東京都葛飾区西亀有にある「社会福祉法人砂原母の会 幼保連携型認定こども園すなはら」(高橋広美理事長・園長)は、契約農家からの有機栽培のお米、旬の農産物を使い、子どもたちに四季の味わいを伝える給食を実施している。
基本は和食で、ご飯と野菜たっぷりの味噌汁。おかわりする子もいて、好き嫌いなく食べている。みそ汁の出汁は、煮干しから採る。献立は旬の野菜を組み合わせて作る。調味料は、味噌、醤油、味醂など、厳選されたものを利用。
晴れの日は緑も豊かな園庭で、みんなで食べる。こどもたちと契約農家の農園まで出かける田植えや稲刈り、じゃが芋掘り、自然豊かな近隣の公園への散歩。親が参加しての給食など。食で健康を育むだけでなく、遊びを通しての学びや発見、四季の体感、語らい、人との繋がりなどを体験しながら健やかな成長を育む場となっている。

栄養士・大森典代さん(左)、高橋広美理事長・園長(中)、栄養士・森谷奈帆さん(右)
のびのびと健やかに感性を育む工夫がされている
「認定こども園すなはら」はJR常磐線または地下鉄千代田線・亀有駅から徒歩15分ほどの住宅街にある。園舎は木造を中心とした2階建て。中に入ると床はフローリング、テーブル、椅子、ロッカーなど、木材がふんだんに使われていて、落ち着いた優しい空間となっている。園庭には、畑や木々や花々があふれている。敷地面積は1,184㎡、園庭は505㎡ある。
職員は40名。園児86名。入所定員は【乳児】0歳児6名、1歳児15名、2歳児15名。【幼児】3歳児20名、4歳児20名、5歳児20名。計96名となっている。
2歳児室「もも」、畳敷きの部屋もある0歳児室「りんご」、「幼児室」、自由に創作ができる「アトリエ」、寄り合いの部屋、自由に使える「秘密の部屋」などがある。のびのびと健やかに感性を育める工夫がされている。階段脇にはたくさんの絵本の本棚がある。子どもの目線に近いところに表紙絵を表にした絵本が並ぶ。

子どもたちの本
「社会福祉法人 砂原母の会」は、今回訪ねた「幼保連携型認定こども園すなはら」のほかに、葛飾区の都立水元公園のそばにある「幼保連携型認定こども園そあ」、0歳児から幼児までを対象とした練馬区大泉学園町「そあ季の花保育園」の三つの園と他に葛飾区内で学童保育クラブを3園運営している。
「赤ちゃんからお年寄りまでほっとできる地域づくり」
園のビジョンは「赤ちゃんからお年寄りまでほっとできる地域づくり」。ミッションは「えんを生み出す私になる」。
「ひとりひとりが主役になる」ために行う教育保育の柱があり、「自然の中で全身を使って五感を育む」「時間を忘れて遊ぶ」「赤ちゃんからお年寄りまで関わり合う生活」、そして「本物の食事」。これらは、きちんと明示されていて、来た人に説明できるように手書きの紙芝居になっている。


主幹教諭による法人のビジョン説明
園のビジョンを明確にした理由がある。理事長・園長の高橋広美さんは、次のように話す。
「『認定こども園すなはら』には大森典代さんと森谷奈帆さんの栄養士2名がいます。森谷さんは『幼保連携型認定こども園そあ』から異動してきました。同じ法人の施設で考え方は同じでしたが、やり方が少し違いました。当時は、ビジョン・ミッション・アクションが明確でないため、向かう方向がわからなくなっていました。これでは、やはりまずいということで、そこをきちんと明確にしましたら、うまく統一することができました。」

