原告ら受験生は、本件入学試験の結果の如何にかかわらず、本件入学試験を受験したこと自体によって、上記利益(合理性を欠く差別を受けない利益)を保障されず、かつ、意思決定の自由を侵害された」(判決19頁)と判示しています。 すべての受験生には「差別を受けない利益」があり、一次試験の合否に関わらず(聖マリアンナでは、二次試験においてのみ得点調整が行われていました)すべての女性受験生が聖マリアンナから差別を受け、この「差別を受けない利益」を害されたのだと認めたわけです。
これは、まさに弁護団がこれまで一貫して主張してきた点であり、この点が裁判所に認められたことは大きいです。

・東京医大事件、順天堂事件に比べて受験慰謝料は増額
受験慰謝料額については、一年度あたり40万円とされ、東京医大判決の20万、順天堂大判決の30万円と比べて高額になりました。意思決定の自由を侵害されただけではなく「差別を受けない利益」が侵害されたことを認めた結果かと思いますので、この点は評価したいです。とはいえ、そもそも性差別に関する慰謝料自体が極めて低廉であり、改められるべきではないでしょうか。

・逸失利益等は認めず
また、本判決は、聖マリアンナを二回受験した原告2番さんに関し、「(平成30年度入試については)本件得点調整を受けていなければ繰上合格となった可能性が相当程度ある」と認定しました。しかし、「相当程度の可能性があったといえるにとどま」り、差別がなければ合格判定を受けていたとの事実自体は認定困難とし、二年分の慰謝料を140万円とするにとどめ、逸失利益等の損害も一切認めませんでした。 しかし、このような認定困難を生じたのは、東京医大や順天堂と異なって、聖マリアンナが最後まで不正があったことを認めず、合否の再判定作業を行わなかったことや聖マリアンナ側が十分な資料が残していなかったことに起因するのであって、これが結果として被告に有利な事実認定を導くことになるのは疑問があります。

控訴期限は2024年1月9日ですので、原告の皆さんとご相談させていただき、控訴するか否かを決めることとなります。また、東京医大事件に関しましては、現在上告受理申立中です。

本判決の判決文や弁護団のコメントは、弁護団サイトからお読みいただくことができます。

(判決文)
https://fairexam.net/whatsnew/633/
(弁護団コメント)
https://fairexam.net/whatsnew/641/

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