女性社会学者の大先輩、鎌田とし子さんが自伝『「女性史」を生きた社会学研究者の生涯』を自費出版なさいました。副題の「血さわぎ心躍る日々」に著者の思いが伝わってきます。「虎に翼」のモデル、三淵嘉子さんだけでなく、各分野で地道に足跡を残してきた先輩方のおかげで私たちの今日がある、ということがよくわかります。すてきな表紙の写真は調査地の一つであった北海道にある利尻山です。WANのブックストアでのご紹介をお勧めしたら、以下のようなお手紙をいただきました。このまま公開してよいとご本人のお許しを得ましたので代理投稿いたします。
入手方法は末尾に。(上野)

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上野千鶴子様          
                     鎌田とし子

 秋が足早に近づいてまいりましたが、如何お過ごしですか。私は歳を重ね、いよいよ歩けなくなってきました。
 さて、この度は拙著『「女性史」を生きた社会学研究者の生涯』を読んで頂きまして有難うございました。誠にお恥ずかしい歴史ですが、自分の足で歩くという当たり前のことが許されなかった時代に、一人の女性が悪戦苦闘の末ようやく真の自立を勝ち取るという格闘記を残しました。実名で事実をありのままに書くということに抵抗はありましたが、この本を配ることによって教え子たちに「私はこう生きた」と伝え、彼女たちから「私もこう生きた」とレポートを返して貰っているところです。
 これまで、何のための研究かと問われれば「社会のため、人のため」と答えてきましたが、果たして何が出来たかと忸怩たる思いです。95才を迎え、あと何が出来るかと自問すれば、赤裸々に自伝を残す「検体」しかないことに気付きこの書をしたためました。お目に止まって幸いでした。
 申し添えたいのは、この書はゼミで卒論を指導した学生に対し、断片的に語った私の生き方についての質問に答えたもので、教え子への愛をかたちにしたものです。人生の途上にある者には力強い応援歌となったようで、後半の人生にギアが入ったと言う卒業生もいれば、どう生きるべきか問いかけてくる者もいて、はしなくも師弟の縁を通して一種のリカレント教育になったのかも知れません。100年は結構長い、いまからでも「私はこれをやった」と言えるものを残して欲しい、という願いを送り届けました。

*応募方法:非売品に付き次の方法でお申し込みください。
郵便局で、スマートレターを購入し自分の住所氏名を書いて、封筒に入れ、鎌田とし子宛に送ると、本は無料で送ります。
鎌田住所:〒064-0952札幌市中央区宮の森2条4丁目1-5