栄養士・森谷奈帆さん(左)、理事長・園長・髙橋広美さん(中央)、栄養士・大森典代さん(右)
オーガニックの米や旬に野菜を中心とした給食メニュー
献立を考えるのは栄養士の森谷奈帆さんと大森典代さんの2人で担当している。調理は調理員2名、パート1名が担当する。
大森典代さんに子どもたちの給食について紹介してもらった。
「食材が同じものしか手に入らず、毎日続くときはレシピをいろいろ工夫します。かぼちゃは煮ものや、焼いて味噌で食べたり、チーズ焼にしたり。
調味料のみりんは「味の母」。お米から作られています。砂糖はきび砂糖「洗双糖」、味噌は茨城県の「やまこ味噌」、発酵を止めてない味噌です。加熱処理はされてません。塩は「赤穂の甘塩」。料理酒は「蔵之元」、醤油は「なのはな生協」のもので、国産大豆で有機です。脱脂大豆を使わず、丸大豆から作った醤油です。
みそ汁の出汁は煮干し。あとは昆布と鰹という時もありますが、ほぼ煮干しです。おすましの時は鰹と昆布。あとは煮干しに昆布を入れるときもあります。煮干しは前の晩から鍋に入れています。昆布、かつおは朝に。今、煮干しの仕入れに困ってます。自然食の店や生協から仕入れてるんですが、最近は手に入りにくくなりました。小売だと小さいパックしかなく、大きいパックが欲しいのですが、ちょっとそこが今一番困っています。毎日、150gや300gとかで、一ヶ月で2,3kg使います。」

園児の保護者に配布される「給食だより みつばし通信」で紹介されている食材と調味料
「野菜は千葉県と愛知県の契約農家から届きます。献立は、農家から来月はこんな野菜が取れますよと、案内をもらってから一か月前に、一か月分の献立をたてます。旬の野菜がメイン。旬の予定していた野菜が欠品した時は乾燥野菜を利用するときもあります。熊本県産の野菜を乾燥をして商品化している吉良食品株式会社から取り寄せています。常時ストックしています。これは、災害や地震のときの備えにもなっています。」
0歳児の離乳食も作る。お粥と旬の野菜を裏ごしし、昆布の出汁も使う。昆布は北海道産。1歳になったら煮干しの出汁に代わる。出汁を使うのはゼロ歳から本物を味わって欲しいと思うから。時々、親から、「園と同じレシピで料理を作っても家では食べないと」言われることもある。「どんな調味料を使っているのか教えて欲しい」「どこで買えるのか」という質問も多い。レシピやお便りで、親にも料理や調味料を紹介している。
「最近一番問い合わせが多かったのは、かぶの葉っぱとダイコンの葉っぱのふりかけ。ただ葉を炒めただけですが、『その葉っぱをどこで売ってるのか』って言われるんです。スーパーの大根は、葉っぱを切って売ってるから葉がない。葉がある大根は、どうやって手に入るのか、説明は、そこからなんですよ。『どうやって作ったのか』と言われ、『炒めただけなんです』と答えたら『いやそれはないでしょう。紙にちゃんとやり方書いてください』って言われたりもします。うちの野菜は有機だから葉っぱも安心して食べられる。農家直送だから葉っぱもついて届きます。家庭ではこういうことができないのですね。」と大森さんは話す。
食事は職員も子どもたちと一緒に
「食卓を共に囲めることは幸せなことです。子どもたちに『どうやって作ったの?』『この赤いのは何?』とか聞かれたりする。あとはマナー。お箸は、こうやって持つと持ちやすいよとか、食べやすいよとか。一緒に教えながら食べています。私は、だいたい給食着の格好で入るので、給食の人間ってわかるので、子どもたちは食べ物のことを聞いてきますね。『今日はお米が違うでしょう』。『今日味噌が違うでしょう』とか。たまに言われるんです。新米に切り替わったときとか、一つの農家さんでお米終わっちゃって、また違う農家さんからお米を仕入れた時なんか。子どもはわかるんですよ。味噌汁の味噌が変わった時も分かります。出汁が違ってもわかる。」と大森さんは話す。


