
WANAC 2024年1月22日(月) 受講レポート 森島
年明け一回目の講義だ。個人的には、修士論文提出直後で下宿先でひとり、誰にも会わず、ご飯ものどを通らない数週間であったので、受講生のみなさんと上野先生の顔を見たときに安心して涙が出そうになった。たとえオンライン上であっても、定期的に集まれる場所があるというのはかけがえのないことだ。この約一年間、WANACが自身にとって拠り所であり、大切な人間関係であったことに改めて気付かされた。
もうすぐ私の学生生活が終わる。上野先生が東大で祝辞を述べられた2019年に私も大学生になった。私を生み育てるために夢を諦めた母親の人生にずっと違和感を抱えていた私は、上野先生のお言葉でフェミニズムに出会い、人生が変わった。しかし、学部の政治学科ではフェミニズムについて満足に学ぶことは難しかった。そこで進学した大学院であったが、そこでも男社会のアカデミアに過ごしにくさを感じ、研究も思い通りに進まなかった。自分は何のために進学したのだろう、鬱々とした気持ちで毎日を過ごしていた。そこで目に飛び込んできたWANフェミニズム講座、そしてWANACに勢いで応募した。そこで出会った仲間たちは、それぞれの人生のバックグラウンドを持ちつつも同じ問題意識を共有していた。
今までの人生で出会ったことのなかった仲間たち、一言でいうと感動した。大学院で使用する政治学の分厚い教科書にジェンダーの記述が一言もないことにさえも傷ついていた私は、こんなに同じ志を持つ人がたくさんいるのだ、と学びの背中を押された。世紀の社会学者の上野先生に論文に対するコメントをいただけるなんて、日本中の研究者が願ってもなかなか叶わないことだ。そしてこんなに多くの仲間たちがそれぞれの研究に加えて、私の研究にも向き合ってくれる。これほどまでにありがたい環境は他にあるだろうか。今は、大学院に進学してアウェイのなかでフェミニズムを学んだことの意義をこの出会いに見出している。胸を張って卒業できそうだ。意志をもって扉をたたくことで道が開けることを、身をもって実感した。
同じ志や問題意識を持ちながらも、その内実は様々である。従って、それぞれの研究テーマも多岐にわたる。講義がはじまって最初の方は、自身とあまりにも分野が違い過ぎる方の研究は、理解が難しくてレスポンスカードに書く一言すら浮かばない時期もあった。だが、10回目ともなると、何度も自分以外の人たちの研究にも向き合うことになる。さすがに解像度も上がってきて、上野先生と受講生とのやり取りから自身も吸収できている実感も湧いてきた。また、日常生活の中で、テレビを見ているときや本屋でぼんやり歩いているとき、仲間たちの研究に関することを目にしたら、思わず引き付けられる。そして、またひとつずつ学びになる。他の人の研究にも向き合うことで、世界に対する感受性が引き上げられた。
いくら理解が深まったとはいえ、人間なので、ものすごく興味が湧く研究と、遠い世界のように感じられる研究はどうしてもある。興味があって自身の専門とも近い研究であれば、伝えたいことは山ほど出てくるのだが、そうでなければ理解に精いっぱいで有益なコメントは何もできない。しかし、いつでも上野先生は全員の研究に対して、同じ熱量やとてつもない知識量でコメントをくださる。それを見て、本当にとてつもないお方なのだなと、毎回途方に暮れてしまう。この気持ちを味わうことができるのも、あと数回なので噛み締めなければならない。
今回の講義の休憩中に、上野先生が、素敵な二段弁当を召し上がっておられた。なによりも、研究に一番必要なものは体力なのかもしれない。上野先生を見ていると実感させられる。心身が健康でないと、研究なんてできるはずがない。夜ご飯を食べるのをすっかり忘れていたので、講義が終わり次第買い物にいかないと、そうぼんやり思っていたら、講義の後半戦が始まった。WANACはいつでも、研究だけでなく人生で大切なことを教えてくれる。
WANAC 2024年1月22日(月) 受講レポート 森
アドバンスコースも10回目の講義となった。
サンプルチャプターを提出する人がふえ、時期的に修士論文の提出に差しかかる仲間もいる。
講義のなかで、印象的なコメントがあった。
「どうして、上野先生は、私以上に私が書きたいことがわかるのですか」。
仲間のひとりが発したその言葉に、おそらく全員が頷いたことだろう。
私も、「わからないことがわからない」、そんなどうしようもない状態のときに、「あなたがやりたいのは、こういうことよね?ここには書かれていないけれど」と言われた。ズバリ、だった。「そうです、それなんです、なんでわかるんですか」と言いそうになったことを思い出す。
そうだ、同じ経験をしたことがある。
まだ研究を志す前、私はベッドで寝ころびながら『家父長制と資本制』を読んでいたという不届き者なのであるが、びっくりして何度も飛び起きた。そうです、私のモヤモヤはそれなんです、と本に向かって言いそうになった。
さて、問題は、珠玉のご指導をもとに、どう論文にしていくのか、である。
どんなにすばらしいコーチがついていても、自分以上の論文は書けない。
2月はサンプルチャプター、3月はオーラルプレゼンテーション。
ご指導を受けられるのも、残すところあと2回なのである。
第11回レポート https://wan.or.jp/article/show/11125
第九回レポート https://wan.or.jp/article/show/11002
第八回レポート https://wan.or.jp/article/show/10950
第七回レポート https://wan.or.jp/article/show/10897
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方法論ゼミレポート https://wan.or.jp/article/show/10802
第四回レポート https://wan.or.jp/article/show/10754
第三回レポート https://wan.or.jp/article/show/10714
第二回レポート https://wan.or.jp/article/show/10645
第一回レポート https://wan.or.jp/article/show/10703
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