2014.11.07 Fri
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フェリックス・ヌスバウム(1904-1944)は1944年にアウシュヴィッツ強制収容所で殺害されたユダヤ系の画家である。本書では将来を嘱望された画家が、ユダヤ系ゆえに迫害され、苦境に追いやられながらも必死で絵を描き続ける姿と、ヌスバウムの絵が彼の死後たどった運命が記されている。
1998年、ヌスバウムの出身地、ドイツ、ニーダーザクセン州のオスナブリュック市にヌスバウム館がオープンする。ヌスバウムの作品が展示されたヌスバウム館は、ベルリンのユダヤ博物館を設計したダニエル・リベスキントの設計によるもので、ユダヤ博物館の前段階ともいえる建物である。
著者の大内田わこさんはフェリックス・ヌスバウムという人物に迫ろうと、ドイツ、ベルギー、フランス、ポーランド、アメリカ、イスラエルと彼のゆかりの人を訪ね、インタヴューを行っている。大内田さんが紹介している、戦後無名だったヌスバウムの絵をオスナブリュックに戻すために町中に広がっていった募金活動などの市民を巻き込んだ運動も感動的であるが、なによりもみずからの休暇を使って取材をつづけてきたという大内田さんの情熱に心打たれる。
本書にはヌスバウムの絵もカラーで数多く収められている。そのほとんどがヌスバウムの亡命時代によるものである(1933年以前のヌスバウムの作品は1932年の火災でほとんど焼失)。1944年6月20日にブリュッセルの隠れ家でゲシュタポに捕まる直前まで、恐怖の迫るなかでもヌスバウムは絵筆を休めることはなかった。(lita)
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