ランチルームでの給食。調理室がすぐ奥にあり、出来立てが出てくる。
理事長・園長の高橋広美さんは、食事のことを次のように話す。
「テーブルで一緒に食べる大人が毎日変わります。乳児や0歳児の担任たちも一緒です。ご飯の時はいろいろな年齢のこどもたちが一緒に食べます。温かいご飯と味噌汁が基本です。家族で食卓を囲むような雰囲気で、先生たちは子どもたちを見守りつつ食事する。ひとつのテーブルに子ども4、5人が座っている。年長の5歳児は、4月に3歳になったばかりの子のお世話をしながらご飯を食べる。箸が落ちたら拾うんだよとか。箸はカゴから自分のをとったら隣に回すんだよとかね。お世話をしてくれてる。今、兄弟も少ないので、きょうだい関係みたいなのも体験することができます」

栄養士・大森典代さんは「認定こども園すなはら」に入って、有機食材と出会った。オーガニックの調味料や有機農業に興味を持ち、どのようにできるのかを知るために、1年間、週末を利用して鯉淵学園農業栄養専門学校へ通った。
「毎日、妥協せずに安心安全の美味しい給食を提供できることに感謝している。これからも農家や取引先の縁を広げたいと思っている」と大森さんは話す。

給食を作る様子はランチルームから見ることができる
葛飾区の農家と連携して野菜づくりから学ぶ場を作る
もう一人の栄養士・森谷奈帆さんは「認定こども園すなはら」に入って9年目になる。
森谷さんは葛飾区の農家・清水農園に通い、野菜作りを学んでいる。農家との連携で子どもたちが五感を通して学べる場を創ることを手掛けている。地域の農家と連携する事業をフォローする農林水産省の事業があると知り、応募した。というのも、食材にはこだわってきたが、地元の農家との連携がこれまでなかったからだ。
農林水産省は給食と地場産物の連携をサポートする「地産地消コーディネーター派遣事業」を平成26年度から実施している。「農山漁村振興交付金のうち地域の食の絆強化推進運動事業」だ。給食では地産地消の地場産の新鮮な農産物や水産物の使用が求められている。しかし、給食と生産の現場では、量や規格、供給体制がうまく連携ができないところも少なくない。これらの課題を解決し、地場産物の利用拡大を進めるための調整組織や調整役の存在が求められている。「地産地消コーディネーター派遣事業」は地場産物の利用拡大や供給体制づくりに詳しい専門家である地産地消コーディネーターが申請のあった地域に赴き、アドバイスをする制度だ。平成28年度からは派遣先に予め課題や数値目標などを申請してもらい、地産地消コーディネーターが地区に3回赴くこととなっている。各取り組みの成果を発表する事業報告会もあり、参加者はノウハウ共有ができ、大きな成果に繋がっている。
運営は(一財)都市農山漁村交流活性化機構(まちむら交流きこう)
https://www.kouryu.or.jp/
「地産地消コーディネーター派遣事業 専門家(地産地消コーディネーター)登録リスト」
https://www.kouryu.or.jp/service/pdf/R03chisanchisho_list.pdf
農林水産省では地域資源の活用のための「農山漁村発イノベーションの推進」事業が予算化されており、そのなかに地産地消の取り組みがある。
https://www.maff.go.jp/j/nousin/inobe/index.html
令和6年3月15日にエッサム神田ホールで実施された「令和5年度地産地消活動報告会」、ここで「認定こども園すなはら」の活動も紹介された。
「認定こども園すなはら」に地産地消コーディネーターとして派遣されたのは杉木悦子さん(元長野県山形村立山形小学校栄養教諭)。園からの地域連携を深めたいという要望があったことから、葛飾区南水元・清水農園を探し、訪問し、話しあい、2023年10月から畑の一部を園児に体験の場として提供してもらえることとなった。
報告会で発表をしたのは「認定こども園すなはら」の栄養士・森谷奈帆さん。
「清水農園は飛び込み。「まちむら交流機構」さんが間に入っていただいて知りあった。杉木悦子先生が一緒に清水農園に行って、いろいろと説明してくださった。そしたら『協力していいよ』と言ってくださった。月に2、3回、行っている。1月から一年通して農業をやらせてもらっています。畑の整備からはじめて、ジャガイモを植えて、その後、夏野菜の支柱を立てて野菜を作ります。ブルーベリー摘みもします」と森谷さん。
園の給食の食材は千葉県や愛知県の契約農家や「東都生協」「なのはな生協」などから有機農産物を中心に使っている。今まで農業体験は成田市の農家へ出かけていた。清水農園と出会うまで地場産野菜の使用はなく、地域農家との繋がりもなかった。そこに身近な触れあいの場が生まれることとなった。
森谷さんは次のように話す。
「『地産地消コーディネーター派遣事業』に参加したことが、一番やりがいを感じられました。具体的に自分が中心になって動いたのは今回が初めて。清水農園に駆け込みで行った。まず関係づくりから始まった。これまで地元の農家との繋がりというのがなかったんです。今回「まちむら交流機構」に応募した理由は、有機でやってきてはいるけど、都内のものはなかなかなくて、葛飾区にもない。で、そのつながりを作りたいなというところから事業に参加しました。運の良いことに、清水農園さんを杉木先生の力もあって見つけることができた。今、清水農園にまめに行ってるんです。月に2回、3回。2週間に一回ぐらい。2024年1月から一年通して農業をやらせてもらってます」
ちなみに葛飾区には農家が163軒ある(令和4年)
「葛飾の農業」(葛飾区)
https://www.city.katsushika.lg.jp/business/1000066/1004931/1034607/1005000.html
「清水農園」(葛飾区水元)
https://shimizu-farm.tokyo/
農家から届いた野菜を、子ども達が五感で感じる体験
毎日の給食はホームページで公開している。1か月のレシピ内容と、調味料や生産者、食材の紹介などを紹介する「給食だより みつばち通信」を印刷して、保護者にも配布している。給食の米や野菜を成田市の農家と直接契約していることから農家との連携も強い。成田市は近いので車で出かける。

