
家と家族と戦後日本の変容をみつめるひとりの少女の物語
タイトルにもなっている「崖の上の家」とは、夏目漱石の『門』からとったもので、漱石が当時『門』を構想していた東京の西片町にあった家に近い、崖の上の家で水田宗子さんは幼少期を過ごしました。
本書はジェンダー/フェミニズム批評の先がけとして著名な詩人、批評家、女性学研究者である水田宗子さんの半生を「家」という観点から捉え、戦後を代表する政治家水田三喜男を父にもつ少女の目線から日本精神やジェンダーの分断を語り直す画期的なエッセイです。
戦後期に家父長制やジェンダー観はどのように変化していったのかという透徹した視点もありつつ、当時の東京の風景や敗戦後たくましく生きる家族の様子が純粋な少女のまなざしからみずみずしく描き出され、エッセイとしてだけでなく、同時代を生きてきた一人の女性からみた戦後史としても読むことができます。
一編集者でしかない私からはこのような説明しかできませんが、滋味豊かな水田先生の文章にぜひ触れていただければと思います。
【目次】
はじめに
第一章 家の記憶
第二章 田端の家―父の気配
第三章 竜島(勝山)の家
第四章 曽呂村の家―父の生家
第五章 館山の家―政治家の娘
第六章 東片町の家 125
第七章 西片町の家(一)―「父なるもの」の凋落と回復
第八章 西片町の家(二)―高校から大学時代へ
第九章 西片町の家(三)―大学院時代
おわりに 出発
【著者】水田宗子(みずた・のりこ)
詩人、比較文学、女性学研究者、批評家。
1937年東京市大森区馬込生まれ。雙葉高等学校、東京女子大学英文学部卒業、東京都立大学大学院修士課程、米国イェール大学で修士号、博士号を取得。メリー・マウント大学、獨協大学、米国スクリップス大学、南カリフォルニア大学で助教授や准教授を歴任し、城西大学、城西国際大学の教授、学長などを経て、学校法人城西大学理事長を務めた(2005-2016)。一般社団法人国際メディア女性文化研究所所長(2017-現在)。ハンガリー文化勲章(2011)、スウェーデン北極星勲章(2016)、国際詩賞「チカダ賞」(2013)を受賞。詩集や評論など著書多数。
◆書誌データ
書名 :崖の上の家―父なるものの凋落と復活
著者 :水田宗子
頁数 :244頁
刊行日:2024/11/1
出版社:明石書店
定価 :2970円(税込)
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