壁に貼られた献立表と「給食だより みつばち通信」
理事長・園長の高橋広美さんから、園の食の取り組みを話してもらった。
「給食の献立に使う米や野菜は、ゼロ歳から六歳が初めて出会う物になりますが、最初に食べたものや触れたもの見たものが、心にも頭にも、残ると思います。それは本物であってほしいという思いがあり、その考えを基本にして献立を立てています。どんな調味料や野菜がよいのかということを考えています」
届いた野菜を子どもたちに見せたりもする。
「今日届いた筍も、抱っこして匂いを嗅いで皮を剝く音を聞いたりする。そら豆やトウモロコシの皮を剝いてもらったり。そんなことを、しょっちゅうやってます。野菜のへたや剥いた皮なんかを子どもたちに見せて、その後、畑に埋めてもらって堆肥にします。食べて終わりじゃなくて種を残しておく。大根は亀戸大根。地元の清水農園が使ってるのを分けてもらって種から育てました。子どもたちは花が咲いて、大根を抜いて、食べるところまで、体験します」

園で育てた大根
親に園に遊びに来てもらい、一緒に食事する機会も設けている。
「午前中の活動を子どもと先生たちとやって、保育の中で保育士一日体験。同じ流れでお昼ごはんになったら親も一緒に食べる。だから食事だけに来るということはないです。そして園に来て食事を食べるのは自由です。参加はいつでもいいですよ、ただし一回以上は来てくださいと言っています。来る人は2回ぐらい来たり、お父さんとお母さん別々に来たりもします。参加費は食事代400円です」
食事の感想も毎回書いてもらう。その感想が十年分ある。
「その日のメニューのこと、子どもたちの様子などを書いてくれてます。美味しかったと。同じものを作っても子供が園で食べて家庭で食べない理由が分かりましたとか。うちではそんなに食べないのに園では食べてる自分の子どもの姿を見てびっくりしましたとかね。あと思ってたより優しい味なんだけど、出汁がきいてて食べ応えがあった、とかの感想があります」

取材にうかがった2024年4月22日の給食のメニュー
ごはん(無農薬コシヒカリ 千葉県産)
鶏の南蛮漬け(減農薬ピーマン・赤ピーマン 宮崎県産)
かぼちゃとブロッコリーのマヨ和え(無農薬かぼちゃ 沖縄県産)
味噌汁(小松菜・麩)(無農薬 小松菜 愛知県産)
子どもたちは、食事を残すこともある。そのためのこまやかな工夫もされている。食卓には、おすそわけをする「どうぞのお皿」というのがある。
「どうしても、これは苦手だとか、量的に食べれそうにないなと思ったりしたら、テーブルに置かれている一枚のお皿に移す。この皿は減らしてもらって食べられる子が食べる。自分で意外と今日は食べられると思ったら戻しても食べても良い。それが『どうぞのお皿』です。おすそ分けする黄色いお箸が置いてある。色の付いたお箸でとる。自分の箸とは別に使うんだってことも学ぶ。そんなことをやってます。そこにたどり着くまでずいぶん時間かかりました。
こういう食事のスタイルになったのは、20年くらい前から。そこにたどり着くまでが大変でした。前は子どもが『おかわり』というと、その度に職員が立ったり座ったりで、ご飯をよそったり味噌汁をついだりした。その間は先生たちは食べられなくて、食事が中断してしまっていた。それを見て、どうやったら変えられるかなっていうのを思ってたんですね、それで生まれたのが『どうぞのお皿』です」
子どもたちの食器は、陶器で出している。壊れることもある、ということも知ってもらいたいからだ。もし割れたら、金継ぎをして再利用する。


農家と連携することで、食を通したコミュケーションが深まっている
「顔が分ってくると農家さんが心配してくれる。例えば地震の時とか『大丈夫かい。食べ物あるかい』とか。逆に私たちも、畑でいっぱい野菜が取れすぎて廃棄しなければならなくなったときは、その分、園で買います。メニューが多少はもちろん変わる時あります。職員も買うし保護者にも買ってもらいます。大根がいっぱいあって捨てるというので買いました。箱で買って近所に配る。知り合いに送ったりとか農家さんが大変な時は支える。無駄にはしない。だからこちらが困ったときには助けてくれます。『もうにんじん無いけど「すなはら」のために取ってあるよ』とか、『あとどのぐらい使う』とかと聞いてくれて、その分を、ちゃんと出しくれる。もう売り切れという案内が来ても、「すなはら」の分は取ってくれる。そういう関係ができている。
長野県の山奥で有機農業をやっている就農者からも野菜を取っています。いろんな種類がいっぱい。量が少ないから給食ではあまり使いませんが、ほうれん草が3個とか白菜3個とか入っていて、職員で買っています。有機で創る人の応援支援ですね。個人でやってて8年目の農家。毎年、お正月の野菜が届く。そういう人たちも支えることが大事かなと思っています。彼らのパワーって小さいんですけど強いですよね。」
園庭に新たに大きなプランターを設けた。これまで契約農家のジャガイモやサツマイモの収穫体験で、園児を連れて出かけていたが、園で育てたいという思いからだ。

「給食の先生とホームセンターで買ってきた夏野菜の苗を植えました。子どもたちが遊びの中でいつでも身近に見に行けて、いろんな変化を見たり、触ったり、収穫したりできるように、園庭の一角にプランターがあるんです。大事なのは、世話をしないと枯れるんだっていうのを知ること。畑は六年目。自分も生活の中で育てたいという思いがあった。さつまいもやジャガイモが植えられるようなすごい深い大きいプランターを置きました。ダイコンやニンジンも植える。夏野菜の支柱を立てられるようなプランターが全部で5個あります。ねぎ、絹さや、エンドウ、葉物などを植えています。
私たちは自然の中でご飯を食べ、学ぶっていうのがある。園庭は見てのとおり、固定の遊具とかはない。四季折々の自然が楽しめるような草花だったり、実のなる木があります。固定遊具とか既製品というのは決められた形、決められた遊びしかできません。自然の植物や生き物は日々変化します。雨で匂いが変わったり、季節で身に着けるものが変わったり。決められた形で決められたように遊ぶのではなくて、子どもが自分で感じ取って感性を使って遊んでもらいたいっていうのがあります」

「園庭で遊ぶときもそうですし、職員が堀ってきた筍を触って臭いを嗅いで見るとか。常に自然と触れる。五感教育しているのではなく、それが当たり前。普通に生活することが五感を育てる。育てられてると、みんな思ってる。都内23区の葛飾区です。都会ですので限られた自然しかないので自分達から外に出かけていくことを大事にしている。子どもが行ける範囲なので近くは徒歩。電車に乗って行くところもある。電車で15分ほどに新松戸に『関さんの森』という屋敷林の森を保存している場所がある。そこに五歳児は毎月一回行きます。」


職員が採ってきた筍を剝く子どもたち。筍はあとで給食にも登場する。
「関さんの森」のホームページによると、関家は17世紀から続く名主で屋敷林を含む広大な里山を所有している。松戸市は森の下にトンネルを作る都市計画道路を予定していたが、財政上の理由で中断。30年を経て市と関家は道路が森を迂回する経路で合意。道路計画に含まれなかった森林は1996年に11haが「財団法人埼玉県生態系保護協会」に寄付され、「関さんの森」と名づけられ、子どもたちの環境学習などに活用されている。
「『関さんの森』では4月にタケノコを採らせてもらえます。近くに公園もたくさんありますが、葛飾区の「水元公園」に行くこともあります。ほかに市川市の堀之内貝塚公園には電車で行きます。今年から成田の農家の田んぼにも行きます。田んぼに入る時期は一回ですけど、田んぼの水路や里山で遊ばせてもらう。自然に触れることを日常的にしたいと思います。
子どもたちは、晴れたら園庭でずっと遊んでます。ご飯は外で食べます。コロナのときでもパーテーションやマスクなどせず、普通の生活をずっとしていました。換気が一番大事だったので、外で食べようということになり、寒くても暑くても、それも『五感で学ぶ』ですよね。今日は、太陽暖かいねとか、風が吹いてるねとかいう会話も聞かれるようになりました」

園庭での食事
「こども園すなはら」は建物の設計が素晴らしい。床や壁や柱、椅子や机など、ふんだんに木材が使われている。小さい子どもたちに配慮され、椅子や机は丸みを帯びている。平屋だった施設を2017年に立て替えた。




「建物の設計は女性の設計士です。やりたい保育があるので、それに合った園舎を設計してほしいと頼みました」
園の入り口は、大きなフェンス柵があるが、園庭に繋がるところは、樹木が植えられていて、それが柵の替わりなっている。

園の外側には、たくさんの木や花が植えてある。右が園の入り口。
理事長・園長の高橋広美さんは、最初は病院でケースワーカー(障碍者などの支援)をしていた。その後、大学時代にとっていた保育士の資格を生かして、保育士として働いた。その後、縁あって、すなはら保育園に園長として就任した。そして自然を体験する場を設けて、自由に遊びながら学ぶという形に徐々に変えていった。

園の入口に飾られている子どもたちの版画
「クリスマスの時期になると、子どもたちが300個ぐらいのクッキーを作って、ご近所やお世話になった人たちに配ります。これは26年くらい続いている取組で、クリスマスは楽しいだけがクリスマスではなく、ありがとうを伝える時でもあると考えています。」
次の新たな展開も構想されている。
「本物の食事を知るため、田んぼで田植えから稲刈りまでの一連を体験します。分げつ(茎の根本から新たな茎がでる)や花も見に行くのです。収穫した米は、給食や自宅のご飯になります。『ひまわりプロジェクト』です。これは自分でひまわりを育て、その種を集めて、農家さんの種に混ぜてもらって、ひまわりオイルを作ってもらいます。『わたしたちのひまわりプロジェクト』です。種から油を搾り精製する過程も見学したいと思っています。最後にビンのラベルも子どもと一緒に作るつもりです。田んぼもひまわりも食べることを通してご縁がつながった皆さんのおかげです。」
子どもと職員のいきいきした姿が浮かぶような話だった。
慰安婦
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くらし・生活
身体・健康
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